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101、防衛要塞は怪物の餌場

タマシティを守る4方の防衛要塞。これは都市運営法により設置を義務付けられたものであり、都市運営委員会はこの要塞の管理を任される。タマシティは長年怪物の姿の殆どない平和な街。そうなればこの要塞は、維持費ばかり掛かる無用の長物であった。


使用せずとも必要な年一回の防衛装置の点検を、2年に一回にしたらどうだろうか?点検費用は半額になる。なら5年に一回にすれば?そもそも使う予定も殆ど無いのなら最悪有事の気配が起こるまで放置でも良いのでは?最低限の埃を払うくらいしておけば良いだろう。


基地を確実に防衛できる練度の高い精鋭を置けば万全、しかしかかる人件費が馬鹿にならない。しかし一定の人員を常に常駐させる義務がある。ならばランクの低い開拓者や住まいすら確保出来ない貧困層に募集を掛ければ良いのでは?社会のセーフティネットになって一石二鳥。どうせ有事なんてそう起こらない。万が一の時は都市防衛隊が何とかするさ。


こうして防衛要塞の大半の人員は1ヶ月〜半年契約で定期的に募集されるようになった。報酬は最低限、その代わり1日3食寝床付き。弾薬費等自前なら訓練場を無料で貸し出され、訓練に参加しないのなら待機となる。掲示板とソシャゲへの接続数の多さが、防衛要塞の頼もしさを如実に表していた。


群がる怪物は4足の砲台を担いだ亀型を中心に、それを守る多数の小型の大群。攻城戦に特化した編成に対し、迎え撃つは自動迎撃装置の砲台達。防壁上に旧型のバトロイドのスクラップが並び、既に内部に怪物の侵入を許してしまっていた。


本来要塞防壁上から垂直に伸びた結界が飛行高度限界‥上空を縄張りにする怪物の感知距離ギリギリまで伸びている。長年メンテナンスを受けず、老朽化したバッテリーのまま放置されていたそれは最初から機能していない。壁面を駆け上がる蜘蛛に似た小型の怪物を止める事はなかった。


迎え撃った数少ない要塞駐留部隊の“本職”のヒト達は怪物の腹の中。低ランクの開拓者達は脱兎の如く要塞を放棄して逃げ出し、荒野のど真ん中で怪物の群れに追いつかれ消えていった。残ったホームレス達は一発撃てるか怪しい銃を抱いて要塞の奥へ逃げ込んでいた。


ある者はロッカーの中へ、ある者は食堂の卓の下へ、ある者は開け放たれたままの格納庫の戦車の影に。勿論セキュリティでロックが掛かったままの戦車を操縦など出来よう筈もなく、中へ逃げ込む事も不可能だった。


フジヤ大佐は部下と共に管制塔に籠ったまま救援を呼び続けていた。表にやった雑兵は数分も稼がず乗り込んできた怪物に蹂躙された。ここにも時期に怪物が現れる。誰もが天に祈る気持ちで沈黙していた。


その時だった。


『こちらシブサワPMC旅団大隊、第4旅団。管制塔、応答願います。どうぞ。』


救世主が現れた。





「五分後に出撃となります。装備の最終確認を。」


モモコさんと並んでお話しするボクへウメさんが呼びかけて来た。


「もうそんな時間か。ラフィ、気をつけてね。」


とん、とボクの肩に寄りかかったモモコさんにこくりと頷いて席を立つ。ブランさんに手を引かれウメさんの後を追った。


「ブリーフィング通り、まずは要塞の外周部にいる怪物を殲滅します。その後敷地内の怪物の掃討と並行して格納庫の確保を。ラフィさんは格納庫の確保を行う班と一緒に突入願います。」


