11、少ない手荷物と大志を抱いて
戦いが終わり最後の怪我人を癒した所で、広場の方が騒がしくなっている事に気付いた。どうしたんだろう?と覗き込めば大勢のゴブリン達がお祭りの準備をしていたのだ。今からお祭りをするの?
「ラフィ、君は多くの同胞を救った。その救いの手から零れてしまった命の為にもどうか祭りに参加してくれないか。」
不思議そうなボクをゴブリンの戦士さんが誘う。どうやら今から行われる祝勝会は鎮魂も兼ねたものだと説明された。美味しい料理も出るって言うし、参加しようかな?一晩中動いてたからお腹ぺこぺこだよ。料理が出来るまで一旦車に戻ろうかとふらふらするボクは、ゴブリンの女性陣にわっと群がられて中心の壇上に連れてかれてしまった。
「まだ開拓者ではないとお聞きしますが、あなた様の活躍の話を聞いておりまする。どうぞ、寛いで行ってくだされ。」
目の前には長老さんが。白い髭を蓄えた老いたゴブリンは立派な衣装を着ていて。そんな長老さんにかしこまった態度で、今晩の事を色々話す事になった。ゴブリンのお姉さん達にべったり寄り添われて、頭がぽぅっとするような不思議な匂いに包まれてしまう。美味しいお肉料理を摘み、甘い蜜の飲み物を流し込み、ふにゃっと幸せ顔のボクの前にタマさんが現れた。
「ラフィ。どうしたのよ、もぅ。」
「あっ。車から出てすいません!これは、その。」
慌てるボクの代わりに長老さんがタマさんに説明をしてくれる。タマさんのボクを見る目が変わった感じがして、ちょっとだけ誇らしい。んふ、活躍したんだから。
ドヤっとするボクのおでこをタマさんのデコピンが弾いた。きゃっ?!
「だから車に居なさいって言ったでしょ。怪我でもしたらどうするつもりだったのよ。でも、そういうやんちゃな所は開拓者の才能があるわよ。」
怒られているんだか、褒められているんだか。反応に困るボクの頭をもふもふと撫でる。
「でも次から何か冒険する時は必ずアタシに連絡する事。ああ、そう言えばラフィはスマイルを持ってなかったわね。後で買いなさい。」
パートナーだもの、遠慮なく頼りなさいよ。
タマさんの尻尾がボクの顎を撫でれば、気持ちいい感触にふにゃってしてしまう。そんなボクの反応にゴブリンお姉さん達はタマさんをジト目で睨み、タマさんも挑発するように笑って尻尾がうねうねとボクの顔を這った。
「ま、歓待を受けれるなら受けときましょ。それはそれとしてラフィの活躍でどんくらい報酬出たのよ。」
「金貨20枚です。」
沢山金貨の入った袋をタマさんに見せれば、大きな声を出して驚いた長老さんが怒った様な口調で騒ぎ出す。タマさんも怪訝な顔をして首を傾げ、ゴブリン達を睨みつけた。
「ラフィ。アンタ、めちゃくちゃ安く買われてるわよ。こんな離れた未踏地の亜人の部落で、数十人分のアコライトの仕事してたったの金貨20枚?相場なら300枚が妥当よ。戦闘中で、襲撃の危険がある中での仕事だしね。しかも火事から何人か救ったんでしょ?危険な緊急救助依頼をこなしたんなら、その分も別に20枚は請求しなさい。」
そ、そんなに?!
「アコライトの相場について説明するわ。」
アコライトの治す怪我の等級によって大きく医療費が変わる。特に命の危険の大きい重症患者を治療した場合は一気に跳ね上がるらしい。
「失敗したら患者死なすのよ?跳ね上がった分は命の値段ね。失敗して死なせて遺族の報復を受けたってニュースも偶にあるけど、諸々のリスク込みでの金額なんだから。重傷者を大量に救ったのなら300枚でも安過ぎるわ。」
金貨1枚10万円相当。仮にアコライト10人だったら一人当たりの取り分は30枚ずつ。まずは金貨から電子マネーに両替する際の手数料、護衛の開拓者に支払う分も含めたアコライト派遣企業に納める分、所得税を引いた金額となると手元に残る金額は‥‥あれ?大金だけど、生産区で働いているヒト達の平均年収より少し少ないぐらい?命の危険が沢山なお仕事してそれだけ‥‥?
