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エデン内戦//正統性

……………………


 ──エデン内戦//正統性



「核兵器がデモン・レギオンの手に渡った、だと!?」


 ドミトリーはゼレール元帥からの報告に叫ぶ。


「核施設が襲撃を受けた。今現在、偵察部隊が確認した限りでは、デモン・レギオン側に就いた民間軍事会社(PMSC)ヴリトラ・ガーディアンズが占領している」


「奴らは我々が核攻撃を行うという手段を奪い、そして我々に対して核攻撃が行えるようになったというわけだな。何ということだ!」


 ゼレール元帥が告げるのにドミトリーがそう返す。


「すぐに奪還してくれ、ゼレール元帥。奪還部隊を送り込み、核の奪還を!」


「分かっている。だが、下手に攻撃すれば敵は核を使うかもしれない」


「では、核は取り戻せないと?」


「そうは言っていない。慎重に奪還を試みれば不可能ではないだろう」


「ならば、そうしてくれ。迅速に」


 ドミトリーはそう言って自室の中を落ち着かないようにうろうろした。


 核兵器をデモン・レギオン──いや、ヴリトラ・ガーディアンズが押さえたという知らせはファティマたちの下にも届いた。


「やられました。ヴリトラ・ガーディアンズは寝返りましたよ」


 ファティマがデモン・レギオンの面々にそう語る。


「核兵器を奪ったのではないのか?」


「それ以降連絡がないのです。さらに言えば作戦を共同していた国家保安委員会の特殊作戦部隊をヴリトラ・ガーディアンズが攻撃した可能性もあります」


「カイラの奴め。核兵器を握って交渉しようというわけか……」


 苦々しい表情でファティマが報告するのにジェーンたちが唸った。


「アデルたちからは我々が裏切ったと思われかねない事態です。すぐに事情を説明し、向こうにも対処を求めましょう」


 今はアデルたちと協調して動かなければならない。


「エデンへの進出も近いです。備えてください」


 ファティマが指示を出し、ヴリトラ・ガーディアンズの裏切りがアデルに伝えられた後にアデルたちも行動を起こした。


「ドミトリーは核を失いました。我々が得たというわけでもありませんが、それでもドミトリーが核攻撃を行えなくなったのは確かです」


 アデルがシーにそう語る。


「事態がいい方向に進んでいるとはとても思えないのですが」


「それでも行動を続けなければなりません。我々はクーデターに失敗しました。ですが、我々の正統性を示し、この内戦に勝利しなければ」


 シーが呟くように言うのにアデルがそう主張した。


「すぐにドミトリーとレナトを排除した政権の樹立を宣言します。それを以てしてこの内戦を戦うのです」


「分かりました。そうしましょう。民間の放送施設は制圧してあります」


「では、すぐに」


 アデルたちは正統政府を主張する政権樹立を宣言することにした。


「エデンの皆さん。我々は長らく続いたエデン社会主義党の腐敗を終わらせるために立ち上がりました。エデン社会主義党はもはや貴族化した党幹部が牛耳る特権階級のための組織となり果てています」


 アデルがカメラに向けてそう語る。


「このような腐敗は速やかに終わらせなければなりません。何としてもです。我々はゲヘナから腐敗を排除し、そしてこのエデンに公平さを取り戻します。それが我々の戦う目的なのです」


 アデルは続ける。


「今ここにエデン民主共和党の樹立を宣言します。この党の目的はエデン社会主義党が作ったカースト制度を否定し、エデンとゲヘナに正義をもたらすこと。我々の勝利は大勢を救うことになるでしょう」


 旧世界の崩壊から続くエデン社会主義党の存在をアデルは否定。


「我々は勝利します」


 アデルの宣言からすぐにドミトリーも制圧していた国営放送を使って声明を発表。


「エデンを統治する正統な政府はエデン社会主義党のみである。我々は反徒たちのいかなる組織とイデオロギーをも否定する。エデン社会主義党のみが正統な政府だ」


 ドミトリーはそう訴える。


「よってここでアデル・ダルランとレナト・ファリナッチのエデン社会主義党からの除名を宣言する。このものたちはエデン社会主義党による正統な統治を脅かし、エデンに内乱を持ち込んだのだ」


 ドミトリーはそう言ってアデルとレナトを正式にエデン社会主義党の敵とした。


 そして、統合特殊作戦コマンドのクリスティーナもそれらの声明の発表を聞きながら行動を起こそうとしていた。


「市民の諸君。我々は現在のエデンにおける内戦の原因は腐敗した党指導部にあるものと考えている。ドミトリー・アンドロポフ、レナト・ファリナッチ、アデル・ダルラン。これらの指導部こそが腐敗と内戦を招いたのだ」


 軍用の通信回線を使ってクリスティーナが語る。


「この混乱を鎮静化させ、さらにはこのような混乱が二度と起きないようにするためには軍が行動しなければならない。もはやこの危機において党指導部は全く役に立たない。軍による指導が必要だ」


 クリスティーナもまた敵対者たちを否定。


「よってここに軍事救国評議会の樹立を宣言する。現時点より我々が正統なエデンとゲヘナの統治組織であり、全ての組織は我々の指示に従わなければならない」


 クリスティーナも新しい組織を立ち上げた。軍による統治機関だ。


 こうしてエデンに3つの勢力が誕生した。


 アデル率いるエデン民主共和党。


 ドミトリー率いるエデン社会主義党。


 クリスティーナ率いる軍事救国評議会。


 これらの勢力がそれぞれ政権を奪おうと画策を開始。


 そこにさらなる勢力が今まさに加わろうとしていた。


 アデルのエデン民主共和党が制圧している航空宇宙軍基地にシャトルが着陸。


「ついに来たか」


 シーがシャトルを見てそう呟く。


 シャトルはゲヘナ軍政府が所有していたものだが、今の所有者はそれとは違う人間になっている。ゲヘナ軍政府は打倒されたのだから当然と言えるが。


 シャトルが何機も着陸し、国家保安委員会の特殊作戦部隊が警護する中でシャトルから大勢の人間たちが降りて来た。


「戻ってきましたよ、エデン」


 やってきたのはファティマたちデモン・レギオンの将兵だ。


 そう、ファティマはついにエデンへと戻って来た。


「ようこそ、ファティマさんたち。我らが盟友たちよ」


「ええ。よろしくお願いしますね、アデルさん」


 国家保安委員会の特殊作戦部隊に護衛されたアデルがファティマたちを出迎えた。


「それで状況は?」


「ドミトリーはキャピタルセントラルセクターを中心にエデンの制圧を続けています。我々はウェストサイドセクター・ワンを拠点に防衛作戦中。そして、統合特殊作戦コマンドは暗殺を繰り返しています」


「なるほど。では、我々が戦線を支えましょう。それによって勝利を」


「お願いします。さあ、どうぞまずは司令部へ」


「ええ」


 ファティマたちはアデルに案内されてエデン民主共和党側の司令部へ向かう。


……………………

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