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312、天使の頭にダンクシュート!大乱闘開拓者バスケ!

両手には2丁の可変式の拳銃。大口径、それでいて脳波でバレルの長さを変える事が出来る。最大まで伸ばせば、その射程はスナイパーライフル並み。


オーダーメイドしたトイ・ガンでラファエルは無双していた。ヤマノテ・トウキョウ両都の開拓者も、傭兵もラファエルを前にあんぐりと口を開けて驚く事しか出来ない。


軽快なステップの先に銃口が追い付かず、涼しい顔で頭を的確に撃ち抜いて吹き飛ばされる。そして倒れる大人に去り際、


「自分の実力ぐらい把握しろバカ。」


それだけ吐き捨てて行く。


「こんの、チクショーッ!!」


早々にKOされたイトウとキッドを残して戦う、勇猛なオーガ。クリムゾン・イシダは転がったまま悔しさに吠えた。


「兄貴‥‥やっぱり子供開拓者は無謀でしたぜ。」


「クッソ!出会っちまった以上背中を向けて逃げられるかってんだ!」


情けない大人を一瞥もせず、ラファエルはビルの屋上へと駆け上がる。程々に活躍したら適当に終わらそうと考えていた。別に大人の勝手な期待には興味無いし、こんなオモチャを振り回すバカらしい戦いなんてどうでもいい。


そんなラファエルに鋭い飛び蹴りが迫り、身を翻した瞬間襲撃者と目が合った。白いキャップと薄青いマフラーで顔を隠した、雪の精を思わせる儚げな美少女。ラファエルと同じ色の髪は青く美しい。


すれ違う一瞬の間に、ラファエルの腹部に一発分のトイ・マグナムの直撃を貰っていた。


ヤマノテが誇る最強の独立子供傭兵、セツナはラファエルへ一方的に発砲を繰り返す。前口上も無く、ラファエルをそこらの雑魚と同じように片付けてしまおうという傲慢な振る舞い。これにはラファエルも歯軋りをしてしまった。


「お前‥‥!いきなり何すんだよ!」


2丁マグナムと、2丁可変拳銃が激しく魔法弾を撃ち合う。イシダの見上げた空で、途端に激しい花火大会が開かれた。魔法弾の色はカラフル、弾同士が衝突すれば綺麗な輪っかを作ってその場で小さく爆発する。イシダのぼやきは銃撃戦の音に消えた。


「ったく、才能に恵まれたガキは恐ろしいぜ。」


ラファエルの目前に迫るマグナムの銃口。ラファエルの小さな体は自在に宙を駆け、簡単に斜線から逸れた。2人とも履いた駆動魔具はエアキャット。しかしラファエルはそこに小型バーニアを背中に付けていた。バーニアの噴射口が向く方向を制御して、高速で宙を飛んで戦える。姿勢補助の為の小型バーニアを体の各部位に付けて、必要に応じて噴射した。


セツナも強力な空歩のマギアーツが組み込まれた、特別製のエアキャットを履いていた。空中を10歩近く連続して移動できる。しかも同じエアキャットを数セット収納に持っていた。10歩で足りないなら、地上へ降りて減圧せずとも他のエアキャットに履き替えればそのまま動けるのだ。


ラファエルが距離を取れば、そのままバレルが伸びて鋭い狙撃を放つ。その一撃には若干の焦燥が込められていた。


対するセツナは互角に戦うラファエルへ冷静な反撃を繰り返す。バーニアを絡めた移動をするラファエルよりも、エアキャットだけで動くセツナの方が単純な速度は上。対空時間が長い代わりに速度はやや遅い。それに対しエアキャットは短距離をすっ飛ぶ駆動魔具。姿勢制御に僅かな隙を見せるバーニアよりも速い。


それ以上に、ラファエルは内心焦りを感じていた。今まで誰もラファエルに敵わなかったのに、この瞬間互角に戦う同い年ぐらいの少女がいる。同格の敵との戦いは経験が乏しく、どう立ち回れば良いのか分からない。


さっさと勝負を済ませられない長期戦の予感に、苛立ちを感じていた。


セツナはラフィとの戦いから同格以上の敵との戦いを知っていた。一挙一動が予想を超え、神業を以て攻撃を捌いてくる。そんな存在との死闘を知っているからこそ、ラファエル相手の戦いに精神的な余裕が生まれていた。


吹っ飛んだ先は、小学校の廃墟。狭い教室にガラスを割ってエントリー!そのまま2人の銃が激しく魔法弾を吐き出す。僅か数秒で10を超す魔法弾が空中で衝突、机と椅子が舞い上がった。


セツナの蹴った椅子が回転しながら迫り、撃ち抜いた時には破片に紛れて姿を見失う。光学迷彩で姿を消した事を悟った瞬間、セツナの蹴りがラファエルの脇腹を突き飛ばしていた。


「生意気なっ!」


「ん。」


至近距離での格闘戦。セツナをバレルで殴り抜こうと振り抜き、顔を逸らされて宙を薙ぐ。セツナの銃口をバレルでどついて退かし、真正面から横へ身を滑らせたセツナに追い付くようエアキャットを駆動させる。


銃口の先にセツナの毛先が舞い、アッパーカットで振り上げられたマグナムは当たらない。エアキャットを片足分駆動させ、宙を半回転した勢いのままラファエルの蹴りがセツナを吹き飛ばした。


再び飛来するセツナの蹴り、そして片手に持った‥‥折れた机の脚。尖ったパイプがすれ違いざまにラファエルの目元のバリア装甲に突き立てられた!


