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343、炎怨の狐に悪魔が手を伸ばす

ゴビの尾が銃を掴み、激しい銃撃でタマとラファエルを追い回した。瓦屋根が砕け破片が宙を舞うも、3M50が撃ち出した銃弾がすれ違ってゴビへ迫った。


互いに遮蔽の無い中、激しく動き回って銃弾をカス当たりに留めて立ち回る。


「動くんじゃないよ、バカ。」


光学ドローンがゴビの頭上を追い回し、照射されたレーザーの中身軽にすり抜けて事なきを得た。しかしラファエルの持つ大型の光学銃、ホーリーライトがゴビの胴を容赦無く撃ち抜く。ドローンの攻撃を躱されるのは想定内。本命の一撃をモロに受けてしまった。


(流石子供開拓者です‥‥!狙いが鋭い!凄まじく強い‥‥!)


手印を組むも、タマの抜き撃った一撃が指を吹き飛ばす。銃を収納にしまい、同時に動いた尾が代わりに印を結んだ。


「出番ですよ。」


それは古来から伝わる神話にも姿を現す大妖。八岐大蛇(ヤマタノオロチ)が現出した8つの鳥居から首を突き出した。


サイバーパンクの世界で、殺生石から復活を果たしたタマモは妖としての強力な力を保ったままだった。しかし他の妖は時の流れに逆らえず、抜け殻のようになって人界から離れた場所でひっそりとしていた。


山の奥深く、深い池の底の泥の下、遙か天空、その身を川として横たえたまま。


九尾衆に命じたのは妖の抜け殻の回収だった。妖という種族そのものを独占してしまおうという、タマモの計らいでゴビも動いていた。


そして得た多くの妖の抜け殻は、自我が回復したものもあれば、中身が曖昧な紙風船のような存在に成り果てていたものもあった。


八岐大蛇は半ば自我を取り戻しつつも、ゴビの妖力に縛られ使役されてしまっていた。動けばその質量で容易く塔を薙ぎ倒す。大怪獣に匹敵する脅威を街の只中で呼び出したのだ。


「デカいの呼ぶんじゃないわよ!」


タマのフードから飛び出したブラックキャットが光線で薙いだ。八岐大蛇の首を落とすも、落ちた首は消失。そして瞬き一つの間に生え変わっていた。


「蛇は嫌いなんだよバカ!」


ラファエルの光学ドローンが的確に八岐大蛇を撃ち抜くも効果は薄く。


『攻撃を継続しましょう。無敵って訳じゃ無いでしょうし。そうですね、ゴビはワタシが相手をしますので。』


タマのホロウインドウがパッと開き、ゴビの目前にブカブカの白タキシードを来たフィクサーが現れた。調子良く手を叩き、人外の星形の瞳に5の尾を映す。


「妙な気配ですね。」


「にゃはは、悪魔ですし?英雄譚に堂々と姿を現すのは、ラフィさまを推すワタシとしてはちょっと不躾で遠慮したいのですが。まぁ、ワガママを言ってラフィさまをガッカリさせるのも本意じゃありません。」


収納から再び取り出した銃でフィクサーを狙うも、一瞬の間に後ろへ回られ肩を叩かれた。フィクサーは距離を操る悪魔由来のブラックボックスアーツを得意とする。マギアーツとして体系化された空間拡張技術も、元々は悪魔の魔法が出所。何処かの気まぐれな悪魔が取引した結果人類へ漏らしたのだろう。


5丁の銃がフィクサーを至近距離で狙うも、距離が急に1キロ近く離れてフィクサーの手に勢いを失った銃弾が握られた。


思わずギョッとした顔のゴビをフィクサーは指す。範囲をごく狭い範囲に圧縮する代わりに、大幅に威力を増した衝撃のマギアーツがその胴を吹き飛ばしてしまった。


「ゲゥッ?!かっはっ‥‥?!」


「だってワタシは強すぎますし?にゃはは、武力ならラフィさま達で十分なんですよ。別に闘争はワタシの好みでも無いですしね。」


転がるゴビは青白い炎を更に燃え上がらせ、炎で出来た5mの体躯の狐を作り上げた。


「調子に乗るな!」


狐が姿を自在に変えながらフィクサーを追い、5丁の銃で畳み掛ける。しかしその姿を捉えられず。暖簾に腕押し、(ぬか)に釘。


結んだ手印が更に鳥居を現出させ、口裂け女が姿を現した。大きなマスクで隠された顔は見えず、


【ワタシ、キレイ?】


フィクサーはヘラヘラと。


「ワタシの方がずっとプリティーな顔立ちですね!」


手にしたハサミが振るわれれば、途端にフィクサーの口が裂けてしまった。回避のしようがない、因果律に作用するブラックボックスアーツ。悪魔の知らない技術に思わず、口元を押さえてたたらを踏んだ。


(ほぅ?面白いですね。妖は興味の尽きない種族です。)


激しい銃撃はフィクサーの脇を通り抜け、燃える狐の炎を指して衝撃で霧散させる。大気ごと吹き飛ばされれば流石に炎の狐は近付けない。ただ、形を直ぐに取り戻すとしつこく追い回した。


