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読んでも読まなくてもどっちでもいい

小説と芸術と文芸と

作者: 阿部千代

 おれの名前は阿部千代だ。この名前、覚えておいた方がいい。おそらく現時点でおれの名前を知っているやつはここ、小説家になろうの中ではごくごくごくごく一部に過ぎないと思われるが、これからじわじわ人気と知名度を獲得していくと確信している。チェックをしておけ、まずはそう言っておく。

 

 こういう大上段に構えたタイトルの文章を一度書いてみたかったのだ。だがタイトルとは裏腹に、おれは文学を研究したこともなければ、芸術に一家言持っているわけでもないただのボンクラだ。文芸という言葉には思い入れすらない。とは言ってもタイトル詐欺というわけではない。普段から結構真面目に色々と考えているのだ阿部ちゃんは。そのあたりを文章で上手く表現できればいいのだが。

 ひとつ忠告しておく。おれは悪文野郎だ。無駄な反復とか助詞の重複とか、稚拙に見える部分が多々あると思う。が、全部わざとだ。なぜならおれは悪文が好きだからだ。悪文だけが生み出せるグルーヴがあると信じている。ガレージパンクのようなものだと思ってくれ。おまえが三島由紀夫だけを信じる美文野郎だとしたら、残念ながらおれとは相性が悪いと言わざるを得ない。だがそんなやつこのサイトに出入りするかね? そんなやつにとってここは地獄だろう。

 まあそんな地獄で何年も活動しているおれなので、サービス精神は人一倍持ち合わせているつもりだ。おまえがなるべく楽しく読めるように書き殴る。なにも喧嘩を売りたいってわけじゃない。それでもおまえは馬鹿だからぷんぷん怒り出しちまうかもしれない。それは仕方のないことだ。おまえは殴り返してきたっていいし、殴られっぱなしでもいいし、逃げ出したっていい。そんなもんおまえの自由だ。好きにせい。



 まずな。小説ってなんだ。そこのおまえ。小説ってなんだ、言ってみろ。辞書をひくんじゃない馬鹿! おまえは、ひろゆきか。あんな外道に進んで成り下がるんじゃない。人間ってのはもっと気高く生きるべきなんだ。本当、最近出来損ないの計算機みたいな連中ばかりでおれは不愉快だ。あんなやつらを風上に置いてるから、風下のおれたちは鼻をつまんで生きていかなければならん。まったく不愉快だ。

 で、小説っていうのはだな、実を言うとおれにもよくわからんのだ。これは真面目な話だが、小説というものは掘れば掘るほどなんでもありのむちゃくちゃだということがよくわかってくる。もう真面目に取り組めば取り組むほど正気が失われてゆくやばいブツだってことがよおくわかってくる。それはジャンル小説だって同じことだぜ。テンプレどうこうなんてレベルのもんは小説以前の話だ。ロマンスだロマンス。小説じゃあなくて。言っている意味、わかりますか。ついてこれていますか、どうぞ。

 よく起承転結とか序破急を意識せよ、なんてことをいんちき野郎が小説講座とかなんとか銘打って言っているけどな、覚えておけ、そんなやつは小説をまともに読んだことがないくせに小説を知った気になっている馬鹿野郎だと言うことを。起承転結とか戦闘描写とか設定とかキャラクターとかそういう簡単な話じゃないんだって。これ本当だよ。

 そもそも世界最古の小説だと言われているドン・キホーテからしてもうむちゃくちゃなんだから。凄いんだから。おまえらが好きな感じのお話なんて、すでにドン・キホーテでけちょんけちょんに馬鹿にされてるからね。17世紀のスペイン人にだよ? びっくりするよ。

 おまえらドン・キホーテ読んだことないだろう。だからダメなんだおまえらは。エッチな妄想と金勘定ばかりしているからそういうことになる。どうせおまえらおれと同世代くらいなんだろう? 少しは自分を恥ずかしいと思えよ。思ったら今すぐ岩波文庫のドン・キホーテ全6巻を買え。6000円ちょいで買えるはずだ。面白いよ。もう凄いんだから。一応聞いておくが、字くらいは読めるよな?


