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情報マネジメント//強襲

……………………


 ──情報マネジメント//強襲



 ファティマたちは国家保安委員会の捜査官グロスマン少佐の拘束を行うことになった。そのためにはまずグロスマン少佐の動向を確認する必要がある。


「まずは偵察ですね。グロスマン少佐の行動パターンを把握しないと拘束するのは難しいです。警備だって付いているでしょうし」


「だね。こっちで分かっている情報だけでは足りない感じ」


 ファティマたちは既にゲヘナ軍政府支配地域内に侵入しており、ソドムのフロント企業の建物の中で作戦を立てていた。


「グロスマン少佐は資料によればキロ・フォー基地に勤務したのちに兵舎に帰宅している。どういう手段で帰宅しているかやそれの警備の規模は不明」


「では、それぞれキロ・フォー基地と兵舎を見張りましょう」


「オーケー」


 そして、ファティマたちはチームを分けてキロ・フォー基地と兵舎の監視を始める。


 キロ・フォー基地はゲヘナ軍政府支配地域でも深部というわけではなく、別段特別なIDを準備しなくても行き来することができた。


 ファティマはキロ・フォー基地のゲートが見渡せる位置に陣取り、投影型熱光学迷彩を使用して潜んだまま監視を行った。


 一方のデフネは兵舎を監視する。


 それを数日続け、グロスマン少佐の行動パターンを把握。


「グロスマン少佐はキロ・フォー基地から帰宅する際に4名の護衛に守られています。時間はほぼ毎日決まった時間で経路などに異常はなし。自宅にも4名の護衛がいます」


「オーケー。どうやる?」


「キロ・フォー基地の傍で襲えば基地の戦力が出てきます。やるなら兵舎の傍ですが兵舎そのものの警備システムに探知されないように」


「なかなか難しいね」


「大丈夫です。サマエルちゃんがいます」


 そうファティマたちにはサマエルがいる。兵舎の警備システムをマヒさせるのは容易なことだろう。


「後はグロスマン少佐を連行するための車両ですが」


「こっちで装甲バンを準備する。それに積み込んで脱出」


「警備は排除してもいいのですよね?」


「エルダーお兄ちゃんが欲しいのはグロスマン少佐だけだよ」


「では、そのように」


 こうしてファティマたちは計画を立て、実行することとなった。


 兵舎の傍に装甲バン1両を停めて待機し、ファティマたちはサプレッサーを装着し、45口径亜音速弾を装填したKSV-PRO短機関銃を手に待機する。


 時刻が徐々に夕方になり、そしてグロスマン少佐が帰宅する時間になった。


「車両を確認」


 ファティマは上空に飛ばした偵察妖精でグロスマン少佐が乗っている車両を発見。


「車両を止めるけどグロスマン少佐を殺さないようにね」


「了解です。サマエルちゃん、周辺の警備システムンの無力化と通信妨害を」


 ファティマたちは装甲バンの中で戦闘準備を整え、それから接近する車を確認した。


「そろそろパーティー開始だよ。いいかい、お姉ちゃん?」


「ええ」


「3カウント」


 ファティマたちは3秒カウントした後に装甲バンから飛び出すと向かって来る車の運転手とバッテリーを狙って発砲。運転手の頭が弾け飛び、バッテリーが損傷して車がゆっくりと停車する。


「敵襲だ! 応戦しろ!」


 確認されていた護衛の兵士たちがMTAR-89自動小銃で応戦しようとするがファティマたちに押されて身動きが取れない。


「私が突っ込みますので援護してください」


「りょーかい!」


 ファティマはエネルギーシールドを展開して一気にグロスマン少佐が乗った車に向けて突き進み、遮蔽物に隠れていた護衛の兵士たちを片づける。


「クリア」


「目標を確保しよう」


 ファティマたちは車からグロスマン少佐を引きずり下ろし、生体認証で本人かどうかを確認した。


「本人です」


「よし。一緒に来てらもうよ、グロスマン少佐?」


 ファティマが報告しデフネがにやりと笑うと結束バンドでグロスマン少佐を拘束して装甲バンに詰め込み見張る。


「お姉さん。今のところゲヘナ軍政府に動きはないよ」


「いい感じです。このまま逃げましょう」


 装甲バンの運転席にファティマが乗り込み、一気にゲヘナ軍政府支配地域から脱出。検問(チェックポイント)の兵士たちは国家保安委員会の捜査官が拉致されていることに気づかず、通してしまった。


 ファティマたちは無事ゲヘナ軍政府支配地域を離脱し、ソドム支配地域に入った。


「オーケー。無事に脱出しましたよ」


 ファティマがそう言い、ソドム支配地域を拠点に向けて進む。


「ご苦労様でした、ファティマさん」


 エルダーが出迎える。それからソドムの尋問チームも。


「後はご自由に。とは言え、訓練されているようですが」


 ここに来るまでグロスマン少佐は悲鳴のひとつも上げず、平静を保っている。訓練された諜報員のそれだ。対尋問訓練を受けているに違いない。


「大丈夫です。この手のことには慣れていますから」


 エルダーはそう請け負い、グロスマン少佐の尋問を始めた。


 尋問がどのようなものだったかは分からないが、分かった内容についてはファティマたちにも情報が共有されることになっている。それが今回の仕事(ビズ)の報酬にもなっているのだ。


「分かったことがあります」


 エルダーが結果をファティマにZEUSに送信する。


「エデン社会主義党内での権力争いは主にドミトリーとアデルの間で起きており、焦点となっているのはゲヘナの統治政策だと」


「なるほど。アデルは民間軍事会社(PMSC)に業務を丸投げしているのは間違いだと主張しており、ドミトリーにとっての利権になっていると批判している、と」


「そうです。上手くやればこの権力闘争を利用できるかもしれません。これから注目すべきことですね。エデンにいる我々の細胞も動員して探るつもりです」


「利用できれば私たちの目的を達せられるかも、ですね」


「ええ。エデン社会主義党を分裂させ、撃破する」


 ファティマの言葉にエルダーが頷く。


「今回の仕事(ビズ)は以上です。ご苦労様でした。マムルークが送りますよ」


「ども」


 いつものようにマムルークがファティマとサマエルを送っていくことになった。


「私が運転しよう」


 マムルークがそう言ってタイパン四輪駆動車を運転。


「なあ、失礼なことを聞くかもしれないがひとついいか?」


「何でしょう?」


「ファティマとサマエルの関係はどういうものなんだ?」


 マムルークはそう尋ねて来た。


「友人。同志。あるいは共犯者、ですかね」


「そうか。そうか……」


「ひょっとしてカーター先生のことで悩んでいますか?」


「あ。ま、まあな」


 ファティマが尋ねるとマムルークが頬を赤くした。


「女同士で、その、恋愛関係になるとかやっぱりおかしいだろうか……」


「ゲヘナの現状を見ますにそうおかしいことではないと思いますよ」


「だけど、ミアは違うかもしれない」


「確認したんですか?」


「……まだだ」


 どうやらマムルークは随分と奥手らしい。


「いきなり聞くのにためらいがあるなら、匂わせてみるのはどうですか? カーター先生をふたりで食事しないかって誘うとかして好意を見せてみるのはどうですか? いきなり愛を伝えるよりはやりやすいかと」


「そうだな。お前はおかしいとは思わないのか? その……」


「愛の形は人それぞれ。否定はしません」


「そうか」


 マムルークはファティマの言葉に深く頷いた。


……………………

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