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大混乱//友軍との合流

……………………


 ──大混乱//友軍との合流



 ジェリコの砲兵陣地を襲撃したファティマたち。


 シールドインパクトによってジェリコの砲兵陣地は大損害を出し、穿たれたクレーターに榴弾砲や自走多連装ロケット砲が沈んだ。


「クソ! なんてことだ! 司令部に連絡は!?」


「通信が通じません! 強力なジャミングを受けています!」


「グリゴリ戦線にそんなことができるはずがないだろう!?」


 ジェリコにとってグリゴリ戦線は明確に格下の相手だった。


 航空優勢を奪われることはないし、電子戦においては圧倒的に自分たちが有利。この任務は格下で装備もまともにないテロリストを掃討するだけの作戦であったのだ。


 それがここにきて後方の砲兵陣地が襲撃され、さらには通信が妨害されている。


 起きるはずのないことが起きているのにジェリコの部隊はただただ混乱するのみ。


「クラウディア。そこの爆薬を使いましょう。信管をこちらへ!」


「はい、シシーリア様!」


 ファティマが南側からジェリコの砲兵を攪乱するのにシシーリアとインナーサークルの構成員であるクラウディアは手薄になった北から侵入し、砲兵陣地の弾薬庫に爆薬を設置し始めている。


「爆破準備完了です。退避してください!」


 シシーリアたちは爆薬を弾薬庫に仕掛けると戦場を離脱。


「ファティマさん。爆薬の設置が完了しました。離脱してください」


『了解です!』


 ファティマもすぐさま戦場となった砲兵陣地を脱出した。


「爆破」


 シシーリアが無線信号で信管を起動させ爆破を実施する。


 弾薬庫が吹き飛び、砲兵陣地一帯に衝撃波が生じて全てが薙ぎ倒された。火砲もジェリコのコントラクターも司令部の将校たちも全てが吹き飛ばされたのだ。


「上手くいきましたね」


「ええ。友軍をこのような形で支援できるとは思っても見ませんでした」


 ファティマが合流してそう言い、シシーリアが満足げに頷く。


「しかし、これで敵も本格的に私たちを追い始めるはずです。そろそろ友軍と通信できないか試みていいのでは?」


「試してみます。待っていてください」


 シシーリアは友軍との連絡を試みる。


「こちらシシーリア・ティンダル。登録コールサインはホテル・ゼロ・ワン。応答可能な部隊は応答してください」


 まともな通信装備はなくZEUS頼りの通信であるため通信範囲は限定されていたが、それでもシシーリアは通信を続けた。


『こちらディアハンター・ゼロ・ワン! シシーリア様ですか!?』


「そうです。そちらの位置を伝えてもらえますか? こちらは敵地で孤立しています。支援が必要です」


『了解。我々が迎えに参ります。場所は?』


「今から合流したい座標を送りますので確認してください」


 シシーリアは自分たちの現在地から僅かに離れた地点を指定する。


「合流できそうですか?」


「ジェリコの罠でなければ。敵地で行動している我々の部隊については司令部も完全に把握していません。どれが寝返っているのかも」


「なるほど。まだおうちに帰るのは遠そうです」


「ここから僅かに離れた地点を合流地点として指定しました。罠でなければそこに来るのは我々の仲間ですが、罠ならば」


「皆殺しにしましょう。まだまだいけますよ」


 ファティマはそう不敵に笑った。


「では、お願いします。クラウディア、あなたは先行して合流地点を見渡せる場所へ。合流地点には私が向かいます」


「危険です、シシーリア様!」


「ええ。危険だからこそ私が引き受けるのです」


 クラウディアが慌てるのにシシーリアがそう返す。


「それに重要な目標であれば相手も尻尾を出すでしょう。大丈夫です。あなたにはファティマさんを援護して私を守ってもらいます。任せましたよ、クラウディア」


「分かりました。全力を尽くします!」


 シシーリアにそう言われてクラウディアが意気込む。


「私はどうしますか?」


「ファティマさんは私の後から。クラウディアと連携してください。相手が敵の場合は、ですが」


「了解」


 シシーリアの指示にファティマが頷く。


「では、行きましょう」


 ファティマたちはそれから合流地点とされた地点に向かう。


 予定通りクラウディアが先行して状況を確認し、それからシシーリアとファティマ、サマエルが向かう。


「お姉さん。ジェリコの通信はないよ」


「罠の可能性は低そうですが、はてさて」


 ファティマはいつでもシシーリアとサマエルを守れるように準備している。彼女たちを死なせてしまえば事実上仕事(ビズ)は失敗だ。


「そろそろ予定地点です。警戒を」


 シシーリアから鋭く指示が飛び、ファティマたちが備える。


「シシーリア様!」


 合流地点には先に人がいた。


 数台のテクニカルとボロボロのCR-47自動小銃で武装したグリゴリ戦線の兵士たちだ。間違いなくジェリコやゲヘナ軍政府の部隊ではない。


「会えて嬉しく思います」


「シシーリア様。お会いできて光栄です。私はディアハンター小隊の指揮官を務めています。それでこれからどのように行動を?」


「戦況は分かりますか? 通信機器は?」


「あります。友軍は航空攻撃と砲撃から解放されてジェリコの地上軍に対抗している最中です。我々はその支援のために後方の兵站線を荒らしまわっています!」


 ディアハンター小隊というテクニカルを主体とするグリゴリ戦線のゲリラ戦部隊の指揮官が誇らしげにそう語る。


「素晴らしい勝利への貢献です。あなた方の戦いを無駄にはしません。ですので、我々が友軍本隊と合流するのを助けていただきたい。そうすれば我々は一斉にゲヘナ軍政府の犬であるジェリコに反撃します」


「それは凄い! 是非ともやらせてください!」


「では、まずは友軍との通信を確立しましょう。通信機を」


「はい、シシーリア様!」


 ファティマはその様子を見てシシーリアのカリスマというのを垣間見た気がした。


「友軍と通信が確立できました。ジェリコと交戦中だそうで支援を求めています。皆さん、まだまだやれますか?」


「もちろんです」


「では、友軍を支援してジェリコを追い払いましょう」


 シシーリアがファティマたちにそう言い、テクニカルの荷台に乗り込んだ。ファティマとクラウディアもそれに続く。


「出せ! 行くぞ! シシーリア様とともに勝利を!」


「了解!」


 ディアハンター小隊は出撃。


 今現在ジェリコは航空支援と砲兵支援の両方を喪失している。装甲戦力が無理やり前に出ようとしているものの、それをグリゴリ戦線のゲリラ戦部隊が阻止している。


「我々は敵の後方を突きます。この地点に進出を」


「了解しました。お任せください!」


 ディアハンター小隊のテクニカルにはHMG-50重機関銃の他に無反動砲や対空機関砲が装備されており、機動力と火力の両方があった。装甲はないが、市街地で上手く立ち回ればジェリコの装甲部隊にも一泡ふかせることはできるだろう。


 少なくともファティマはそう分析している。


「シシーリアさん。私はあなたの生存を第一に考えます。よろしいですね?」


「ええ。お願いしますよ、ファティマさん」


 ファティマが、暗に最悪の場合はサマエルとシシーリアを除く他のメンバーを見捨てると言うのに、シシーリアは険しい表情を浮かべながらも意志をはっきりとさせた。


「まもなく敵装甲部隊の後方です! 戦闘準備を!」


「備えろ! 派手に暴れるぞ! グリゴリ戦線の勝利のために!」


「勝利のために!」


 そしてディアハンター小隊が突入を開始。


……………………

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