 おれがむちゃくちゃなことを言っていると思うか? そんなことはないんだ。これは当たり前の話なんだ。おれはな、ここ小説家になろうのお手軽で軽薄な風潮にまじで飽き飽きしてるんだ。本気でむかついてるんだよ。小説家になろうと思うやつがドン・キホーテすら読んでいないってどんな冗談だよ? それってまじで悪夢なんだよ。

 漫画家を目指すやつが手塚治虫を読んだことがないってありえるか? ロックやるやつはせめてエルヴィスくらいは聴いておくだろう? ヒップホップ志すやつはせめてシュガーヒル・ギャングくらいはチェックしておくだろう? これは原理主義でも教条主義でもない。基本的なことなんだ。イロハのイなんだっていう常識が、良識が、この国から急速に失われつつあることがおれには恐ろしいよ。これって本当、シリアスな話なんだぜ?


 まあこんなこと訴えたってどうせ鼻くそでもぶつけられるのが関の山だってことは百も承知でおれはこの文章を書いている。なぜか? おれはこの小説家になろうってサイトを変えたいんだよ。変わらないのは知ってる。知っている、が。抗ったっていいだろう。ちょっとくらい暴れさせてくれよ。

 はっきり言ってこのサイトのコンセプトはとても素晴らしいものだと思っている。初めて見つけた時は小躍りしたね。だって小説家になんてみんながなれるものではないし、小説を書いたって誰も読んでくれないだろう?

 でもこのサイトでは好きに発表できる場がある。誰かがおれの書いたものを読んでくれるかもしれないんだ。それって最高に素晴らしいことだよな。それにプロの小説家の書く小説が良いものだなんていう決まりはないんだ。もしかしたら、今現在のこの国で一番優れている小説は案外こういうところにあるんじゃないか? っておれはわくわくしたんだよ。アマチュアリズムに溢れた自由で奔放な小説が読めるんだろうな、って思ってたんだよ、おれは! なんて夢のある素敵なサイトなんだろうって感激したんだからな! まじでよ! で、サイトに入ってみたらよ。

 What the fuck is this!?

 嘘だろうって。なんだこりゃって。ここ、小説家になろうだよな? 小説が読めるようになろうじゃねえよなって。当時のおれの衝撃をおまえらにもわかりやすいように説明すると、わーい写真でしか見たことのないお姉様に今日初めて会えるーってはしゃいでお姉様を迎えにいった素朴で純粋な女の子がいるとするだろ。そうなった事情とか細かい設定はおまえらが各々考えてくれていいよ。好きだろおまえらそういうの。大切なのは女の子が本当にこの日を楽しみにしてた、うきうきわくわくの有頂天にあったってことだよ。で、女の子が角を曲ったら、ゴブリンの群れにさんざん蹂躙された挙げ句のお姉様の惨殺死体がごろりんと転がってたって感じかな。わかるか、この絶望。おまえらならわかってくれるよな。かわいそうだろう、女の子。悲惨な話だろう?

 そんなことが、かつておれの身にも降りかかったってことだ。


 なんでこんなことになっちまったんだろうな。しみじみと思うよ。

 まあ原因は、はっきりしてるんだけどな。これが仮に、マンガ投稿サイト漫画家になろうならばこんな惨状にはなってないと思うのだ。ゲーム投稿サイトゲームクリエイターになろうでも、ラーメン投稿サイトラーメン屋になろうでも、こうはなってないと思うのよ。いや、ラーメンはちょっと怪しいな。

 おれの言いたいことわかるよな。なめられてるのよ、小説って。圧倒的に。おれでも書けんじゃね? みたいな。実際おれが書き始めた動機もそんな感じだしさ。でもよ~、いつまでもそれでいいのかよ? 寝っ転がって屁ぇこいてブッ、みたいなもんばかりでいいのかよ? チートだギルドだ貴族だ勇者だって、いつまでもそんなもんではしゃいでていいのかよ? 少しは背伸びしようぜ。小説を読もうぜ。小説家になろうってサイトに出入りするならよ。入り口はラノベでもいいよ。ラノベだって立派な小説よ。そらそうよ。でも、そこで止まるなよ。掘れよ。ディグれよ。おまえだけのレア・グルーヴを見つけろよ。勘違いでもいいからよ。

 まじで、もう少しだけ。もう少しだけでいいから、志を高く持とうぜ。読む方も書く方も。端的に言って、やべえよ、おまえら。権田原組長に見えるよ。そんなに疲れてるのか? そんなに辛いのか? 人生がよ。そっか……まあ色々あるよな。

 まあそんな感じ。ご静聴ありがとう。拍手はいらねえぜ。

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