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316、妖しくも仄暗いビジネスの毒牙が少年に迫る

───初めての敗北。ラファエルが目を覚ましたそこは暗がりの廃墟。少しぼぅっとしながら虚空を見つめる。


最初に銃を握ったあの日。姉は特別な存在だったみたいで、同じ血を引くラファエルももしかしたらと。孤児院でみすぼらしかったラファエルは大人達に引き上げられた。


物心ついた時には親は居なく、探しても名乗り出るのは親を自称する気色悪い奴らだけ。欲しいのは子供ではなく、子が生み出す巨万の富。幼少期から既にやさぐれ全ての大人を呪った。


(アレがラフィ‥‥)


セツナも強かった。しかしラフィからはその上を行く、次元の違う強さを感じた。揃えた装備の質もさながら、それを完璧に扱いこなす卓越した技量。性能の良い高級品になる程、その真価を発揮して扱うのは難しくなっていく。


ただでさえ扱いの難しいブレードランナーを、更に改造して時速250kmの最高速度で躊躇なく宙を駆ける。銃の狙いは異様な程に正確で、ラファエルの常識を打ち砕く神業で翻弄された。


その顔をしっかりと見ておけば良かったと思う。戦うのに必死でよく見ていなかった。


段々と意識がハッキリしていく。今は昼休憩の時間か。負けたら警備ドローンに回収されて無様を晒すと思っていたが、どういう訳か徒歩で帰還できるようだった。強化外装のバリア装甲のバッテリーは切れていて、自動補充も間に合っていない。


(最低限バリア装甲が復活するまで待つか。)


適当に勝って終わらせるつもりだったのに、バカ明るい子供に振り回されて負けてしまった。ああ、情けない。大人達はバカにしたような猫撫で声で、幼児をあやすよう嫌味ったらしく慰めるだろう。ムカつくクソ野郎の顔が幾つも浮かんでは、脳内で蹴り飛ばして血煙に変えて行く。むしゃくしゃして本当にぶっ殺してしまおうかとも考えた。


ふと、暗がりの部屋を見渡すとドアが閉まっている事に気付いた。何処かの廃墟の一室か。もしかしたら地下かもしれない。


そこまで考えて嫌な予想が膨らむ。意識の無いままここに自力で来たとは思えない。誰かに攫われたのか。


組合警察と警備ドローンが監視するこの街から、ヒトを攫って逃げる事は容易では無い。スマイルの時計を見る限り街を出れる程時間は経って居なかった。


(スマイルが圏外‥‥?ジャミング装置が動いてるな。ぼくは攫われたって事で確定か。)


収納から銃を抜こうとするも、収納内は空っぽ。違法だが他人の収納内を勝手に弄るツールがある事を聞いた事がある。警察が使うもののコピー品だとか。開拓者を攫う際、犯罪者達が使う必須ツールだった。


