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192、桜鬼は黒外套を纏う、市井を熱狂させる魔法少女の戦いはこれからだ!

家族の再会を噛み締め、空腹に気が付いたヒミコさんとグミさんがプライベートフォレストに戻って来た。そこで顔を合わせたモモコさんに驚いた声を上げてしまう。


「かしこまらなくて良いよ。名前を聞かなくなって久しいが、まさかラフィと縁あって復帰するとはね。とことん運に恵まれた開拓者だよ。」


「悪運だけは昔っからさ。えー、モモコ様?シブサワグループの次期代表様がどうしてここに。」


そんな会話にボクも、知り合いなの?と首を傾げて歩み寄る。モモコさんの手がボクの腰を軽く抱き寄せた。


「僕が一方的に知っているだけだよ。タマシティにも“鬼”の名を冠する開拓者が昔居たね。」


エステルさんだっけ。昔そんな名前で呼ばれていたって聞いた。


「ヤマノテシティにもいるのさ。桜鬼のヒミコって恐れられた開拓者がね。」


「鬼の名がモモコ様の耳にも入っているとは光栄だね。そう呼ばれるとアガるってもんだ。」


桜鬼‥確かに綺麗な長髪を垂らしている。首だけの時は持ち運びの事を考えて短く纏めていたけど、解けばふわっと腰まで艶の良い桜色が垂らされた。


「結構稼いでいた筈なのに、どうしてこんな事に?」


モモコさんの好奇心に少し口を重くするけど、流石に答えずにいられないと割り切って態度に出さず吐き出した。


「アイ‥グミの種馬は借金作りの天才でね。“若い頃の過ち”がグミを売り払おうなんてヤバい組織と結託したんだ。桜鬼の娘って情報に価値を感じたんだろうさ。で、そいつらと殺し合ってこのザマさ。結局私は生き残ったし、アイツらは死んだ。」


そんな話に場の一同は興味があったみたいで、つい声を潜めて聞き入っていた。語り終えた後ヒミコさんは気恥ずかしそうに、丁度近くにあったビールの瓶をあおった。


「もうアラフォーというのに、美貌も活力も健在って感じだね。」


「シブサワの次期トップにお世辞を言われちゃったよ。アンチエイジングってのも伊達じゃないんだねぇ。」


アラフォー?!40歳超えてるの?!見た目は20代って言われても違和感無いのに。高身長、大柄な体付きはエネルギッシュな若さを感じさせた。そう言えば治療の際にR.A.F.I.S.Sでそんな情報を見たっけ。その時はそれどころじゃ無かったからスルーしてたけど、今になって驚きが追いついて来た。


グミさんはお父さんの事を知らなかったみたいで、複雑そうな顔をしている。知らないうちに肉親が殺し合いをしてたのを知ったらね。でも、それはグミさんを守る為で。人身売買組織に売られかけたグミさんが今こうしていられるのも、お母さんの死闘のお陰だった。


人身売買組織との激しい戦いの様子を身振り手振りで語り、タマさんも楽しげに聞き入っていた。強者同士通じるものがあるのかな?気が合いそうだった。


「そこでだ。これから組合に長期休業復帰手続きをとるにしろ、桜鬼が健在だって事を知らせられる良い場所がある。」


モモコさんの提案に、ヒミコさんは驚いた顔をした。


「ラフィが折角助けたんだ。僕もほんの少し手伝っても良いだろう?ラフィが来たお陰でヤマノテシティの勢力図は大きく変わっていっている。そこにキミの居場所を勝ち取るチャンスをあげようか。」





大量のお猿の兵隊さんがズラリと並んで、タカダタウンの駅前通りを行く。集まった観客達はスマイルを起動して誰もがカメラを向けていた。黒外套に身を包んだ悪の下っ端達が近づき過ぎないよう誘導して、ショーがつつがなく進んで行く。


