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ピクニック//作戦開始

……………………


 ──ピクニック//作戦開始



「目標はゲヘナ軍政府支配地域深部にあるエコー基地。こちらの内通者の情報ではMAGがテコ入れで導入した精鋭部隊が配備されているとされてる」


 ブリーフィングルームの拡張現実(AR)システムでエコー基地の位置が示される。


「こいつはかなりデカい基地だが、同時に深部もいいところだな。中央基地に近い」


「そう、だから面倒な仕事(ビズ)になる」


 バーゲスト・アサルトの兵士のひとりがそう告げるのにグレースが頷く。


「エコー基地を偵察するということは前々から決まっていたけど、ファティマとサマエルが来たことでちょっと楽が出来そうよ。では、説明する」


 グレースがファティマたちの方を見てそう語り始めた。


「まずこの任務は絶対の隠密(ステルス)であるということ。隠密(ステルス)がバレたらお終い。だから、偵察を行うのは少数の部隊で」


「規模的には?」


「直接エコー基地に侵入するのに2名。偵察の支援に2名。脱出のために残りというところね。脱出部隊は緊急即応部隊(QRF)も兼ねる」


 つまり直接敵地に入り込むのは4名のみだ。


「しかし、4名とは言えどうやって侵入を? ここまで深部だと銃や爆弾の類は持ち込めませんよ。トレーサードッグがいますから。だからと言って丸腰で作戦をやるにはぞっとする任務ですし」


隠密(ステルス)は匍匐前進だけしてればいいものじゃないの、ウェンディゴ。ときとして大胆になる必要があるわけ。パワード・リフト輸送機でこの付近に乗り付ける」


「マジですか? それは自殺ですよ」


「大丈夫。言ったでしょう、ファティマが来て楽になったって」


 ウェンディゴが狼狽えるのにグレースが涼しい顔をしてそう言った。


「ファティマ、サマエル。こちらの機影を捉えたレーダーの通達を妨害できる?」


「どうでしょう、サマエルちゃん?」


 ファティマがサマエルにそう尋ねる。


「できると思うけど……」


「よし。では、決まり。この方法でやる。敵だってまさかパワード・リフト輸送機で突っ込んでくるとは思わないでしょうから」


 サマエルの言葉にグレースが頷いた。


 グレースはサマエルが本当にMAGの通信を妨害できるのを知っている。それ故にこの発想に至ったのだ。さらに言えばファティマがいるならサマエルは絶対にしくじらないとも思っての上だ。


「それで少佐。人選は?」


「潜入チームは私とファティマ。サマエルは連れて行くけど戦闘要員としてはカウントしない。支援チームはガーゴイルとウォッチャー。後は脱出及び緊急即応部隊(QRF)よ。異論はない?」


