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148、幻の楼閣は金舞う大人の遊園地

夜のエビスタウンはふんわり綺麗な宝石箱。ギラギラネオン輝く訳でもなく、ARの溢れ桜が夜道を優しく照らす。舞い散る花びらは薄っすら光り、木々の間を鳥の影が通り過ぎていった。


そんな様子を魔具路を駆けながら3人で見下ろす。面白いのは桜の木々の上、通りの丁度真上をミルキーロードが流れていた事だった。桜の間を流れる白い清流に、花筏が吹き流れていく。


ARが織りなす夜景の芸術を見下ろしながら駆けるだけでもとっても楽しい。何処からか和を思わせるBGMまで吹いてきた。


「この先だよ!ほら、お姉さんについて来て!」


ヤミヨさんと一緒に大きなビルの壁面へ飛び移った。魔具路に整備された壁面は、砂利道のARで装飾されていて、幾つもの鳥居が並び立って頂上へと向かう開拓者をで迎える。両脇の灯籠が揺らめき、高速で駆ける景色の中


「welcome to SEIRYU」


の文字を揺らいだ灯籠が形作った。そして頂上へ着地する。


解放されたビルの屋上は大人のテーマパーク。和とサイバーテックが調和した巨大楼閣があった。


「驚いたでしょ!ここ、外からじゃ建物全体が迷彩バリア装甲に覆われてて見えないんだよね。やっぱりエビスタウンの夜といえば青龍街でしょ。」


「凄いです!綺麗で、おっきい!ええと、どういう場所ですか?」


「賭けたり、お色遊びしたり、良いお酒を嗜んだり、開拓者同士の拳闘場もあるね。成功した開拓者、刺激が欲しい上流階級の連中、企業の上役同士の密会場。そういう客層が集まる社交場って感じ?」


お、大人の世界って感じがする。いいのかな?子供のボクが入っていいの?


「年齢制限ないから大丈夫だって!ほら、行くよ!私がラフィを紹介してあげる。」


楼閣の入り口はおっきなホール。幾つも並ぶ受付にハッキリと紹介制な事が書かれていた。一見さんお断りってやつかな?初めて見た!


「ヤミヨさんで御座いますね。」


「はいはーい、ラフィくんとメイドロボのブランを紹介したいんだけど。ラフィは分かるでしょ?今巷で有名なあの子。」


「承りました。ラフィ様、送信されたメッセに情報の入力をお願い致します。」


受付はトントン拍子。ホールを抜けた先はまた広い空間が!楼閣の中の巨大空間に幾つもの塔みたいな大きな建物が所狭しと並んでいた。


「じゃあ早速!」


ヤミヨさんに引かれて入った先は赤賭場(せきとば)の塔。丁半みたいな簡単なのから、スロットやルーレットみたいなものまである何でもカジノだった。



スロット‥


「あっ!ちょっと!それはダメだって!」

「きゃあっ!揃って下さい!」


ルーレット‥!


「そこに止まって!あああっ!!!ファッキンッ!!」

「当機の残高に割合ダメージが。」


AR競馬‥!!


「ぎゃーっ!!!」

「ぴぇぇぇぇ!!!」



火傷を負ってしまった。うう、お金が。楽しかったけど‥!


「こうなったら丁半やるよ!これで逆転じゃい!」


「おーっ!」


ヤミヨさんに引かれていった先、転移ホールから畳敷きの階層へひとっ飛び。和服のおじさん達がわいのわいのと歓声を上げていた。


「やります!」


向かった所は中でも奥の方。怪しい暖簾を潜った壁越しの帷の中。


「高レートに3名様ご案内〜。」


既に大勢で賑わう丁半博打の輪の中へ、ボク達もそっと端に座った。


大金が姿を変えたコマが舞い、歓喜と叫喚が場を熱くする。そんな中、ボクは。


(あれ?ツボ振りさんもしかしてイカサマしてる?特定のお客様を勝たせる為かな?ツボの中のサイコロを遠隔操作してる。)


R.A.F.I.S.S越しに伝わってくる。ここはお金を持て余した人が来る場所だっけ。気持ち良く勝つ為にそういう裏メニューがあるのかも。そしてそれを知らずに来た一攫千金を夢見るヒトは素寒貧にされてしまうとか。


賭けがイカサマなら、R.A.F.I.S.Sで覗き見てもいいよね。ちょっと思念を読み取ったりするくらいなら本格起動させなくても、今の成長度合いなら簡単。


連戦連勝、とんとん拍子にコマが積み上がる。そんな様子にヤミヨさんが目を丸くし、自然と注目を集めた。適度に負けた方がいいよね?