人類の文明圏の外まで出張して、怪物が跋扈する未踏地の奥まで行って患者さん達を治療して‥‥勿論ボクはそんな大金持った事ないから実感湧かないけど、普通のサラリーマンの年収と同じくらいと考えると一回の仕事分の報酬でもなんだか釣り合わないような。
「だから安すぎるって言ったのよ。ラフィ1人で総取りだから凄い金額になってるだけよ。個人でやったから1人分の報酬ね、て訳じゃ無いし。それじゃ能力のある奴程仕事蹴るようになるでしょ?参加人数じゃなくて、こなした仕事の内容で報酬額は決まるわ。加えて言うなら企業との契約次第じゃ歩合制じゃなくて固定給+危険手当なんて場所もあるらしいわよ。酷いわよね。」
せ、世知辛い‥‥!で、でも!合わせて320枚!
「申し訳ありません!戦士の方が緊急救助分の金貨を渡しただけで、アコライトとしての仕事の分の報酬がまだ渡されていませんでした!直ぐに全額用意いたします!」
契約書を介さないお仕事になったせいで、お金の事が曖昧なまま祝勝パーティーの雰囲気に流されてしまっていた。
「いい?後で払うつもりだったは絶対ナシよ。後でなんて信用しちゃダメ。仕事が終わったら直ぐに報酬を出す!コレが鉄則。守れなかった時点で報酬の支払いの意思無しと見ても問題ないわ。」
タマさんも未踏地でのお仕事で色々苦労したらしい。ゴブリン達をジロリと睨んで威嚇していた。
「未踏地で報酬踏み倒しにあった場合は組合警察に通報しなさい。傭兵だったら腕ずくで払わせるんでしょうけど、こっちは組合法を守んなきゃいけないから。あ、襲われた場合は容赦なく殺っちゃっていいわ。正当防衛よ。」
タマさんがすっごい活躍したって聞いた。その戦いぶりを知るゴブリンの戦士達は、殺気立った気配に怯えの表情を見せていた。
そして一旦料理が避けられた卓上に、ずしっと重い金貨が綺麗に10枚ずつ重ねられて並べられる。す、凄い。タマさん、これを換金したら幾らになるんですか?
「支払い不備の慰謝料で増額3枚合わせて、3230万円相当ね。一回の仕事の報酬としてはなかなかいいんじゃないかしら。」
そそそ、そんなに?!これだけあれば何が出来るんだろう?ええと、孤児院の設備を良くしたり‥‥
「ラフィ、落ち着いて。これはアンタが文字通り命懸けで稼いだ金よ。例えば1千万やるから火事で崩落寸前の家に飛び込んで救助してこいって言われたらやる?いつ流れ弾で建物ごと粉砕されるかもしれない場所で、逃げずに医療活動に集中しろって言われたらやる?」
うっ。改めてそう言われると無我夢中だったとはいえ、随分危険な事をしてたんだな。
「アンタはそれだけの仕事をしたの。アタシ達が戦っている内にこの部落の戦士が大勢死んで、結局戦いに勝ってもその後部落を維持できずに崩壊って可能性をアンタが変えたのよ。その金額でも正直安いくらいだけど、それ以上を請求してもどの道部落の復興に色々掛かるからね。そんくらいで手打ちにして、後々同族のゴブリンの部落と関わる時に便宜を図って貰った方が得よ。」
タマさんがそう言えば、長老さんも大きく頷く。
「我々の部落の事を考えて頂いて恐縮です。勿論、ラフィ様の勇姿を同族だけで無く、声の届く先まで広めさせて頂きまする。かの奇跡の光が、羅針盤の指す道を拓いて行くよう協力させて頂く。」
