ピクニック//総評
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──ピクニック//総評
ファティマたちは無事にイーグル基地へと帰還。
「よう。どうだった?」
バーロウ大佐がファティマたちを出迎えてそう尋ねる。
「敵の精鋭部隊についての情報は手に入った。説明する」
「分かった。執務室で聞こう」
グレースの報告にバーロウ大佐がグレースたちを執務室に案内する。
「さて、敵の精鋭って奴はどんな連中だ?」
「ウィッチハント部隊って名前。空中機動部隊というよりも特殊作戦部隊みたいね。かなり高度な権限を有し、それに相応しい技術を持っている。私たちでも苦戦したぐらいだから、舐めてかかれる雑魚じゃない」
「ふうむ。お前らが苦戦するってのは不味いな」
「ええ。まともにやり合えば負ける。装備の質も向こうの方が上みたいだから」
「あーあ。また面倒なのが現れやがったな。どうしたものか」
バーロウ大佐はため息交じりにそう愚痴る。
「ともあれ、だ。仕事は成功となる。報酬だ、ファティマ」
「どうもです」
そう言ってバーロウ大佐はファティマの端末に送金。
「ガーゴイルたちが捕虜になったときに負傷したと聞いたが」
「ええ。医務室にいる。ミアが来てくれているから彼女に見てもらっている」
「なら、大丈夫だな。ガーゴイルのようなベテランを潰されるのは困る」
グレースが答えるのにバーロウ大佐が不幸中の幸いという顔をした。
「じゃあ、また仕事があればジェーンにでも連絡しておく」
「はい。では、これで失礼を」
ファティマは頭を下げてバーロウ大佐の執務室を出る。
「ああ。ファティマか。バーロウ大佐は?」
「中にいらっしゃいますよ、ウェンディゴさん」
ファティマが執務室を出て暫く歩くとバーゲスト・アサルトのウェンディゴに遭遇した。何やら報告するべきことでもあるのか急いでいる様子だ。
「分かった。ありがとな。そういやガーゴイルがあんたに用事だってよ」
「ガーゴイルさんですか?」
「そう。医務室にいる。よければ会ってやってくれ」
「了解です」
ウェンディゴにそう言われてファティマとサマエルは医務室に向かう。
「失礼します」
一言断ってからファティマが医務室に入る。
「おや。ファティマかい?」
「カーター先生。ガーゴイルさんたちはどうです?」
「命に別状はないよ。彼らは思ったよりタフだ。そうでなければ軍人などやらないのだから当然だろうが。まあ、心配はいらないよ」
「そうですか。よかったです!」
サマエルの言葉にファティマが頷いた。
「それで、彼に用事なのかな?」
「ええ。会えますか?」
「処置はもう終わっている。構わないよ」
「では、失礼します」
ミアの許可を得てファティマたちはガーゴイルのいるベッドに向かった。
「ガーゴイルさん。私に用事だと聞きましたよ」
「ファティマか」
ガーゴイルは負傷はしていても顔のフルフェイスマスクは外していない。よほど顔を見せたくないようだ。
「今回の件、礼を言う。お前とサマエルのおかげで助かった。作戦前の約束もちゃんと果たしてくれたしな」
「いえいえ。お互いやるべきことをやったまでです。私もバーゲスト・アサルトの一員ではないものの仕事を受けていましたから」
「それでもだ。助かった。ありがとうな」
ガーゴイルは真剣な声色でそう伝えた。
「ガーゴイル。調子はどう?」
「少佐。俺は大丈夫だ。ウォッチャーも大した傷じゃない。幸い尋問が始まる前に騒ぎが起きたからな。助かったよ」
「それはよかった。本当に」
グレースはガーゴイルとウォッチャーが無事なのを確認して安堵の息を吐く。
「ミアが言うには3日もあれば傷は治るそうだ。今回の作戦の成功と無事を祝って一杯やらないかとエキドナとトロルからメッセージが来ているが、少佐はどうする?」
「もちろん参加する。ファティマ、サマエル。あなたたちはどうする?」
そこでグレースがファティマたちに尋ねて来た。
「私たちは遠慮させてもらいます。部外者がいるのは落ち着かないでしょうから。私たちはあくまで傭兵。ですが、いつか機会があればお付き合いしますよ」
「そう。では、またね、ファティマ、サマエル」
「ええ、またいつか」
ファティマはグレースに断ってイーグル基地を出る。
「お姉さん。よかったの?」
「ええ。私とサマエルちゃんはふたりで食事しましょう」
サマエルがイーグル基地を出てから尋ねるのにファティマが頷く。
「けど、お姉さんはあの人たちの方がよかったんじゃないのかな……? ボクと一緒でも退屈だって思わない……?」
「思いませんよ。いいですか。グレースさんたちはバーゲスト・アサルトという家族です。けど、私たちはそこに所属していない他人です」
ファティマがそう語る。
「しかし、私とサマエルちゃんは運命共同体であり、まさに家族です。私たちはお互いを想い、お互いを助け、お互い支えて、お互いの幸福のために頑張る!」
ガッツポーズをしながらファティマはそう語った。
「だからですね。私はサマエルちゃんのことがもっと知りたいし、もっと一緒にいたんです。ダメですか?」
「そんなことないよ。凄い嬉しい。うん。とても嬉しいよ」
「よかったです。では、何か美味しいものでも食べましょう」
サマエルが笑みを浮かべて一生懸命頷くのにファティマも微笑んだ。
そして、ファティマたちは食事に向かい、フォー・ホースメン支配地域で夕食を楽しんで帰宅した。
「おっと。注文しておいた家具が届きましたね」
「あ。ベッドにタンス? それからテーブルも?」
「そうです。ここは我が家ですからね。暮らしやすいようにしないといけません」
ファティマは大きくて軍用の味気ない金属ベッドとは違う寝心地のいいベッドをふたつと衣類を入れるタンス、そして木の温かみがある木製のこぢんまりとしたダイニングテーブルを準備していた。
「いい感じですね。部屋のそのものが殺風景なせいでちょっとまだ落ち着かないですが、それでも以前より随分とよくなりました!」
「そうだね。昔は軍の基地みたいだったから」
「今もフォー・ホースメンの基地ではあるんですが」
ファティマたちは過ごしやすくなった兵舎の中でくつろぐ。
「後はソファーとかテレビがほしいところです。お金はあっても必ずしもほしい家具が売っているとは限らないのがゲヘナの残念なところです」
「昔はもっと賑やかだったんだけどね……」
「昔、ですか?」
サマエルが呟いた言葉にファティマが首を傾げる。
「い、いや。何でもないよ」
「そうですか。まあ、今日はゆっくりしましょう。何事もなく終わったのですから」
ファティマはそう言ってサマエルとともにリフォームした部屋でくつろいだ。
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