報復//確認殺害
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──報復//確認殺害
ファティマは自分たちを外から狙うバルチャー攻撃機を狙う。
「落ちろ!」
ファティマは“赤竜”を放ち、バルチャー攻撃機4機を一瞬で仕留めた。
「オーケーです! 敵機撃墜!」
「では、進みましょう。敵の空中機動部隊が殴り込んで来る前に」
グレースの指示でファティマたちがインディア・フォー作戦基地を殺害目標ダニエル・リステルのいる場所に向けて突き進んでいく。
「クソ。少佐、敵の空中機動部隊が展開した。大部隊だぞ」
「蹴散らして進む」
「了解。やろう」
MAGの空中機動部隊がファストロープ降下でインディア・フォー作戦基地の基地施設内部に展開した。ヘカトンケイル強襲重装殻を含めた重装部隊でファティマたちの行く手を遮るように展開している。
「通信は今なお不通。敵味方識別に細心の注意を払いながら交戦せよ」
「了解」
MAGの空中機動部隊はサマエルによって制御権限が上書きされた警備システムにもアクセスできず、ドローンも使えず、歩兵が慎重に前方を歩きながらファティマたちを目指して進んでいた。
「私が一気に片づけていいですか?」
「そうしてくれるなら助かる」
「では!」
ファティマはグレースの許可を得て前方に出ると曲がり角からスタングレネードを投擲してMAGの空中機動部隊の動きを封じることを試みる。
「クソ! スタングレネードだ!」
「接敵!」
MAGの空中機動部隊が戦闘態勢に入る前にファティマがスローモーデバイスを完全に起動させて曲がり角から飛び出した。
「一気にやります!」
ファティマのエネルギーシールドにクラウンシールドが融合して周辺の空気が帯電し、膨大なエネルギーが凝集する。
「シールドインパクト!」
そして熱と衝撃波がMAGの空中機動部隊を薙ぎ払った。
「クリア!」
「相変わらずド派手だな」
ファティマが宣言し、ガーゴイルが呆れたようにそう言う。
「グッジョブ、ファティマ。もたついている暇はないから急いで」
グレースは全く動じずに前進を指示し続け、ファティマたちは着実にダニエル・リステルのいる会議室に迫った。
「お姉さん。ダニエル・リステルが逃げようとしてる!」
「追いかけましょう!」
サマエルの報告にファティマが急ぐ。
「いたぞ。ダニエル・リステルだ。生体認証で確認」
そこで投影型熱光学迷彩で先行していたエキドナがそう報告。
ダニエル・リステルはMAGの護衛部隊に守られてインディア・フォー作戦基地の屋上を目指して逃げていた。
「そう言えば聞いていませんでしたが、殺害はどのように?」
「バーロウ大佐はこう言っている。『裏で出回っているどぎついスナッフフィルムが幼稚園児のお遊戯会に見えるぐらい派手に殺せ』って」
「わお。そいつは危なそうです」
今回はただダニエル・リステルを殺せばいいわけではない。
フォー・ホースメンに手出しすれば痛い目に遭うということを示すために報復として殺害しなければならないのだ。当然ながら殺し方にもこだわるべきだろう。
「だからすぐには殺さないようにして。まずは生け捕り」
「了解」
ファティマたちは後ろから“赤竜”や火力を叩き込んでダニエル・リステルを殺すわけにはいかず、応戦するMA部隊を排除しながらの追跡となった。
屋上のヘリポートに向けて逃げるダニエル・リステルをファティマたちが追う。
「お姉さん! 屋上にヘリポートに輸送機が来たよ! でも、基地の無人警備システムを使えば破壊できるかも……!」
「では、やってください! お願いします、サマエルちゃん!」
「分かった!」
そこでサマエルがインディア・フォー作戦基地の無人警備システムを乗っ取り、防空コンプレックスを起動させると、ダニエル・リステルを脱出させるためのMAGのハミングバード汎用輸送機を撃墜した。
「リムジンが友軍の攻撃を受け、撃墜されました!」
「何だと!?」