部屋の外から声が聞こえる。


「えっ?!捕まえたって聞いたけどラフィくんじゃないの?!」


「もう片方だよ。あー、私もラフィくんだって聞いたから参加してたのに。」


「ま、現実的にアレを捕まえるなんて無理でしょ。ラファエルだって結構可愛いじゃん?」


「子供相手ってだけでテンション上がんないのに。適当に済ましましょ。」


「悪いけどウチ抜けて良い?ラフィくん一筋なんだよねー。他の子に裸見せんのはちょっと。」


足音が一つ去って行く。


「えー?ラファエルだって可愛いよ?性格クソだけどそこも屈服させ甲斐がさ。お姉さんが調教しちゃうんだから。」


「はいはい、急がないと。ここだっていつ警備ドローン飛んでくるか分かんないし。ガキなんて秒殺だから。」


「見張りが騒ぐまでは大丈夫だって。出なくなるまで出さないと、ね?」


不穏な会話をする2人の女性が、ドアを開けて入って来た。サキュバスのような豊満なボディラインを強調する、セクシーライダースーツ型の強化外装を着こなす。


出会い頭に蹴りを放つラファエルを軽く躱し、腕を掴んで2人がかりで組み伏せる。


「わっ?!このガキ!」


「うへへ、元気いっぱいでちゅね〜。」


「離せっ!!このっ!バカっ!」


両手を磁力手錠で止め、その間にもう1人がマシュマロガンを床に撃った。マシュマロクラウド製のベッドが一瞬で出来上がり、ラファエルを引き摺って無理やり乗せてしまう。


「ほ〜ら、別に怖い事は無いからね〜。」


「とっとと済ますぞクソガキ。」


ラファエルへハンターの手が迫る。例え子供だろうが有名人の子種の売買はビジネスになる以上、大人達は容赦無かった。





「ラファエルさんが行方不明ですか?」


テロを未然に防いでロゼさんと聴取をするボクへ、ヒト探しの依頼が飛んできた。


「ラファエルさんは最後ラフィさんと戦っていた筈です。その後見てませんか?」


ノックアウトした後、そのままセツナさんと一緒に居て。抱き付いたまま暫く離してくれなかったから。でもそのままテロの話を聞いて直ぐに急行したから見てないな。


「ごめんなさい。」


「機能食品のユニコーン社から現地にいるラフィさんへ指名依頼が入ったのです。」


申し訳なさそうにロゼさんが説明してくれた。ボクのヒト探しの依頼の達成率は今のところ100%。脳波さえ記録出来ていれば簡単に見つけられる。


「なんかラフィを便利に使う気マンマンね。」


ランブルファイトの本部を出て、タマさん達と合流してそのまま向かう。既にラファエルさんの行方不明の話が開拓者達の中にも広がっているみたいで、そこかしこから話が聞こえた。


「仮にも組合警察が監視するこの街でテロに誘拐に、随分舐められてるわよね。」


タマさんの呆れた声。ブランさんも同調する。


「実際防げていない以上、舐められても仕方ありません。そもそも街一つというのが会場として広過ぎるのです。」


実際人手が足りずに警備ドローンに頼っているみたいだし。そんな警備ドローンも、流れ弾とやらで既に何機か故障させられていた。


『ランブルファイトは毎回荒れまずが、まぁ色んな利権が絡む都合上廃止にならないんですよね!だってこんな混沌としていて、色んな悪事をコソコソ堂々と出来ちゃう美味しいお祭りですよ?にゃはは、しかも責任は組合持ち!』


方々に多額のお金が流れ、その終着地点の一つにこのお祭りがあるなんて。ここで起きた事件は誘拐程度なら報道もされないって聞いた。流石にテロは大事件だから隠蔽出来ないけど。


結局ここで名を売る為に参加したいのなら自己責任。契約書にサインした以上、犯罪に巻き込まれても自衛してなんて。無責任で酷い話。だけど毎回凄い数の参加者がやって来て大賑わいするらしい。


道中、セツナさんがやって来た。


「ん。探してるの?」


「はい!ミニフィーを放って全域を捜査します。」


「ん。(誘拐犯と戦うなら着いてく。)」


手伝ってくれるのかな?敵の数も分からないし、人身売買の大組織とかだったら危険だから。


「お願いします。そうです。テロの時もそうでしたけど、皆にお世話になっちゃいましたから。終わったら手伝ってくれたヒト達に、ええと。何をしたらいいかな?」


タマさんがそんなの当然と枕言葉を告げ、


「ラフィの奢りで大規模な打ち上げパーティーでも開いたらどうかしら。絶対喜ぶわよー。この業界そういうの嫌う奴は居ないから。」


そっか。美味しいものを沢山デリバリーして、皆で打ち上げするのも楽しそう!セツナさんもちょっとワクワクな雰囲気でボクに寄り掛かった。


ううっ、セツナさんは少し近付くと磁石に引き寄せられるみたいにくっ付いて来ちゃう。髪から良い香りがして落ち着かない。


ミニフィーが散って行くと、街の外れのビルの地下室で反応を捉えた。ラファエルさんの脳波だ!でも反応は1人だけ。誘拐犯は居ないのかな?もしかして返り討ちにしちゃったとか?


「行きましょう!」


ボク達は一気に外れまで急行!今日は一日中街の端から端まで忙しい!


ボクの連絡を受けてロゼさんも着いて来てくれるみたいだった。ボク絡みの案件はロゼさんとメリーさんが受け持ってくれる。頼もしかった。


現地の場所を伝えて現地集合。見下ろした廃墟ビルは3階建てでずんぐりと大きかった。


「ラフィ、覚悟しておいた方が良いかも。」


何かに気付いたタマさんが、少し先行してビルの地下へ足を向ける。


「現着しました!」


ロゼさんも合流して皆で階段を下って行った。道中誰も居なくて、拍子抜けだった。奥の部屋に近付くと、いよいよタマさんの顔が険しくなる。半開きのドアを蹴破り、ボク達も飛び込んだ。


そこにあったのは真っ白ふわふわなベッド。マシュマロクラウドだっけ。部屋中から生臭い匂いがして、ベッドの上に裸になって横たわるラファエルさんが居た。


「ラフィさん!下がって下さい。」


ロゼさんも事態を察して直ぐにラファエルさんを抱き起こす。反応が薄くて、脈の確認をされている間も殆ど動かなかった。


R.A.F.I.S.Sが、ラファエルさんの閉じて冷たくなった心を察知した。下がってなんていられない。ボクが癒さなきゃ。


「ボクはアコライトです。癒しますから、任せて下さい。」


展開したエンジェルウイングが、ふわりとラファエルさんを包み込む。少しだけ反応して、ボクを見上げた。


「もう大丈夫ですから。絶対犯人は捕まえます。」


ラファエルさんの目を一筋の涙が伝った。

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