目標フォー・ホースメン司令官//アナウンス
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──目標フォー・ホースメン司令官//アナウンス
ファティマたちはMAGから奪ったハミングバード汎用輸送機でフォー・ホースメン支配地域に帰還した。
「やれたか?」
早速バーロウ大佐がファティマたちを出迎えた。
「無事に。ダニエル・リステルは惨たらしく死んだ」
「そいつは結構。他に報告すべきことはあるか?」
「ええ。あなたの執務室に行きましょう」
そう言ってグレースはファティマとサマエルを連れてイーグル基地内のバーロウ大佐の執務室へと向かった。
「で、報告すべきこととは?」
「あなたの暗殺計画が進行している。これが情報源が吐いた情報の一覧」
バーロウ大佐のZEUSにグレースが情報将校を尋問して得た情報を送信。
「MAGの事業立て直し案か。アベル計画。ふうむ。いろいろな戦力増強計画とそれから俺の暗殺か。随分と舐めたことを考えてくれるじゃないか」
「でも、動員されるのは例のウィッチハント。あなたは今とても危険な状況よ」
「そうみたいだな。どうしたものか」
グレースの報告にバーロウ大佐が唸る。
「ブルー基地に移るべきね。あそこは要人を守るのに丁度いい場所だから。後は私たちがどうにかする」
「そうするか。あそこは不便な場所だがしょうがない」
ファティマはそれを聞いてブルー基地とはどういう場所なのかと思う。
「ファティマ。仕事を受けるか? 俺の護衛だ」
「ええ。やりましょう。しかし、暗殺計画がいつ実行されるか分かるのですか?」
「分からん。待つしかない」
「それはまた」
暗殺はいつ起きるか分からないのに待ち続けることは今のファティマには難しい。ファティマはデモン・レギオンの仕事もしなければいけないのだ。
「暗殺の時期はある程度特定できる。ソドムから情報を買えばいいのと、それから潜入部隊がこれから念入りに警戒する」
「なるほど。それだとありがたいです。今は自分の組織の仕事もあるので」
グレースの言葉にファティマも頷く。
「何だ。俺たちにちゃちな給料で雇われるのは嫌になったか?」
「いえいえ。そういうわけでは」
フォー・ホースメンとの繋がりは重要だ。フォー・ホースメンは今のところゲヘナにおける最大の勢力なのだから。
「じゃあ、ブルー基地に移るぞ。車列を準備しろ」
「了解」
そして、バーロウ大佐が移動するための車列が準備される。バーゲスト・アサルトも一緒に移動することになっていた。
「ハーピー、あなたは上空援護機の操縦を」
「了解!」
バーゲスト・アサルトのメンバーがそれぞれの役割を割り振られてから、車列で絶対にバーロウ大佐を守る態勢を整える。
「これよりブルー基地に向かう」
そして、車列が発進した。
車列は厳重に護衛されながらフォー・ホースメンの基地のひとつであるブルー基地を目指した。
「ブルー基地とはどういう場所なのですか?」
「要塞よ。旧世界で核戦争に備えて作られていたもの。外部からの工作不可能なスタンドアローンの警備システムや核爆発にも耐えるシェルターなどいろいろ」
「それならば安全そうです」
「だといいのだけれど」
グレースはそう言い、周囲を警戒する。
車列はブルー基地に到着。ブルー基地の守備隊と合流した。
「大佐殿。今現在異常ありません」
「よろしい。俺は暫くここに立て籠もる」
「了解」
ブルー基地は地上と地下の構造からなるもので地上には基地警備システムが、地下には核シェルターと独立した警備システムが存在する。
「大佐。あなたは地下で時間を潰してて、私たちは警備を行う」
「ああ。頼んだぞ、グレース」
それからバーロウ大佐は地下へ。グレースとファティマたちは上階に展開。
「さてさて。これからどうなることやら」
ファティマは与えられた部屋で休みながら動員されるのを待った。
『ファティマ。情報がある』
「ジェーンさん?」
そこで不意にファティマのZEUSにジェーンから着信があった。
『MAGによるバーロウ大佐の暗殺作戦が進行中だとアリスが掴んだ』
「それならば既にフォー・ホースメンも把握していますよ」
『具体的な日程や計画も?』
「把握しているのですか?」
『ああ』
ジェーンからの通信は意外なものだった。
「オーケーです。アリスさんが掴んだのですよね?」
『そうだ。そっちに送っておく。上手く売りつけてくれ』
「了解ですよ」
ジェーンから情報を受け取り、ファティマはグレースに会いに行く。
「グレースさん、暗殺に関する情報が入りました!」
「どこから?」
「うちの情報筋からです。具体的なことは申せませんが、信頼できる情報と考えてください。これが件の情報です」
「ふむ。無視できない情報ね」
ファティマから情報を受け取ったグレースが呟く。
「使えそうですか?」
「ええ。頼りにしましょう。けど、全面的にこの情報に依存しすぎて破綻するようなことがあってはならない。ゲヘナ軍政府もMAGもそれ相応の情報戦をやるから」
「もっともです」
アリスの情報は意図的に漏洩させられた罠ではないという保証は今のところない。それにアリスが情報を得たタイミングが良すぎて、そのことから漏洩の可能を推測することもできた。
「けど、計画通りなら明日の深夜に作戦発動ね。それもこのブルー基地に移動することが見こされていた。この前の幹部暗殺はただの戦果稼ぎというよりも大佐に危機意識を持たせるものだったみたい」
「その可能性はありますね。暗殺作戦で厄介なのは暗殺の相手が見つからないことです。MAGは、それもウィッチハント部隊ならイーグル基地だって強襲できるでしょうが、そこにバーロウ大佐がいなければ何の意味もない」
「獲物を追い立てて狩るというわけ。狩猟気分でうちのボスが殺せると思っているとは。その甘い見立てを粉砕してやらないとね」
「ええ」
ファティマたちは気合を入れ、警備を固める。
間違いなく敵は夜に攻撃を仕掛けるだろう。投影型熱光学迷彩を使っても完全に隠れるならば夜がいい。まして高度な夜戦装備を持っているMAGならば当然。
「トレーサードッグは使わないですか?」
「使うけどMAGなら騙し方は知ってる」
「ないよりマシですよ」
「それよりいいものをガーゴイルが持っている」
「いいもの、ですか?」
「来て」
グレースに案内されてファティマがブルー基地を進む。
「少佐」
「どう、あなたの可愛い子供たちは?」
「元気にしている」
そういってガーゴイルが見せたのは犬だ。それも軍用犬。
「犬を飼っていたのですか?」
「ああ。俺の趣味も兼ねてな。こいつらは軍用犬としての訓練を受けており、不審人物を見つけるのはトレーサードッグより優秀だ」
「なるほど」
ガーゴイルはジャーマンシェパードを品種改良したものを始めとする軍用に向いた犬を5頭リードで繋いでおり、それらの犬は行儀よくお座りしていた。
「しかし、通常軍用犬はハンドラーが1頭ずつ世話するのでは?」
「こいつらは新しい訓練を受けている。群れで狩りをする訓練だ。こいつらは下手な軍人よりも連係プレイが上手い」
「それは凄い」
「まあ、頼りにしておけ」
ガーゴイルはファティマにそう言い、ウィッチハント部隊を迎撃する準備を進めた。
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