表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

365/366

348、ミニフィー旅団大隊出陣!戦地へ向けて白の波が歩を進める

「では、街の防衛はお任せを!」


原生生物の襲撃に対する、緊急対応班って体でモモコさんが第4旅団から数班送ってくれた。アサルトメンバーはもう次の仕事が決まったみたいで、既に出動しているらしい。お疲れ様です。


世間はイージス社に強い疑いの目を向け、静観するニッポンイチを非難。そして街の防衛に当たるシブサワを称賛した。


ハムハムのトレンド上位をアナグマ事変絡みのワードが独占して、ニホンコク中の誰もがこの事件の顛末に注目している。


「じゃあ早速、」


ボクは振り返ってタマさん達を見やった。


「サッサと駆除を済ませちゃいましょ。」


「当機がサポートしますからどうぞお背中を任せて下さいませ。」


『ワタシがカッコよく撮ってあげますから!皆さん頑張りましょー!』


そして。


「ぼくも付き合うから。でもミニフィー‥‥だっけ?凄い数だけど出番あるかな?」


ラファエルさんもフル装備で駆けつけてくれた。


「皆はすっごい強いんですから。大戦力なんですよ!」


そもそも大半のミニフィーの装備は雑銃。一部の特殊な部隊はラピッドファイヤシリーズの銃器で武装している。更に専用の強化外装を纏って戦う部隊は少数で、紫電M10やオオワシM100と言った高級銃器を扱うミニフィーは20体ちょっと。


ボク個人の資本力で買い揃えられる武装はどうしても少なくて、定期的に買い増やしているけど全然行き渡らない。紫電M10もあれから買い足して合計25丁になった。ボクが使う分で5丁。後はミニフィー用。紫電M10を扱うミニフィーは、1着1000万クラスの強化外装に身を包んでいる。防御性能偏重(へんちょう)型で、レーダーや空気清浄とか便利な機能をゴッソリ削る事でエネルギーリソースを確保。3重のバリア装甲で守られていた。


都市内での少数単位の武力衝突なら十分だけど、こういう大規模な戦いになると心許ない。


「やっぱり武器類も上手い事モモコから借りれるように交渉しないと辛いわね。」


「当機が投資でモリモリ金を増やしていますが、それでも正直足りません。まぁ生体ゲル代を節約できた分幾らか家計が楽になりますが。」


開拓者は沢山お金を持っていて、だから開拓者向けの武器の値段はどれも強気な設定。高いけどお値段相応にとっても頼れる品質。高くてもいいから良い物を、というのが業界内のニーズだった。


「ラフィの話を横から聞いてると規模が大き過ぎて理解出来ない。ぼくもそんな額のお金を動かす機会なんてそうそう無いし。」


「ラフィだけの悩みね。20丁も持ってたら立派な武器マニアなのにラフィは雑銃除けばもう500丁以上はあるわ。文字通り歩く武器庫よ。」


ラファエルさんの呆れた顔。だって、皆を守るには沢山の武器がいるんだもん。


「とにかく、ミニフィーよりも皆の方が装備も充実していて強いんです。ミニフィー達は必要最低限の装備しか無いから、対応力も低いですし。」


「だから皆で力を合わせて乗り越えましょう!出発です!」


ボク達が指示を出せば3000体のミニフィーが動き出す。3000体となれば規模はギリギリ旅団相当。開拓者の集まり的な意味じゃ無くて、軍事用語で言う所の。本当は5000体出したかったけど、武器が無いんじゃ居ても意味無いし生体ゲルの無駄になっちゃう。


一斉に動けばその光景は圧巻で、ボクと同じ格好をした白い波が統率された動きで進んで行く。見分けやすいよう、一部の特殊部隊のミニフィーの服装は少し弄って変えていた。呼び出す時にユリシスに設計図を登録しておけば、服装ぐらいなら変えられる。


ブレードランナーを駆る部隊は青色の軍服風。紫電M10を使う部隊は黒軍服をイメージしたカッコいいコートを纏う。第4旅団のヒト達の服装がカッコよかったから真似てみたんだ!


街の皆も防壁の上に上がって、行軍する姿を見送ってくれた。


「行ってきます!」


手を振ってボクも進み出した。


駆動魔具を扱う部隊とボク達の行軍速度と、それ以外の大多数ではかなり差が出ちゃう。けど時間がどれぐらいあるか分からないから、威力偵察も兼ねて先行していた。


「実際に動かしてみると、やっぱり駆動魔具ぐらいは欲しくなるわね。でも高いのよねー。」


『民間向けの通勤が便利になる駆動魔具の類はどうでしょうか?快・活・堂はそういうモデルも手広く売ってますよ?』


魔具路を使わずとも、一般歩道で使える駆動魔具は結構ある。勿論歩道端を通る法律もあるし、混んでる場所での使用は厳禁だけど。大体自転車よりも速いかな?ぐらいの速度で、MODを搭載して改造すればもうちょっと速くなる。

