アッティラ作戦//エコー・デルタ・ワン空軍基地
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──アッティラ作戦//エコー・デルタ・ワン空軍基地
バーロウ大佐が指揮する空中機動部隊は撤退を図るゲヘナ軍政府部隊をエコー・デルタ・ワン空軍基地で攻撃していた。
「敵を逃がすな! シャトルを離陸させるんじゃない!」
「撃ち落とせ!」
エデンを目指して離陸しようとするシャトルに向けてMANPDSや歩兵戦闘車の機関砲が攻撃し、被弾したシャトルが炎に包まれて地上に落下していく。
「バーロウ大佐。作戦は順調に進行中です。エコー・デルタ・ワン空軍基地は間もなく制圧完了。ですが、敵の抵抗が激しい箇所がいくつか」
「使えるものは全て使え。叩きのめしてやるんだ。俺も前線で指揮を執る」
「了解」
バーロウ大佐も部下とともにエコー・デルタ・ワン空軍基地の前線へと向かう。
既に突入したフォー・ホースメンの空中機動部隊は大暴れしており、エコー・デルタ・ワン空軍基地は陥落寸前だった。
「進め、進め。迅速に制圧しろ。ここを押さえれば勝ったも同然だ」
「了解です、大佐殿!」
バーロウ大佐は前線で指揮を執り、ゲヘナ軍政府部隊を追い詰めている。
「奴らを通すな! 友軍の撤退を支援するんだ!」
「戦え! 最後まで戦え!」
追い詰められているゲヘナ軍政府部隊は必死に戦い、死兵となって抵抗する。フォー・ホースメンの部隊があらゆる面で有利なのに怯むこともない。
「クソ。敵はかなり強固に抵抗しているな。支援は?」
「展開した砲兵と上空援護機が支援可能とのこと」
「では、上空援護機に近接航空支援を要請だ。叩きのめせ!」
そして、ゲヘナ軍政府部隊が立て籠もる陣地に向けて上空からバルチャー攻撃機が飛来した。そしてロケット弾と機関砲を叩き込んで陣地を蹂躙する。
「叩き落とせ!」
「MANPADSでも何でも使えるものを使うんだ!」
ゲヘナ軍政府部隊は上空から攻撃してくるバルチャー攻撃機に反撃。
『テンペスト・ゼロ・ワンより各機。地上に地対空ミサイルと対空火器を確認した。警戒せよ!』
バルチャー攻撃機は地対空ミサイルをアクティブ防護システムで迎撃し、対空火器にロケット弾を放つ。
「砲兵が支援を開始!」
航空戦力に加えて展開した迫撃砲が支援を開始。口径81ミリと口径120ミリの迫撃砲が後方で火を噴いた。
「砲弾を誘導中」
迫撃砲弾はレーザー誘導が可能になっており、前線観測班が誘導用レーザーで目標を照準して誘導された通りに着弾する。
砲弾が次々に炸裂して地対空ミサイルや対空火器が制圧されていき、さらに上空援護機が暴れまわる。
このことはこのエコー・デルタ・ワン空軍基地の防衛とゲヘナ軍政府部隊撤退を指揮するルーカスの下にも報告されていた。
「ウェストモーランド少将閣下。敵の攻撃機が上空を抑えており、我々にできることはもうほとんどありません。いかがしますか?」
「まだ諦めるには早い。エデンの統合特殊作戦コマンド司令官クリスティーナ・テヘーロ中将に支援を要請している。それが来れば戦況はひっくり返せるはずだ」
疲れ切った参謀の報告にルーカスがそう返す。
「本当に援軍は来るのですか? もはや軌道エレベーターのあるアルファ・ゼロ基地とも連絡が取れません。どうやって援軍を派遣するのです?」
「方法はある。エデンからシャトルを飛ばして空挺降下するなどな。だから──」
そこでルーカスのZEUSに着信があった。
「テヘーロ中将閣下?」
『ウェストモーランド少将。そこから脱出しろ。そう指示したはずだ』
「部下を見捨てて逃げるなどできません」