お猿の兵隊さんを率いるのはシュラウドさんと‥


黒外套を纏う大柄な女性。


「桜鬼と一緒に仕事出来るなんて‥面白い事もあるものですねぇ。」


横目に見るシュラウドさんに、フードの下でニッと笑って応えた。レンタルルームの一室で事前に待機していたボク達は、そんな様子を見下ろしていた。


ヒミコさんが大きな声を上げた。豪快で、覇気のある女傑の声。


「良いかい?!お猿の兵隊さんよ!今回こそヤマノテシティを征服するよ!!手始めにタカダタウンの全てのバナナを強奪して困らせてやろうじゃないか!!」


毎度思うけど脚本家のバナナに対する執着心は何だろう?幾ら子供向けって言ってもこんな内容で大丈夫なのかな?子供をバカにしてるって思われそう。


ラズベリーさん達と目配せを。最後にグミさんとしっかり目を合わせた。


「困ったママを止めないとね。」


冗談混じりな声にクスリと笑い合い、ボク達は勢い良く飛び出した!


「させないよ!!」


晴天の空の下、太陽を背に魔法少女達がビルの谷間から姿を現す。


ラズベリーさんのマジカルライフルが特殊弾頭を放った。ヒーローショーを盛り上げるトイ・ウェポンの真骨頂。ギャラクシー・トイズの技術力の結晶は複雑な演算陣を宙に投影し、放たれた桃色ビームがお猿さん達に着弾した。


途端に大爆発!!


咲き乱れた桃色の花畑に埋もれてお猿さん達は動かなくなってしまう。


「アッハッッハッハ!!来たか!!魔法少女ッ!!」


ヒミコさんは黒外套を脱ぎ捨て、カジュアルな格好を晒す。普段着さながらの格好に、携えられたトイ・ウェポンは鬼の棍棒。銃器は無く、近接一本のストロングスタイル。


飛び掛かったグミさんの拳を軽々受け止め、そのまま激しく打ち合う。トイ・ウェポンとは言え振られた棍棒は大気を薙ぎ、グミさんも軌道を見切って余裕の表情で身を躱した。


シュラウドさんに相対するラズベリーさんの銃撃が数発。身軽な動きでステップを踏んで迫る黒外套へ、ブラックカラントさんの相転移で入れ替わったグミさんが殴り掛かった。


グミさんの手にはついでに手元に転移させられた小型の爆弾が。構えられた銃剣の銃口へ、真っ直ぐ投擲された爆弾が入り込んだ!


途端に大きなカラフルな爆煙が爆ぜ上がり、光り輝く舞台を背景に大きな影と小さな流星が横切った。


入れ替わってヒミコさんと格闘戦をするのはボク。


『もし、だよ?今ヤマノテシティを騒がせるラフィと互角の勝負が出来たら大きな話題になるだろう。復帰早々大暴れとね。ラフィは今やヤマノテの誰もが注目するスターさ。その人気にあやかって来なよ。』


モモコさんのお誘いは桜鬼を唆らせた。ボクが強いって知って、見る目が変わったって言うか。うう、獲物を見る目で見られるのは落ち着かない。でも見た目で侮ってくる事はなかった。


ヒーローショーだけどヒミコさんは本気で掛かってきた。ボクもR.A.F.I.S.Sを本格展開して迎え撃つ。振り下ろされた棍棒をその場でクルリと回転して躱し、地面を叩き壊すと同時に両足で踏み付けて上に乗る。そのままブレードランナーで駆け上がって蹴りを1発!


だけど即座に棍棒を手放す決断をしたヒミコさんの片手がボクの足を掴んだ。蹴りの勢いを殺さず、そのまま地面に叩きつけようとボクを振り下ろしてきた!