勝ったり、負けたり。だけど通算では完全に黒字。ここで使った分のお金は回収出来たしこのくらいでいいかな?あんまりやり過ぎるのも怖いし。


ズルしてるお客さんの一人にウインクを送り、熱気のせいでちょっと汗をかきながらもそっと場を離れた。ヤミヨさんも結局勝ったみたいでホクホク顔をしていた。ブランさんは遠慮せずに連戦連勝。多額の黒字を出していた。ブランさんもR.A.F.I.S.S使えるもんね。


「ラフィくん凄いね!ブランもだけど何したの?」


「えっと。ナイショ、です。」


「ふーん。あざとい仕草するなぁ。」


そう言われても。袖で口元を隠したまま、グイグイとヤミヨさんに背中を押されたのだった。


「あっ!もしやラフィさんで御座いませんか?是非、お話が!」


そんなボク達に声を掛け、手揉みする髭の男。


『ファイトッ!!』


試合開始のコールが掛かった!顔をモザイクで隠したボクの前に立つのは、強化外装でフル武装した屈強な男。


青龍拳闘試合。青龍街で交わされる開拓者、傭兵問わず自由参加の肉弾戦。勝者を賭け、流れる血潮に血湧き肉踊り本能を燃え上がらせる。事故死もあるって聞いてちょっと躊躇したけど‥開拓者なんだしどんどん目立たないと!


あれ?でもブランさんに言われて顔を隠しちゃったし意味ないかな?強化外装もモモコさんが良く着てたチャイナドレス風にしてるし。モモコさんに無断で合法かちょっと曖昧な試合に出るのは怖いし。と、試合に出てから考えていた。


新鮮な体験の連続でつい浮かれていたんだ。


銃は無し、駆動魔具、近接武器問わず格闘なら何でもOK!観客達が見下ろす市街地セットのリング場でボクは駆け出した!


ラビットT-60A5は身バレしそうだし、ブレードランナーで一直線。


対戦相手のリングネーム、オーガさんは両手のナックルで迎撃の構えをとった。ボクはあくまで真っ直ぐ突っ込み、待ってましたと繰り出された拳とすれ違う。


オーガさんはステップを刻むよう駆動魔具で後退、ボクも同じ速度で追従し激しいボクシングパンチの中をぴょこぴょこ跳ねた。拳が10度髪にも触れずに空振った時、オーガさんは覆面の下で目を大きく見開いていた。


そして再び振り上げられた拳を前に、ボクも額に全身のバリア装甲を一極集中!拳を正面から迎撃した。


折れる音。潰れる音。弾き飛ばされて土煙にオーガさんが転がっていく音。


不用意に放った拳は分厚いアダマンタイト板を殴りつけたようなもの。それが強化外装のクラスB規格の出力でカウンターとして叩き付けられたんだ。肩から腕が外れてナックルごと拳が四散した。


「うわぁっ?!あ、あぐぐ‥!!」


何とか起き上がるも、ボクに見下ろされお尻を擦って後退る。勝敗は決した。


「勝者!!フィー!!ベテラン闘士を下し、まさかの少年が勝利だー!!あまりに決着が早い!!」


勢いで飛び込んじゃったけど、帰っていいよね?そそそ、と動くボクの前。ヤミヨさんがオーガさんとすれ違って入場して来た。


「よっ!もう一試合やってかない?勝ったら良い事してあげるからさ!」


「あの?!ヤミヨさんもやるんですか?!」


「私は前々からここで闘士やってるよ?ショーに出た後もね。体動かすの好きなんだ。」


入場ゲートの奥からブランさんが、拡大したスマイルの共有画面を見せて来た。タマさんとの合流時間まであまりないけど‥!でも、逃げるのはなんだか。


「直ぐに終わらせますから!」


「おっ?言うね。じゃあ早速!」


「勝負です!!」


もしかしたらボクと戦いたいからここに招待したのかもしれない。だったら期待に応えたい。ダンガンさんも言っていた。腕試しでボクに挑むヒトが沢山現れるかもしれないと。逃げちゃ一人前の開拓者も遠のくからね。


ブレードランナーを急加速。ヤミヨさんも同じくブレードランナー使い。青と赤の光の軌跡が勢いよく交差した!


『試合荒らしの名で悪名高い、飛び込み参加のヤミヨ闘士の登場だー!!謎の少年、フィーに凶刃が迫るッ!!』


コングが遅れて鳴った。

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