ヒトは目に向かって尖った物を突き出されると、反射で目を閉じてしまう。


装甲を貫通する事は無いと分かっていても、ラファエルは反射に抗えなかった。瞬き一つの無防備の間に飛んで来た蹴りが股の間を蹴り上げた。

すれ違った瞬間にセツナはエアキャットを片足分駆動させ、勢いを殺してその場に止まる。そして背面へ振り上げた足の踵がラファエルのまたぐらに容赦無く激突したのだ。


「アアッ?!」


「ん。」


僅かに見せた嗜虐的な視線が、思わず怯むラファエルを見やる。億単位掛かる高額な強化外装が痛覚を完全にシャットアウトし、すぐさま肉体を治療し再生を始めていた。しかしまたぐらが気持ち悪い形に壊された強烈な不快感が集中力を削ぐ。


再度の腹部への蹴りが、強引にラファエルの胃に内容物を吐き出させた。教室の壁を壊して転がるラファエルは、初めて地面を舐める屈辱を知る。


「調子に‥‥乗るな!!」


激しい銃撃、躱すセツナへミスリルシールドで身を守りながら突っ込む。体当たりを食らわせるも、直後に取ったセツナの行動に思わず思考が停止した。


共有モードにしたホロウインドウに、ラファエルの必死な顔が表示される。そしてまたぐらを蹴られた間抜けな顔、胃液を吐いてうずくまる所、口元を汚したまま体当たりをする顔。


「ん。」


対人戦のプロ、タマから学んだ悪辣な戦術。プライドの高い子供開拓者を煽り散らかし、一気に激昂させる一撃。セツナの視線は嘲笑するよう、バカにしきった気配を見せる。


戦闘中の怒りは隙しか生まない。少年漫画の主人公は怒りの力で覚醒して強敵を圧倒するが、現実は(むし)ろ状況を悪化させるのだ。


「お前!!!」


不用意に銃口を向ける瞬間、蹴り上げられ思わず手放す。至近距離から発砲されバリア装甲を一気に削られる。


‥‥強い。


銃床のアッパーで意識が飛び掛けた時、思わずラファエルの思考に逃走の選択肢が浮かんだ。生まれて初めての敗北を認めて逃げ出すのか。


その時だった。同じく教室へ飛び込んで来たもう1人の子供開拓者、ラフィが現れたのは。





セツナさんが戦う気配を察知して、思わず飛んで行く。折角なんだし戦いたいなって。前みたいな殺し合いはヤだけど、オモチャで撃ち合うのは楽しいから。


きゃーっ!って感じに廃墟の教室へ飛び込むと、丁度セツナさんがもう1人の子供開拓者を追い詰めている所だった。ボクへ注意が逸れた瞬間に、セツナさんは反撃の銃撃を貰って距離を取る。


この場の全員が2丁拳銃!面白い組み合わせ。背後にアクアマリンを浮かべるボクを、2人が驚いた風に見上げた。


「ふふん、早速勝負ですよ!」


ラファエルさんだっけ。顔合わせは初めてだけど、メディアに出てたから顔は知ってる。可愛い顔立ちなのに、ボクと同じ男の子。親近感が湧くっていうか。現役の同じ子供開拓者は初めてだから、お友達になれないかな。


「邪魔すんなバカ!!」


ラファエルさんの怒声と一緒に飛来する魔法弾。薄虹の水壁に阻まれ、ステラヴィアを履いたボクは一瞬でラファエルさんの真正面に迫った。顔が至近距離にあって、目がピタリと合う。


「お友達になりませんか?」


「なっ?!」


蹴りを軽いステップで躱し、距離を離そうと動くラファエルさんに追従する。スピードスターを構えたままぐるりとその場で一回転!全方位に魔法弾をばら撒いて、見てるだけなセツナさんも纏めて攻撃!


折角なんだし参加しなくちゃ。


「ん。(勝負するね。)」


「お願いします!」


教室を皆で飛び出し、2人の間を薄虹の軌跡を残して駆け回る。時速250km!100km前後のエアキャットじゃ追いつけない!