開拓者が使うようなモデルと比べてかなり遅いけど‥‥ミニフィーはデフォルトでも特殊なマギアーツが仕込まれてるから結構速いし。


一般人が全力で自転車を漕ぐよりは速いけど、開拓者に追いつける程の速度は出ない。そんな微妙な速度だからつい駆動魔具の配備が遅れがちになっちゃう。


「結局の所地道に揃えて行くしかないのです。精々ラフィ様にシブサワがもっと貢ぎたくなるぐらい活躍してやりましょう。」


枝分かれした狭い通路の内部は、アナグマの首長達が無人偵察機で既に調査を済ませていた。ボク達は光学迷彩で姿を消して、出来るだけ見つからないよう奥へ奥へと進んで行く。蜘蛛達はミニフィーの旅団を警戒して、完全にそっちしか見ていなかった。


「ここからはマップデータがありませんが、当機が痕跡から推察しましょう。」


ブランさんが皆の先頭を行き、暗い通路を時速150kmで駆け抜ける。


「こんな場所をブレードランナーで走るだなんて、ぼく達じゃなきゃ無理だろうね!」


「転んだら置いてくわよー?」


「ラフィ様に払う医療費を今の内に用意しておいて下さいませ。」


「この‥‥!バカ。」


通路は凸凹で、場所によっては這って進まなきゃ行けない場所や水没した場所もあった。でも本気で動くボク達はお構い無しに一直線!


「前方に小規模な蜘蛛の群れです!」


「突破するわよ!」


少し開けた空間に出る。動いた大気で蜘蛛達がボクらに気付き一斉に酸を吐きかけてきた!光学迷彩を切って、向けた銃口で迎え撃つ。一瞬で20匹近い蜘蛛が砕け散って、ボク達の襲撃を知らせる為に動き出した数匹を確認した。


「逃がさないよ。」


ラファエルさんの光学ドローンが逃さず灼き貫き、群れを纏める一際大きな蜘蛛にもレーザーの雨を照射!


地面を揺らし、驚く程の瞬発力で大きな蜘蛛はその場を逃れる。一瞬で役割が決まり、R.A.F.I.S.Sで共有された。


あの大きな蜘蛛は光学兵器より実弾兵器の方が有利。光学兵器はカス当たりだと威力を発揮出来ないけど、実弾はカス当たりでもバリア装甲が無ければソニックブームで斬り裂ける。


その代わり大量の蜘蛛を纏めて撃とうとすると、1匹貫通する毎に大きく速度が失われて破壊力が下がっちゃうから。その点は光学兵器の方が貫通力が圧倒的に高い。


ラファエルさんとタマさんで子蜘蛛を。ボクとブランさん、5体の精鋭ミニフィーで大蜘蛛を倒す!


的確に照射された光学ドローンレーザーが子蜘蛛を纏めて貫き、タマさんのブラックキャットが大きく薙いで纏めて子蜘蛛を灼き絶った。タマさんの軍用ドローンの威力はやっぱり凄い。


大蜘蛛が散弾状の強酸を噴射!ミスリルシールドで受け流しながらも、S.S.Sから紫電M10を5丁覗かせて猛反撃!紫電弾の爆発で大蜘蛛の体毛が千切れ飛び、足が数本折れて転がった。


踏み潰そうと飛び上がって突っ込む大蜘蛛のすぐ側を抜け、ブランさんが至近距離からacus(あくす)を抜き撃った。クラスDクラス相当の質量弾を撃つ、純白のライフルは蜘蛛の血で濡れず。酸性を帯びた返り血すら躱して、蜘蛛の目を精密に狙い撃っていく。


囲うように動くミニフィー達も、ボクと一緒に腹部を紫電弾で集中的に狙って爆砕した。辺りに酸の体液が撒き散らされ、この空間全体が濡れた。


R.A.F.I.S.Sで連携の取れたボク達は、ミスリルシールドや遮蔽を使ってしっかり回避していた。


「ここはお終いね。このままコロニーに飛び込みましょう。」


そう言うタマさんに返事をする直前。ふとR.A.F.I.S.Sが視界外の空間を動く不審な影を捉えた。それは街とは反対方向から向かってくるけど、コロニーを迂回して大回りすれば辿り着けそう。


情報を共有した皆と目配せをして、すぐに確認へ向かった。何だか嫌な予感がしたから。


「今ミニフィー旅団と蜘蛛の群れが会敵しました!」


旅団はそのままコロニーへ直進。主戦場に開けた大空洞を選んでいた。元々別の地下街があったらしい場所は、もう廃墟の名残も消え去って瓦礫しか無い。防壁も崩れて広い空間だけが残されていた。


かつてここに地下洞窟型のダンジョンがあったらしい。コアが破壊されて、残った空間に街が出来て滅んだ。かつての街の名前、カサノバからここはカサノバ大空洞と呼ばれていた。


歴史あるカサノバ大空洞で、大規模な戦いの火蓋が切って落とされていた。


体長10mを超える巨大蜘蛛の存在は、かつて異界地で語り継がれていたエイトランス・テラースパイダーに酷似している。勿論この名前はニホンコクが直訳した通称で、和名はオオハチヤリジョロウグモだけど。


鋭く大きな8本の脚を槍に見立てた名前の見解は一致していた。


現れれば村が消え、街が滅ぶ怪獣らしい。群れれば亡国の危機を招くってお話だった。確かに剣と魔法で戦うのはすっごい危険そうだけど。でも今は銃の時代!油断は無いけど勝てる筈!


勢い良く噴射されたのは巨大な蜘蛛の糸!強酸の体液滴る蜘蛛糸が、ミニフィーの頭上を覆った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