タマさんはボクの頬を突いて笑った。
「孤児院につぎ込むのもいいけど、開拓者やってくなら装備も必要よ。消耗品の補充も大事だしね。そのお金でアンタ用のコレ、買ってあげよっか。」
タマさんは片足に装着した青く光るローラースケートを見せてきた。
「ブレードランナーって言うんだけど、タダで色々改造してあげる。ダンジョン内での移動用にもあった方がいいわ。」
「お願いしますっ!あと!買って貰った強化外装の代金とかも払います!」
高そうだけど、今のボクなら払えるはず!出世払いで払おうって思ってたけどこんなに直ぐに払えるなんて。
「いいの?ラフィが払う事考えて無かったからかなり高いわよ?」
強化外装‥‥シブサワ重工傘下企業、アオヤマ社製。オーダーメイド強化外装・出力規格クラスCセット。
AIデザイン自動生成サービスオプション・袖下収納拡張オプション・破損自動修復加工オプション・安心サービス長期大破交換保証・特急製作転移配達オプション
お値段 : 3588万円
「ヒュッ‥‥!!」
一瞬過呼吸になって目の前が真っ暗になった気分でヨタヨタとタマさんに縋り付いてしまう。
「あの‥‥!し、支払いをもう少し‥‥!すいません!!」
足りない?!高い?!高い?!高い?!強化外装ってこんなに高いの?!あわわわわ?!ぽん、て買ってくれたからもっと安いものだと思ったのにぃ!
「いーの。無理して払わなくて。この強化外装は言っとくけど高級品だから。駆け出しの着るやつは1着100万前後のものが一般的ね。だけどアタシが誘ったんだし、強化外装の性能が生死を分ける以上安物使わせる訳ないでしょ?」
でもこんなの‥‥!うう、思い出した。多くのヒトが開拓者を将来の夢として目指すけどなれるのは一握り。理由は単純に初期投資に凄いお金が掛かるから。その上お仕事を安定して見つけられないと初期投資分も簡単には稼げないし‥‥
「でもランク20過ぎれば稼ぎもかなりの額になるわよ?アンタだって今1日で3000万くらい稼いだでしょ?命懸けだし競争率もエグいし、裏社会の変なのに絡まれるしで大変だけどその分実力があれば稼げるから。」
開拓者というとお金をじゃぶじゃぶ稼いで豪遊してるって話は出回ってるけど。よく考えたらそれが出来るのは沢山修羅場を乗り越えて実力でのし上がった一部だけ。
「未踏地の奥、深未踏地を探索するにはめっちゃ金の掛かる装備が必要なのよ。その分を稼ぐ為にこうして依頼をこなしてお金を貯めるの。まぁ、アタシは大体パンタシアにつぎ込んじゃうけど。」
開拓者は茨の道だ。でも一歩ずつ進まないと。ボクだって開拓者やりたいもん!タマさんが助けてくれるなら期待に応えなきゃ!
「ま、ブレードランナー代は頂くわよ?なんでも貰ってばっかじゃ疲れるだろうし。」
ムラマサ工房製、半光学エアスケート型駆動魔具。ブレードランナーSサイズ。
タマさんが改造する為、保証の類は使えなくなるからオプション類は無し。
お値段 : 350万円。
これなら払える!!払います!買います!お願いします!!
あ、巻物と本の代金も払います!
開拓者組合公式依頼契約書・本型、巻物型 最大50回分対応
お値段 : 1点につき23万円。合計138万円。
払っちゃいます!