「はいっ!」


ボクの返事にウメさんはパパッと班のメンバーを呼び寄せた。指差した先に現れた五人の兵士達。


「先に顔合わせを。ああ、気に食わないのならチェンジしても良いですよ。」


「呼び出して開口一番それかよ!」


ボクの前で交差するぼやくような声と抗議する張りのいい声。


班長さんは刈り上げた薄金髪がおしゃれな筋肉の凄い男だった。強化外装越しに分かる膨らんだ体が強者の気配を纏う。


「俺はロウってんだ。1班を任されている。」


「当機はブランと言います。ラフィ様を任されていますので、どうぞ肉盾として当機とラフィ様をお守りやがって下さい。」


ボクを後ろから抱きすくめたままふんす、とおうむ返しなブランさん。お、おう。と困惑気味に返すロウさんを後ろの部下の兵士達が笑った。


「あはは。むさ苦しいこの班の紅一点、エイミ。お姉さんが守ってあげるから頼ってくれていーよー。」


気さくに話しかけるエイミさんは親しみ持てそう。


「ケッ、ガキのお守りかよ。やんなるぜ。ゴウキだ。覚えときやがれ。」


ロウさんよりもずんぐりと大きな赤毛の大男がボクへ何かを放る。咄嗟に制止しようとするロゼさんより前に出てそれをキャッチ。小さな飴玉だった。ブドウ味の飴玉をこそっと口へ、もにゅもにゅ舐め転がしながら背を向けたままのゴウキさんにぺこりとお礼する。


「ああいうのを大阪のおばちゃんって言うっスね。」


耳打ちするメリーさん。オオサカシティにそんな文化があるのかは知らないけど、ボクもそんな慣用句を聞いた事がある。初めて見た。


「新人に事あるごとに飴ちゃん配るんだぜ?ぶっきらぼうだが良い奴さ。あ、俺はコナンって呼んでくれ。テック全般担当だ。」


強化外装の上からでも少し線の細いお兄さんが親指でゴウキさんの背中を指した。


「ヒトを指すんじゃねぇよ。」


ロウさんの拳骨に頭を抱えるも、コナンさんは慣れてる風に笑っていた。


「そーいう訳だから程々頑張ってこうぜ。ヒゲとでも呼んでくれ。なんかずっとそう呼ばれてる。」


ヒゲ‥さんは無精髭を指先でさすりながら疲れた目でボクを見下ろす。


「ちょっと臭いですよ。ラフィさんに近寄りすぎないようにお願いします。」


ロゼさんが片手でヒゲさんを制し、ため息を吐いたヒゲさんはボヤきながら距離を取った。


若いねーちゃんは苦手なんだよなぁ、なんて。


「これからお願いします!」


皆さんにそれぞれ頭を下げて回るボクに、ロウさんは感心したように笑う。


「超強ぇ子供って聞いて嫌なもん想像してたが案外礼儀がなってるじゃねぇか。いいか?部隊で動く以上連携が大事だ。一人で突っ走ったら最悪死人が出るからな?」


「はい!気を付けます!サポートは得意ですっ!」


見様見真似な敬礼っ!てポーズで元気よく返すボクにウメさんも口添えしてくれた。


「ラフィさんの人格を含め戦力として数えられると私が判断したんですよ。偶に若き天才なんていう子供開拓者が居ますけど大概性格が終わってますので‥そういうのはハナから戦力外ですよ。戦えるだけのヒトは足りていますから。」


「ラフィ様は完璧に可愛い天使ちゃんですので推し量ろうだなんて烏滸がましいのでございます。しのごの言ってないで大人しく弾除け程度にはなって下さいませ。」


「‥そこのポンコツバトロイドの論理コアは終わってるみてぇだがな。」


ブランさん!変な事言っちゃめっ!です!あとそろそろ離して下さい!恥ずかしいから!


「ブランがどうしようもないポンコツなのは私も知ってます。」


「色々あって言語野回路がぶっ壊れたポンコツバトロイドっスよ。ま、ラフィ助のサポートだけは期待していいっス。」


ブランさんの口を塞ぐボクを他所に組合警察の二人の言葉は辛辣で。うう、最近はタマさんと喧嘩する事は大分減ったけど。でも丁寧だったり口が悪かったり安定しないのは擁護出来ない。


ブランさんとわちゃわちゃしていると、手をワキワキさせながらエイミさんが迫ってくる。けど、ウメさんのジト目が割って入った。


「噂の癒し、試していーい?お姉さんが可愛がってあげるよー?」


「ダメですよ。もう任務前ですから準備済ませて下さい。事前のブリーフィング通り、ヘリポートに下ろしますので格納庫まで一直線に向かって下さい。危険な役割ですが悠長に基地全体の制圧をしている暇はありません。そもそもオオトリが稼働可能な状態かも怪しいんですから。そこら辺の判断は専門家のコナンさんにお任せしますよ。」


「うぃーっす。」


片手で適当な返事をするコナンさんにまた拳骨が。ロウさんの拳から煙でも上がってるかのように見えた。


「あーあ、やりたくねぇ‥」


隅っこで姿勢を崩すヒゲさんのボヤく声を最後に、ウメさんの指示で皆が姿勢を正す。作戦が開始されようとしていた。

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