報復//インディア・フォー作戦基地
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──報復//インディア・フォー作戦基地
「各自暗視装置使用」
「了解」
バーゲスト・アサルトの作戦要員たちが使用するタクティカルゴーグルには暗視装置の機能も組み込まれている。
「ファティマ。ここからはあなたがポイントマンをやって。私が援護する」
「了解です」
遭遇戦となった場合のことを考え、指揮官であるグレースは下がり、もっとも戦闘力があるファティマが先頭のポイントマンを務めることになった。
ファティマとサマエルが安全を確認し、その背後からグレースたちが続く。
「おっと。重度のテリオン粒子汚染を検知です。避けて通りましょう」
ファティマたちはテリオン粒子汚染を検知する観測装置でホットスポットを避けて前進していった。
「薬品の汚染もありますね。いろいろと垂れ流したみたいで」
「ファティマ。問題はない?」
「いいえ。化学兵器の類がちゃんと安全に保管されず、漏洩した形跡があります。化学兵器への防護は十分ですか?」
「短時間なら大丈夫」
「では、急ぎましょう」
ファティマたちは足早にトンネルを駆け抜ける。
そして、トンネルを駆け抜けた先に出口が見えた。
「ここですね。しかし、ちょっと情報と違うみたいですよ」
ファティマはそう言って本来ならばインディア・フォー作戦基地に繋がっているはずの扉を指さす。扉は完全に溶接されており、開けなくなっていた。
「情報と違う。けど、ここを抜けないとインディア・フォー作戦基地には入れない」
「爆破しますか?」
「この位置で爆破というのはチャイムを鳴らして入るようなものね」
爆破が必要だが爆発の際の音でインディア・フォー作戦基地のMAG警備部隊が侵入に気づき、ファティマたちを排除しようとするだろう。
「他に方法はないのだろう。やろう」
「MAGの規模は聞いてたでしょう。本気?」
「奇襲にはなる。それに連中の通信を妨害すれば応戦しようとするMAGの攪乱は可能だ。だろう、ファティマ?」
ガーゴイルはそこでファティマにそう尋ねた。
「サマエルちゃん。やれますか?」
「うん。やれるよ。妨害できる」
ファティマが尋ねサマエルが力強く頷いた。
「分かった。やりましょう。ただし、どこまでも素早くやる。そのために事前の情報の再確認をする」
グレースが頷き、目標であるダニエル・リステルの情報を示す。
「この男は基地施設内で現地の司令官に会っている。場所はこの会議室。私たちは他は無視してここに直進する。立ち塞がる全ての障害を排除して。分かった?」
「了解です」
「じゃあ、始めましょう。いい? 仕事は成功させる。そして、全員で生きて帰る。それだけは絶対条件」
「もちろんです」
グレースが最後の確認を行い、ガーゴイルが戦闘工兵用の爆薬をセット。
「3カウント!」
ガーゴイルがカウントを始め、ファティマたちは退避。
3秒の後に開戦を知らせるゴングが鳴り響いた。
「サマエルちゃん。通信妨害を!」
「分かったよ!」
サマエルがすぐさまMAGの通信を妨害。
「ゴー!」
グレースが指示を出し、すぐさまガーゴイルたちが爆破した穴からインディア・フォー作戦基地内に侵入。
トンネルが繋がっていたのは地下のバンカーであり、そこにMAGの兵士はいない。だが、インディア・フォー作戦基地にいるMAGは間違いなく襲撃に気づいている。
「ここからは時間との勝負。急いで!」
「了解ですよ」
グレースが命じ、ファティマがクラウンシールドを展開しながらバンカーの扉を開く。扉が開くと同時にガーゴイルたちが飛び込む。
「接敵! MAGだ!」
「射撃自由。やって」
「了解!」
前方にMAGの軽装備の警備部隊が姿を見せるのにガーゴイルたちはサプレッサーを装着させたMTAR-89自動小銃で銃撃。空中炸裂弾が容赦なく使用され、MAGのコントラクターが撃破される。
「行け、ウォッチャー! 援護する!」
「了解。任せておけ」
ガーゴイルがMAG部隊を銃撃しながら叫び、ウォッチャーがエネルギーシールドを展開させて滑り込むように前方にある遮蔽物まで進出。
「次はエキドナ、お前だ! 行け!」
「あいよ」
ウォッチャーが前方で、ガーゴイルが後方で援護し、エキドナが前方へ。
「援護しますよ、ガーゴイルさん。前進してください」
「ああ。頼むぞ、ファティマ」
ガーゴイルはファティマが援護して前方へ。
「侵入者だ! 早く増援を呼べ!」
「無線が繋がりません! 一切不通!」
「馬鹿な!」
交戦中のMAGは援軍を呼ぼうとするがサマエルの通信妨害を受けている。
「一気に抜けましょう。“赤竜”!」
ファティマがそこで赤いエネルギーブレード“赤竜”を展開してMAGに襲い掛かる。MAGはアーマードスーツも展開させてきたがそれも容赦なく撃破された。
「いいね、ファティマ。このまま進みましょう。ダニエル・リステルは10階上のフロア。ヘリポートも近いからすぐにいかないと逃げられる」
「ええ。逃がしませんよ」
グレースが言い、ファティマが頷く。
「お姉さん。基地の警備システムにアクセスできたよ。ダニエル・リステルの現在地も分かった。そっちに送るね……」
サマエルが入手したインディア・フォー作戦基地の警備システムによって把握されているダニエル・リステルの位置をファティマのZEUSに送信。
「オーケーです。敵はまだ逃げていません。とっ捕まえましょう!」
「うん」
ファティマたちはダニエル・リステルがいる会議室を目指して突き進む。
「通信未だに不通です!」
「じゃあ伝令を走らせろ! 敵襲を知らせろ!」
MAG部隊は異常に気付いた部隊が集まっているのみで、組織的な抵抗には程遠い。だが、彼らが態勢を整えるのは時間の問題だろう。
ファティマたちは銃撃し、斬撃し、爆破し、インディア・フォー作戦基地を進む。
「気を付けて。外に展開させていた偵察妖精がやられた。最後の映像ではMAGの空中機動部隊の接近を探知している」
「おっと。敵の騎兵隊というわけですか。面倒ですね」
「どうにかしましょう」
ファティマたちはMAGの空中機動部隊が接近する中、インディア・フォー作戦基地の内部をダニエル・リステルの居場所を目指した。
「お姉さん! 外に敵の飛行機!」
「警戒してください! 爆撃の恐れがあります!」
ファティマがそう言ってクラウンシールドを展開させた直後、インディア・フォー作戦基地の外からバルチャー攻撃機4機が一斉に口径30ミリ機関砲と口径70ミリロケット弾を叩き込んできた。
爆風が廊下に吹き荒れ、ファティマたちはクラウンシールドとエネルギーシールドによってそれぞれの身を守る。
「ファティマ。敵機を落として」
「了解です」
ファティマは攻撃によって穿たれた穴からバルチャー攻撃機を把握する。バルチャー攻撃機は周辺を旋回しながら次の攻撃の機会を狙っていた。
「やります!」
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