 これまでパワード・リフト輸送機を操縦してきたハーピーが尋ねるとグレースはそう言ってバーゲスト・アサルトの面々を見渡す。


「少佐が決めたことなら文句は言わないよ。これまでずっと命を預けて来たんだ」


「ええ。では、これで作戦準備に入って。すぐに始める」


「了解」


 そしてバーゲスト・アサルトの隊員たちが一斉に動き始めたが、ガーゴイルは準備をしようとしたファティマの方に向かってきた。


「ファティマ。お前と少佐が一緒に行動することになる」


「そのようです。私のような部外者に任せるのは不満ですか?」


「いいや。俺も軍人だ。上官が決めたことに逆らいはしない」


 ファティマが不審に思って尋ねるとガーゴイルはそう返す。


「ただ少佐を頼むぞ。俺たちにとって大事な人なんだ」


「分かりました。任せてください」


「よろしくな。俺も可能な限り支援する」


 ガーゴイルはそう言い残して去った。


「頑張らないとですね。お願いしますよ、サマエルちゃん!」


「うん!」


 ファティマたちも作戦開始に向けて動いた。


 武器弾薬を補充し、装備を整えてファティマとサマエルは作戦機になるハミングバード汎用輸送機の待機している場所へと向かう。


「来たわね。準備はいい? 最悪、長期戦になるわよ」


「オーケーです。備えています」


 ファティマは武器弾薬はもちろん医薬品と水、そして食料を詰め込んだ大型のリュックサックを背負っていた。


「なら、乗り込んで。始めるから」


「了解です」


 ファティマたちはハーピーが操縦するハミングバード汎用輸送機に乗り込んだ。


「やはりID偽装も何もしていないのですよね?」


「していない。あなたの相棒頼りよ。お願いね」


 グレースはファティマにそう答えてサマエルを見た。


「レーダーとかも一応妨害はできるけど」


「できることは全てやって。あなたが何ができるのかも把握したい」


「う、うん」


 グレースの言葉にサマエルが緊張した様子を示す。


「大丈夫ですよ、サマエルちゃん。いつも通りにやればいいんです。私が当然カバーしますから。できることをやるだけです」


「分かったよ、お姉さん」


 ファティマはそう言って安心させ、サマエルはぎこちなく微笑んだ。


『ナイトストーカー。作戦開始か?』


「ええ。始めて、ハーピー」


『了解!』


 ナイトストーカー──グレースの合図を受けてハーピーがハミングバード汎用輸送機の反重力エンジンを起動させて離陸を開始。


 ハミングバード汎用輸送機は空に上がるとそのまま真っすぐゲヘナ軍政府支配地域深部にあるエコー基地の付近を目指した。


「レーダーを妨害してる。敵の通信も傍受してるよ」


『ジュリエット・ツー・ワンより空域にいる各機に告げる。現在、レーダーが異常を起こしている。目視にて管制中につき計器飛行を心掛けよ』


 早速レーダーが機能不全になったことを示す無線が傍受された。


「順調ですね。ありがとうございます、サマエルちゃん」


「お姉さんのためだから」


 サマエルはそう言ってファティマに微笑んだ。


『オーケー。要撃機の類が上がってくることもないし、地対空ミサイル(SAM)の射撃管制レーダーも浴びてない。ゲヘナ軍政府支配地域上空を飛んでるって信じられなくなってくるな』


「いいニュース。このまま予定地点まで進出して」


 流石にエコー基地に直接乗り付ければ戦闘は避けられないのでエコー基地の傍にある廃墟が着陸地点(LZ)に指定されている。


『全て予定通り。到着予定時刻(ETA)2334』


 ハーピーが報告し、その到着予定時刻(ETA)丁度にパワード・リフト輸送機はゲヘナ軍政府支配地域深部の廃墟に着陸。


『到着だ、ナイトストーカー』


「了解。ここからは時間との勝負。急いで」


 グレースたちが素早くパワード・リフト輸送機から降下し、着陸地点(LZ)を確保。ガーゴイルたちが早速地雷やリモートタレットを設置した。


「では、ガーゴイル。あなたたちはこのビルから支援して。ある程度私たちは見えるはずだから。いい?」


「分かった。気を付けろよ、少佐」


「もちろん」


 グレースはガーゴイルにそう言うとファティマのもとに来た。


「行きましょう、ファティマ、サマエル」


「了解です」


 商業ビルだった場所からガーゴイルたちが支援する中、ファティマたちはエコー基地を目指してゲヘナ軍政府支配地域を慎重に進む。投影型熱光学迷彩を使用して姿を隠し、そうやってエコー基地を目指した。


「まだ敵は気づいてないですね」


「そうみたい。偵察が目的だから戦闘は避けたいけど」


 サマエルが傍受したMAGの通信を聞きながらファティマが言うのにグレースがそう返してくる。


 MAGは全く気付いた様子がない。レーダーの故障についてもも外部からの攻撃だと思っている様子はなかったし、フォー・ホースメンのパワード・リフト輸送機が支配地域内に侵入したことにも気づいていなかった。


「まもなくエコー基地」


……………………

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