自分の稼いだお金で開拓者の装備を揃える感覚が嬉しくて。そしてタマさんとお揃いの凄い魔具が買えるんだって思うとボクは目を輝かせて飛び付いた。
支度を済ませて村を離れる前、ラララさんがボクを見送りに来る。
「ラフィ、皆の英雄。奇跡の天使。もしゴブリンの愛人が欲しいなら誰でも連れてっていいって長老言ってた。」
「そ、そういうのは。ラララさんには部落の復興の為にやる事があると思います。」
頭を下げて断ったボクはそのまま車に飛び込む。そんな様子を笑って見送るラララさんは、車が見えなくなるまで手を振っていた。
帰る途中、タマさんのプライベートルームのソファーで寛いでいた。ふわふわな座り心地が気に入って、ソファーにお尻を預けて雑誌を読んだりするのが好きなんだ。
宙に浮いたホロウインドウの隅の仮想ボタンに視線をやり、脳波でボタンをクリックすればページを捲る音と共に内容が更新される。早速通販で買ったお値段20万円の情報端末‥‥携帯端末業界で覇権を取った「ルック。」シリーズ、“スマート・インビジブル・ルック”通称“スマイル”はとっても便利。
「もう一回確認するけど金貨の換金に手数料、金貨払い報酬の場合換金時に所得税も発生するわ。値段によって変わるけどまぁまぁ持ってかれるから意識しておきなさい。」
う、あんまり考えないようにしてた話。所得税‥‥払った事はまだ無いけど、折角の報酬が目減りするのは悲しい。
タマさんも今回の報酬で何を買うか、楽しげにカタログを見ていた。
「ラフィとここを共用にするんだし、色々拡張したいのよね。前々から和み空間拡張サービスってのが気になってたのよ。」
そう言って視線で操作し、ボクと共用モードに変更すればカタログが壁の一面に投影された。どうやらこの空間内に小さな箱庭を収納する拡張サービスらしい。凄い、部屋一つをお庭みたいにしたりも出来るんだ。写真にはドアの向こうに広がるお洒落なお庭が。土の地面に芝生が生え、外用のテーブルセットで優雅にお茶を楽しめるようだ。花壇なんかも出来るのだとか。
「アタシが欲しいのはこれよ。」
タマさんが拡大した写真は、露天風呂の写真だった。満点の星空の下、湯気立つ石造りの温泉がドアの向こうに写っている。オプションで和傘の差した休憩所セットや、竹藪の中庭なんてのも追加出来る。
「お風呂をこれに差し替えようかなーって。」
すっごくいいと思います!でもメンテナンスとかって大変なんじゃ。
「そういうのは使ってない時に、部屋の内装を全部分解して修理清掃してくれるから大丈夫よ。空間拡張のマギアーツを使った新技術って聞いて気になってたのよ。お値段も結構するけど貯金もあるし、いけるわ。」
ボクは怖くてお値段の所を見ていない。億近い金額が書いてあるような。カタログというのはお値段を見ずに色々想像して楽しむ物って思ってたから。でも買えちゃうんだ。タマさんはどれくらい持ってるんだろう?すっごいお金持ちなのかな?
「開拓者やってりゃあぶく銭にありつける機会がちょくちょくあんのよ。こういうカタログも、そういう開拓者狙いのもんなの。命懸けで稼いだんだから、いい生活を送る為に出費を惜しまない方がいいわよ?」
そう言ってボクを誘惑する様にカタログを見せてくる。既にタマさんにブレードランナーの代金を渡し、それでも大分金貨が残っている。何か買っちゃおうかな。ボクは熱心にカタログを眺めていたのだった。
孤児院に帰り早速金貨の袋を持ってサラ先生に相談する事にした。何か新しい設備とかどうかな?
「そんなものは受け取れません。ラフィが命を張って稼いだお金でしょう。」
呆れた顔であっさりと断られてしまう。驚いてわたわたと説得すべく頭を回していると、サラ先生はこほん、と咳を一つ。
「そうですね。それだけのお金があるのなら独り立ち出来るでしょう。丁度タマさんから貴方を引き取ると連絡を受けているのです。孤児院は身寄りのない子供のための場所です。ここはラフィの故郷ですが、開拓者を目指すのならここに居続ける事はできません。」
ふぇぇ?!そ、そんな!お金を寄付しようとしたら追い出されちゃうなんて!