こうなってしまうともはやダニエル・リステルに逃げ場はない。
MAGの護衛部隊はガーゴイルたちに殺害されて行き、ついに壊滅。
「ダニエル・リステル。もう逃げ場はないわよ」
グレースがダニエル・リステルと彼に付いていたMAGの女性将校を前に宣言した。
「ま、待て! 金なら払ってやる! いくらでも! だから……」
「あいにくお金には困ってないの。ガーゴイル、任せたわ。ウォッチャーと上手くやって。それから映像は撮影しておいてね。ここに残していくから」
ダニエル・リステルが命乞いをするのにグレースがガーゴイルに淡々と命じる。
「来い」
「止めろ! 助けてくれ!」
ガーゴイルとウォッチャーに連行されてダニエル・リステルが部屋の中に消え、それから悲鳴が何度も上がる。拷問を受けているのだ。
「こっちの方はどうするので?」
「こいつはMAGの情報将校だ。いろいろと知ってそうじゃないか」
「ああ。では、こっちも?」
「あたしとしてはそうしたいけど、どうする、少佐?」
ファティマの言葉にエキドナがグレースにそう尋ねた。
「もちろん尋問する。私とエキドナでやるから、ファティマとサマエルはMAGの増援に警戒しておいて。いい?」
「了解です」
今度はグレースとエキドナが女性将校を連行し、また悲鳴が響く。
「いやはや。戦争というのは恐ろしいものですね」
「そうだね」
ファティマたちは悲鳴を聞きながらMAGが殴り込んでこないかを警戒する。
「おっと。1階から歩兵部隊が侵攻してきましたよ。結構大変な防衛戦になりそうです。サマエルちゃん、無人警備システムで攻撃できませんか?」
「やってみるよ」
今やインディア・フォー作戦基地はサマエルによって掌握されている。
基地施設の無人警備システムがMAGに牙を剥き、リモートタレットや警備ボットが猛烈な射撃を浴びせる。MAGはそれによってインディア・フォー作戦基地内をなかなか進めなくなった。
「お姉さん。またパワード・リフト輸送機が近づいているよ。何だろう……」
「増援でしょうか? しかし、いいタイミングかもしれません」
「いいタイミングなの?」
「ええ」
ファティマがそう不敵に笑った時、グレースたちが戻って来た。
「終わった。ここにはもう用事はないけど不味い知らせがある」
「何でしょう?」
「潜入部隊は私たちの脱出を支援できなくなったと連絡してきた。こちらは独力で脱出しなければならないというわけ」
「ああ。それはまた。言っておくとですね。1階は既にMAGの大部隊がいますよ」
「分かってる」
ファティマたちは基地施設の屋上近くにいて、それでいて地階は既にMAGによって封鎖された。逃げ場はない。
「ですが、いい知らせがあります。こちらにパワード・リフト輸送機が向かっています。これをいただきましょう」
「そうしましょう。屋上へ」
ファティマの提案でグレースたちが屋上に向かう。
『スワロー・ゼロ・ワンよりインディア・フォー作戦基地。繰り返す、スワロー・ゼロ・ワンよりインディア・フォー作戦基地。応答せよ、どうぞ!』
通信が通じない状態でハミングバード汎用輸送機がインディア・フォー作戦基地に着陸しようとしていた。
『こちらインディア・フォー作戦基地。そのまま着陸せよ』
『スワロー・ゼロ・ワン、了解』
ファティマたちが通信を偽装してハミングバード汎用輸送機を着陸させようとする。偽装に気づかず、ハミングバード汎用輸送機は降下を始めた。
「来ましたよ」
「頂戴しましょう」
ハミングバード汎用輸送機が着陸したと同時にファティマたちが駆け寄る。
「おい。何だお前たちは──」
「ヘイ。いただきますよっと」
ファティマはエネルギーブレードでMAGのパイロットを仕留め、すぐさまハミングバード汎用輸送機を乗っ取った。
「識別IDはMAGのままです。とんずらしましょう!」
「ええ」
そして、ファティマたちはインディア・フォー作戦基地を脱出した。
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