『もはやゲヘナ軍政府は終わりだ。崩壊した。今はひとりでも多くの優秀な人材が必要なのだ。分かるだろう?』
「いいえ。分かりません。俺の部下も優秀な人材だ。それを見捨てるなど!」
クリスティーナの言葉にルーカスがそう怒鳴った。
『愚かな選択をしているぞ、ウェストモーランド少将』
「愚かだろうとこれが俺の選択だ。俺は戦友たちを見捨てない。以上!」
ルーカスはそう言って通信を切断。
「撤退作戦を続ける。エデンからの増援はない。それでも脱出を急げ!」
「了解」
ゲヘナ軍政府はありったけの対空攻撃手段を動員して上空から火力を浴びせるフォー・ホースメンのバルチャー攻撃機を必死に攻撃。
「シャトルを離陸させるぞ! 滑走路を確保しろ!」
「クソ。バルチャー攻撃機が鬱陶しい!」
そこで飛来したファントム無人攻撃機がフォー・ホースメンのバルチャー攻撃機と交戦を開始した。ファントム無人攻撃機は基地を離陸したゲヘナ軍政府のものだ。
「友軍航空戦力だ!」
「いいぞ! やっちまえ!」
不意に訪れた友軍機にゲヘナ軍政府の兵士たちの士気が一時的に上がる。
しかし、すぐに反撃に出たバルチャー攻撃機によって1機しかいなかったファントム無人攻撃機は撃墜されてしまった。
「砲兵の火力支援を全面的に要請して突き進め。敵が立て直す前に叩け」
バーロウ大佐は前進しながらそういう。
「バーロウ大佐。ここにウェストモーランドはいると思いますか?」
「いるだろうな。間違いなく」
同行しているシシーリアが尋ねるのにバーロウ大佐が答える。
「ならば、殺さなければなりません」
「そうだな。あいつを殺せばゲヘナ軍政府はいよいよ終わりだ」
パワード・リフト輸送機で空中機動した空挺戦車とアーマードスーツが前方に出て対戦車兵器が尽きたゲヘナ軍政府部隊を追い詰めていく。
「残敵を殲滅しろ。残る敵は地上基地施設に立て籠もっている。葬り去れ」
「了解」
バーロウ大佐が命令を発し、フォー・ホースメンがエコー・デルタ・ワン空軍基地の地上基地施設に向けて進んだ。
「さて、俺も突っ込むとするか。ルーカスとはちょっとばかり因縁があってな。奴は俺の手で殺さなければならん」
「いいえ! それは私が!」
「気持ちは分かるがやめておけ。恨みを晴らし終えたら戦う動機がなくなる」
シシーリアの訴えにバーロウ大佐はそう言って前線部隊とともにゲヘナ軍政府部隊が立て籠もる地上基地施設に踏み込む。
「敵だ!」
「殺せ!」
ゲヘナ軍政府部隊が踏み込んできたバーロウ大佐たちを狙ってきた。
「一気に片づけるぞ」
バーロウ大佐はエネルギーシールドを展開して一気に敵に肉薄。超高周波振動刀“隼”を抜いて敵を斬り倒していった。
「続け、紳士淑女諸君。これで勝利を得るぞ。ぶちのめせ!」
「おお!」
フォー・ホースメンの兵士たちがバーロウ大佐に従って進んでいく。
次々にゲヘナ軍政府部隊が撃破されて行き、バーロウ大佐たちは掃討戦を進めた。
そして、ついに──。
「よう、ルーカス。久しぶりだな」
「メイソン・バーロウ。裏切者め」
バーロウ大佐はルーカスと遭遇した。
「死んでもらうぞ。文句は言うなよ」
「死ぬのはお前だ」
バーロウ大佐とルーカスがそれぞれ超高周波振動刀を構える。
「いざ尋常に──」
「──勝負」
バーロウ大佐とルーカスが一斉に動く。
勝負は一発で決まった。
「ぐうっ……!」
ルーカスの胸が深く裂かれ、よろめくと地面に倒れる。
「あばよ、ルーカス」
バーロウ大佐はそう言って手を振った。
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