アングルトンの狂気//空中機動部隊
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──アングルトンの狂気//空中機動部隊
接近する所属不明のオウル攻撃機2機。
『スプリット・ゼロ・ワン、攻撃位置についた。機関砲の射程内だ。撃て!』
「“赤竜”! 貫け!」
オウル攻撃機の固定兵装である口径30ミリ機関砲が火を噴く前にファティマの“赤竜”が、まず2機の上空援護機の指揮官機に襲い掛かった。
『うわ──……』
オウル攻撃機のガンナーが赤いエネルギーブレードによって貫かれ、攻撃を行おうとした口径30ミリ機関砲が数発の機関砲弾を放つもその狙いは大きく逸れた。
逸れた砲弾がファティマたちの車列が走っている高速道路の傍に聳える商業ビルに叩き込まれてテリオン粒子で劣化した建物が崩壊する。
『クソ、クソ。ガンナーの権限を引き継ぐ。何としても攻撃を──』
その時、上空援護機の指揮官であるパイロットが目を見開いた。
パイロットシートの窓の前に赤いエネルギーブレードが2本浮かんでおり、それが急速に自分に向けて接近してきたのである。
『アクティブ防護システムを起動! 迎撃しろ!』
オウル攻撃機のアクティブ防護システムである高出力レーザーが“赤竜”の刃を迎撃しようとする。
『なっ……!?』
しかし、アクティブ防護システムで高出力レーザーを浴びたはずの“赤竜”の刃は照射された10メガジュールの高出力レーザーを分解した。膨大なエネルギーが溶かされ、消滅する。
『何か……!?』
そのまま赤いエネルギーブレードがパイロットシートを引き裂き、何が起きたのかも分からないままにパイロットを八つ裂きにした。
さらに指揮官機の反重力エンジンと武装が滅多刺しにされ空中で爆散。
『クソ。指揮官機がやられた。敵は対空兵装を保有している。スプリット・ゼロ・ツーよりカウボーイ・ゼロ・ワンへ! 作戦中止を進言する!』
『カウボーイ・ゼロ・ワンよりスプリット・ゼロ・ツー。許可できない。作戦を継続せよ。敵の護衛を排除し、降下地点を確保せよ』
『畜生』
撤退を求める声は却下され、上空援護機であるオウル攻撃機が遠方から口径30ミリ機関砲で砲撃を行ってきた。
「やらせませんよっと!」
機関砲弾をファティマがクラウンシールドで迎撃し、攻撃を阻止。
『スプリット・ゼロ・ツーよりカウボーイ・ゼロ・ワン。弾薬切れだ。撤退する』
『なんだと。クソ。降下急げ!』
そして、1個中隊の空中機動部隊が飛来し、ファティマたちの車列が走行する旧高速道路上に展開した。6体のヘカトンケイル強襲重装殻などを装備している重装空中機動部隊だ。
『バリケードを展開し、敵の車列を押さえろ! 急げ!』
魔術で展開されるエネルギーシールドより強力なバリケードが旧高速道路上に展開され、それを遮蔽物にした兵士たちとアーマードスーツがファティマたちに銃口を向ける。
「畜生! 車列を止めるぞ! 蜂の巣にされちまう!」
ソドムの武装構成員が急ブレーキを踏んでタイパン四輪駆動車を停止させるが、停止が間に合わなかった後方の軍用トラックが追突してきた。
「わっと!」
「ああっ!」
ファティマは何とか衝突された車内でバランスを維持したがサマエルは車内でシートに頭をぶつけてしまう。
「大丈夫ですか、サマエルちゃん!?」
「だ、大丈夫だよ、お姉さん。通信妨害を始めたから思う存分戦って」
「分かりました。出ます!」
ファティマはサマエルの無事を確認するとタイパン四輪駆動車のドアを蹴り破って外に出た。同時にエネルギーシールドとクラウンシールドを展開し、ソドムの車列を防衛し始める。
『カウボーイ・ゼロ・ワンより各員。射撃開始、射撃開始!』
前方に展開した敵の兵士たちがファティマたちを狙って銃弾と爆弾を叩き込んできた。通常のエネルギーシールドであれば、この猛烈な攻撃を受ければ簡単に破壊されるはずだった。
だが、ファティマのそれは違う。
『攻撃が弾かれているぞ! 通じていない!』
『アーマードスーツを前に出せ。ロケット弾で吹き飛ばしてやれ!』
敵の兵士たちは小火器の銃弾などが威力不足だと判断するとヘカトンケイル強襲重装殻を前に出そうとする。
「被害が出る前に叩きます。“赤竜”!」
ファティマ自身は身を守れても遮蔽物も何もないかつての高速道路跡ではソドムの構成員や車列の積み荷に被害が出るだろう。
ヘカトンケイル強襲重装殻のような強力な火力の兵器は早急に叩かねば。
『C4ISTARが機能していないぞ。データリンクできない!』
『クソ。各機、独自の判断で射撃を実施せよ。聞こえているな?』
既にアーマードスーツ同士の共同交戦を実施するC4ISTARはサマエルによって妨害され、アーマードスーツ同士の連携ができない。
「貫け!」
そこに“赤竜”が飛来。
『なんだあれは。エネルギーブレード……?』
『不味い。近づいてきている! アクティブ防護システム起動しやがれ! 撃ち落せ!』
アーマードスーツはオウル攻撃機と同様にアクティブ防護システムが“赤竜”の迎撃を試みるが、やはり高出力レーザーが“赤竜”の刃に触れれば分解されてしまい止められない。
『畜生──』
“赤竜”の刃が一斉に6体のアーマードスーツを仕留め、アーマードスーツは爆発炎上して無力化された。
『アーマードスーツが……!』
「行きますよ。追撃です!」
そこでファティマもMTAR-89自動小銃を持ち、117式強化外骨格の人工筋肉が出力する速度で駆け、銃弾と爆薬をエネルギーシールドとクラウンシールドで防ぎながら突撃。
『敵歩兵が突っ込んでくるぞ。機関銃は牽制しろ!』
ファティマが迫るのに敵歩兵がエネルギーバリケードから口径7.62ミリのGPMG-99汎用機関銃が銃弾を叩き込んでくる。
「あいにくですが効きませんよ。お返しです!」
MTAR-89自動小銃に空中炸裂弾を装填し、ファティマがそれをエネルギーバリケードに立て籠もる敵に向けて連射。
内蔵のセンサーと妖精で起爆地点を判断した銃弾が連続して爆発し、強化外骨格を装備した敵歩兵たちが薙ぎ倒される。
『クソッタレ! 死に晒せ!』
そこで敵歩兵がSRAT-140携行対戦車ロケットを持ち出し、ファティマを狙う。
『後方に注意! 死ね──』
引き金を引いた瞬間、“赤竜”が狙いを定めていた歩兵の首を刎ね飛ばし、姿勢が崩れた状態で発射された対戦車ロケット弾が迷走。その結果、敵の陣地内でロケット弾が炸裂してしまった。
「あれま。自爆ですね。でも、後は掃討戦です」
“赤竜”の刃がぐるりとファティマの周りを回り、そのさらに外をクラウンシールドが回転する。そして、ファティマを守るように広がっていたそれらが一斉に敵の方に向けられた。
『クソ。やべえ』
敵は思わずそう呟いた。
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