ふにゃあっと涙目になるボクの頭をサラ先生が優しく撫でた。
「もし、ラフィが開拓者として大成したのなら。その時はこの孤児院の運営に出資して下さっても構いませんよ。間違っても孤児院が孤児からお金を巻き上げる事は出来ないのです。勿論、開拓者を辞めてまた孤児に戻ってしまったのなら。その時はまた受け入れましょう。厳しいかもしれませんが、明日までに準備をしなさい。」
ぴゃーっ!と泣くボクは部屋を飛び出し、気付けば孤児院の屋根の上に座って景色を眺めていた。丁度眼下では孤児のみんなが広場で遊び、楽しげな声を上げている。一緒に遊んだ友達の楽しげな顔を見るのが、何だかとても辛かった。
ふと、屋根の上にいるボクにあっくんが気付いた。大きく手を振られ、ボクも袖下の巻物を伸ばしてヒラヒラと手を振る。すると驚いたように声を上げ、みんなからも注目された。
‥‥寂しいけど、いつかはやらなきゃいけない事だったんだ。目の前だけ見て知らないフリをしていた。普通に考えたら3000万も稼ぐ子供が孤児院に居られる訳がないのに。タマさんが身寄りを受け入れてくれるんだし。
だったら最後にお別れの挨拶をしなきゃ。
ペンを取り出し、巻物にサラサラと書き込む。
“泡”
簡単な演算を展開し、大きく巻物を広げて振り回した。巻物から泡沫を発生させるマギアーツが発動し、ふわりと泡が宙を舞い登っていく。陽の光を浴びて虹色に光る泡は宙でくっつき合い、文字を形作った。
『いままでありがとう またこんど』
皆んなの反応は見ていない。涙が溢れそうになって、そのまま屋根から飛び降りた。伸ばした巻物が窓を開き、直接二階の自分の部屋に転がり込む。
元々殆どが孤児院の物で、自分の荷物なんて僅かだった。ポケットの手作りの羅針盤を確認し、自分で作った孤児院の周りの地図を壁から外し丸めて持っていく。みんなとの集合写真をアルバムから一枚外し、それも持っていく事にした。
「ラフィ!」
部屋で準備を進めていると急に呼び止められる。振り向くボクをエステルさんが抱きしめてきた。
「いつかはって思ってたけど、急過ぎよ。まさかそんな大金を稼いじゃうなんて。」
「すみません。でも、開拓者を目指す以上仕方ない事なんです。大丈夫です、きっと凄い開拓者になって帰って来ますから。」
「ほんとにいいの?私が開拓者に復帰して身寄りを預かってもいいのよ?そうしたらこの孤児院に居られるわ。ここに私も住んでるから。」
ここに居られるって思うと少しだけ心が動くけど、でもタマさんと一緒に開拓者を目指したいって思っていた。
「エステルさんにはこの孤児院を守って欲しいんです。ええと、ゴブリン部落であんな事があったから。すっごく怖かったんです。孤児院は直ぐ裏手が未踏地だから、強いヒトに守って欲しいなって。」
ダメですか?と、エステルさんを見上げて目が合う。タマさんについて行こうって思ったのも、ここをエステルさんが守ってくれるって思ったから。もしエステルさんが開拓者に復帰したらお仕事でここを離れなきゃいけなくなるし、警備員が居なくなるのは怖いよ。
「‥‥もう。仕方ないわね。いいわ。ほら、行っておいで。でもたまにはお姉ちゃんに顔を見せなさい。あっ、対面通話もいいわね。ラフィ、アドレス交換しましょうね。」
髪飾りのような見た目のスマイルを指先でタップ。チカチカと光らせて催促してきた。
少ない荷物と大志を抱いたボクは、パパッと窓から飛び出す。そして孤児院の前に車を停めるタマさんに手を振ったのだった。
ラフィの冒険はここから始まります。
どんな軌跡を描くのでしょうか。