それ以上に複雑な挙動で滑走出来るお陰で、2人は驚いた顔でボクを目で追った。2人の周りを一周した後、攻撃開始。真下からの銃撃を飛んで躱す2人は、そのままボクへ反撃してくる。


同時に2人も互いを撃ち合い、三つ巴の銃撃戦になった。


薄虹の壁を遮蔽に、ボクは宙を好きに駆けて戦う。2人ともボクに背後を取られないよう、一挙一動に反応して攻撃してきた。そんな中スピードスターを頭上から浴びせながら落下、クルクルと錐揉んで魔法弾をばら撒く。


ラファエルさんに肉薄した瞬間、銃床が振るわれるけど一瞬足元に薄虹の水面の足場を出して逆さまに着地。天地逆さまのまま小さな足場に着地したボクの、直ぐ頭上を腕が通過する。急にピタッと変な姿勢で落下が止まった事にラファエルさんは目を見開き、目測を見誤った代償に至近距離からスピードスターを浴びせ掛けた。


回避が遅れて数発直撃するけど、致命打を免れて距離を離す。セツナさんが便乗して追撃するも、それもすっごい速度で旋回して躱し切っていた。


足元に一瞬水の足場を出して、ジャンプ台みたいにカーブした足場にステラヴィアを片足乗せて駆動させる。するとボクの体はその場でグルン!と勢い良く吹っ飛ぶように回転して、次の足場も同じようにカーブしたジャンプ台。その結果激しく縦回転しながらセツナさんへ一気に迫る。


「ん!(その動き怖いからやめて)」


遠心力に振り回されながら数発。不規則なタイミングで魔法弾が飛んで、振り回される動きのボクには反撃が当たらない。一発が不意にラファエルさんへ飛んで、攻撃のタイミングをスカされていた。


水の足場の上を滑走して大きくカーブ!セツナさんを中心に動いて四方八方から銃撃!逃げても駆動魔具の性能差で距離を詰めたまま、頭上から真下までグルンと動いて浴びせ掛ける。流石のセツナさんも対応しきれずに被弾を重ねていった。


ラファエルさんの銃撃がセツナさんの背後を狙って、身躱したセツナさんもボクとラファエルさんへ反撃。真下へ迫ったボクの銃撃に注意が向いたラファエルさんは、セツナさんの銃撃を貰ってしまった。


宙を皆ですっ飛びながら着地した場所は、壁を蹴破った先の体育館!地に足が着けば皆の動きは軽く、ボクも2人の間を滑走して八の字に虹を残す。スピードスターが眩い魔法弾をばら撒き、2人もボクを挟んで激しく撃ち合った。


前後の魔法弾をくるくる横回転して躱しながら、照準が合う度に一発ずつ放って行く。水壁が直撃弾を弾き、そんな水壁をすり抜けるように捻り込まれた一発を体を逸らして回避。一瞬でボクの体は体育館の天井まで駆け上がり、挟まっていたバスケットボールを蹴り落とした。


「チッ!速いな。あんなのどうやって倒せばいいんだよ!」


ラファエルさんはバスケットボールをセツナさんへ蹴り出し、セツナさんも片手でキャッチして1バウンドでラファエルさんへ返す。その間に5発の応酬が挟まって、間に滑り込んだボクがボールを奪っちゃう。


「バスケはやった事ありますか?」


「知らないから!バカな質問すんな!」


「ん。(やった事無い。)」


ボクもやった事無いからルールは知らないよ!蹴って1バウンド、鋭い内角でセツナさんへパス!同じく蹴り返して戻って来たボールをパシッと抱える。ボクに銃口を向けるラファエルさんの真ん前で、ポンと宙返り。銃口がボクを追うけど、投げたボールが銃に直撃して斜線を逸らした。


数発のスピードスターの攻撃を咄嗟に避けるけど、ラファエルさんを挟んで動くセツナさんにパスが渡っていた。ラファエルさんを挟んでボクとセツナさんでパスの応酬。


「ちょっ!やめろ!ふざけるな!バカ!」


「あははっ!楽しいですよ!」


「ん。(こういうのも良い。)」


エアキャットを激しく駆動させて間を抜けようとするけど、ボクとセツナさんが意地でも囲う。ボクからラファエルさんにもパス!


「うわっ!」


思わず受け取り、けどボクに再び叩かれてボールを奪われるとムッとした顔。


ゴムの跳ねる音、ダムダムダムDAMDAMDAM───


目前のドリブルが誘い、ラファエルさんの伸びた手がボールへ迫り、滑走しながら背中でボールを守る。ガッツリ肉薄した状態なせいで銃を構えられず、ジタバタしながらボールを狙う。


ボクの前へ飛び出したセツナさんが、目線で合図を。パスが渡り、クルリと急にラファエルさんへ向き直った。退かそうと銃で殴り掛かられ、スピードスターで受け流す。チャンバラのように激しく10度殴り合っても全部受け流した。最後の一撃、受け流す直前にスピードスターで銃を撃ち抜く。


「あっ!?」


あえなく銃を取り落としてしまった。同時にセツナさんがボールを高く掲げて飛び出し‥‥


ラファエルさんの脳天にダンクシュート!!


って、それはなんか違うって!声も出せず、ふらつき‥‥ラファエルさんはバリア装甲を破損して倒れ込んでしまった。エアキャットの勢いのまま転がっていって、壁際で止まる。破裂したボールがペシャリと床に捨てられた。


セツナさんがボクへ銃口を向け、飛び付いたボクに抱き付かれて急に心音が跳ねる。一度収納にしまったスピードスターが、S.S.Sから銃口を覗かせてセツナさんの銃を撃ち弾いた!


手をヒラヒラさせたセツナさんは降参の意を示し、バリア装甲が青く変わったのだった。

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