一点集中させたバリア装甲は透明な傾斜を作って、真っ直ぐ地面に落とされる頭をするりと滑らせる。そのまま更にブレードランナーを駆動して勢いをもっと増す。ヒミコさんの腕を掴んだまま。股下を抜けるよう引っ張った。


「おわっ?!」


流石に予想してなかったみたいで、変な体勢で転びそうになった所を背中に二丁拳銃を突き付けた。ボクのトイ・ウェポン、スピードスターはキラキラ輝く魔法弾を背中に6発撃ち込み、視界外に逃れるよう周囲を回って何度も撃ち込む。


途端に薙がれた棍棒がボクを遠ざけた。


「やるねぇ!小さいのに随分強いじゃないかい!」


「ヒミコさんも強いですよ!」


魔法弾を普通に撃っても全部棍棒で叩き落とされちゃう。本来使っている武器より、鬼の棍棒は軽過ぎて扱いずらいって言ってたけど。棍棒をナイフにように振り回す姿は正に鬼。


ボクが突っ込む前に光学迷彩を纏ったイルシオンが襲いかかる。並のレーダーにも映らない不可視の帯に対し、ヒミコさんはその場から大きく飛び退いて身躱した。

スピードスターを連射しながらドンドン肉薄、振るわれた棍棒を頭を逸らして避けた。立て続けに振り回される棍棒は空を切り、至近距離なのに攻撃が当たらない。


横薙ぎの一撃をしゃがんで回避、スピードスターを棍棒に叩き込む。

下から掬い上げる一撃を軽くジャンプして回避。宙で体を捻ってスレスレの所で掠らずスピードスターが再び棍棒を狙った。

棍棒の柄で顔を狙えば首を傾げて宙を切る。数秒で5度、全部当たらず。

振り下ろした棍棒が、力を入れる直前にスピードスターで根本を撃ち抜かれ大きく大勢を崩してしまった。


振る度にスピードスターで、棍棒の制御に不要な力を加えられて消耗させられる。意識以上に無駄に大きく振りかぶらされ、その積み重ねが段々と大きな隙に繋がっていく。


最後の一撃で振り上げた棍棒を手放し掛け、思わず仰け反ってしまったのだ。


「あっ?!」


驚いた声が上がった直後にスピードスターの斉射が無防備な体に直撃。ついでに飛び蹴りで突っ込んだボクの蹴りが棍棒を手放させ、頭にしがみついてテイクダウンを‥


ヒミコさんは駆動魔具を噴射し、かなり無理な体勢で強引に距離を取った。途中で転んで引き摺られるも、最後には立膝で姿勢を安定させる。棍棒を手放し無手ながらも、トドメを免れた。


ふとR.A.F.I.S.Sに隣の戦場の様子が流れて来た。


銃剣を振り回すシュラウドさんが、明らかに至近距離で大暴れするグミさんに押されていた。


勿論ラズベリーさんとブラックカラントさんの援護ありきだけど、それでも余裕が全く無い。グミさんは今回の件でなにか吹っ切れたのか、格段に動きが良くなっていた。


魔法少女は困難を乗り越え、そして大きく成長していく。


「吹っ飛べ!!」


グミさんの拳がついにシュラウドさんの腹部に直撃、一瞬意識レベルを大きく低下させながら吹き飛ばしてしまう。丁度立膝で息を整えるヒミコさんの傍に転がって来た。


「あっはっは‥まさか復帰早々こんな強敵に見えるとはね。ラフィ、欲しけりゃ娘はやるよ。小さいが立派な男だ。」


えっ?!急に何の話?!


驚くボクと、顔を赤くして騒ぐグミさん。ポカンとするラズベリーさんに、茶化したように笑うブラックカラントさん。四者四様な反応を前に、伸びるシュラウドさんを連れてヒミコさんは闇の中へと消えてしまった。


桜鬼の復帰戦に市井(しせい)は揺れ、長い間今回のヒーローショーの話題が各所で騒がれたのだった。そんな中、グミさんとボクの熱愛疑惑なんてのも上がったけど‥


「ラフィが欲しいんならアタシを倒して行きなさいよガキンチョめ。」


「あんたは関係無いでしょ!てか誤解だから!」


「ラフィの何が不満なのよ!」


「あー!面倒臭いわね!」


会って早々変な喧嘩に巻き込まれ、仲裁するのが大変だった。

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