【ワタシ、キレイ?】


再びの問い掛け。


「同じ質問を繰り返すだけ虚しくなりませんか?それとも同じ答えを何度も聞きたい自虐気質で?」


ハサミが動き、今度はフィクサーの両耳を切断してしまった。


【ワタシ、キレイ?】


フィクサーの首をハサミに挟んで問い掛ける。悪魔はニタリと笑った。



───口裂け女は裏路地に立っていた。何処かの住宅街は夜の影に覆われている。家族連れを見る口裂け女が何か言う前に、隣に立っていたフィクサーが覗き込んだ。


「結局の所、キレイって何でしょうか?」


意表を突かれたよう、一瞬黙る。


「容姿が?心が?生き様が?貴女は生前ヒトでしたよね?分かりますよ。魂の残香だけの存在、ニホンコク風に言えば悪霊でしょうか。悪魔のワタシは全部お見通しです。」


黒ずんだ目を、人外の瞳が覗き込んだ。


「真にキレイなヒトは居ませんよ。ヒトってのは平面的な評価を下せない存在です。」


容姿がキレイでも、心が黒ずんで汚いヒトがいる。


心がキレイでも、容姿が伴うとは限らない。


そしてその両方を得たキレイに見えるヒトも、その100年近い人生を只ひたすらにキレイに生きれる者は居ない。


道端のアリを踏んだ事はない?捨てようとして投げた缶がゴミ箱に弾かれても、必ず絶対全部拾ってる?悪にも善にも振り切れず、他人を何処までも尊重して何一つ強要した事は一切ない?


「答えましょう。キレイはそもそも存在しません。貴女自身も、誰も彼も。存在しない空虚を尋ねて回る事に何の意味が?」


絶望に見開いた瞳にフィクサーは救いを提案し‥‥


口裂け女の姿が溶けるように消失してしまった。ゴビは驚き、その拍子にフィクサーの手が迫った。





八岐大蛇の首をビームシュナイダーで掻っ捌き、一瞬足に装着した燕尾服の強化外装で蹴り飛ばして吹っ飛ばす。3M50が再生した端から大蛇の頭部を破壊するも、ブレードランナーで宙返りしたタマの直ぐ下を巨体が突き抜けた。


「本当に効いてるのかしら?!」


「効いてなくても注意を引き続けなきゃ街が壊滅するでしょバカ。少しは考えたらどう?」


「コイツ‥‥!」


ラファエルを1発シバいてやりたい。しかし、それどころじゃない。歯軋りしながらも荒れ狂う蛇を相手取っていた。


高く飛び上がって街を俯瞰(ふかん)すれば戦況が見えてくる。


(宮殿の方は片付いたようね。街に引き返して小型の妖の掃討戦が始まってる。このデカブツを何とかすればやっと終わりが見えてくるかしら。)


‥‥いや、外にはまだデカい害獣のコロニーが待っている。思い出しただけでゲンナリした。


(ラフィが今戦ってるんだから、早く倒して加勢に行けるようにしないと。ダメね。頼り過ぎて任せっきりにしちゃいそう。)


「考えろ〜。神話上の妖だっけ?」


このままでは埒が明かない。仮に古来から本当にこの怪物が存在したとして、それを打ち倒した神話の存在が仄めかされていた。


神話が知りたい?スマイルに訊こう!しかし今は圏外!


「ラファエル!1分待ってて!調べもんがあるの!」


「はいはい、逃げたいならどうぞ。ぼく一人で十分だから。」


「こんの‥‥!生意気な奴!」


適当な壁の側面にパンタシアのドアを開き、中に飛び込んで専用回線でネットに繋ぐ。ドアを閉じればこの空間は独立した異空間となり、ジャミングの影響を受けない。


八岐大蛇を打ち倒した英雄の名はスサノオ。


「酒を飲ませて酔って寝た所を襲った?姑息な奴ね。ただ酒に弱いかもしんないってか。」


勿論上等な酒をこの状況で持ち出しても意味は無い。ただ、酒気を撒くだけならやりようはあった。


業務用通販サイトに接続。安くても良いから度数の高い酒と、それを撒ける業務用噴霧器を購入!転移して来るまでの数秒間待ちきれずにその場で足踏みしてしまう。


通販の待ち時間がこんなに長く感じたのはいつ以来だろうか?1週間前、ラフィの写真集第4弾の雑誌バージョンを買った時だったか。せっかちなタマは案外そういう機会が多かったのかも知れない。


転移陣に噴霧器が来れば即座に蓋を開け、中へ樽詰めの酒を投入!本当にこんなアホなやり方が通用するのか?と疑問が何度も頭を過ぎる。ただ、今は行動を起こすしかなかった。


用意が出来たタマはパンタシアから飛び出す!光線が乱舞する戦場に、噴霧器を担いでスイッチを入れた!


「うわっ?!」


思わず声を上げるラファエルを無視して、凄まじく濃厚なアルコールの臭いを辺り一面にぶち撒けた!バリア装甲がその臭いを伝えて来る。酒が好きなタマが思わずオエっと思うぐらいには臭かった。


明らかに八岐大蛇の動きが鈍った事に気付いた。


明後日の方向を攻撃して、そのまま塔にもたれ掛かったまま沈黙してしまった。


「動きが止まった?」


「酔っ払って寝ちゃったんでしょ。デカいくせに下戸なのね。どう?大人の戦い方は。お子様には出てこない発想よねー。」


「フン、バカみたい。まぁ解決したんなら良いんじゃない?後はゴビだけだから、ほら集中。」


「可愛くない奴。」


ゴビに意識を戻した所、フィクサーがゴビの頭を掴み上げている所だった。

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