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ギフトの先にあるもの  作者: 和風サラダ揚げ
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商人編2

 朝食をとっている時、親父にふと話を振ってみた。


「店でなにか手伝えることない?」


 またいつも通り「色々見てこい」と言われると思っていたが、今回は違った。


「――将来どうなりたいんだ?」

「自分の店をもちたい」


 親父は腕を組み少し考えた素振りをみせた。


「なら、将来の自分の客をみてこい」

「将来の自分の客?」

「どういった人が自分の客になるのかをみておくと、将来役に立つことがあるかもしれん」


 俺は親父と同じように腕を組みながら考えを巡らせた。


「それはいいわね」


 いつの間にか話を聞いていたミルカが俺の後ろに立っていた。親父をみるとニヤっとした表情をしていた。


「思い立ったら、すぐ行動!」


 ミルカは俺の手首をつかみ、外へ飛び出した。俺はミルカに引っ張られながらミルカに尋ねる。


「どこに向かってるんだ」

「どこって冒険者ギルドに決まってるじゃない」


 冒険者へ仕事の斡旋を行っている組織の総称が冒険者ギルド。冒険者の成り立ちは元々ダンジョン探索など新しい発見をする人たちだったが、今では街の外の獣退治なども仕事としている。そういった人達は野営で一般的な魔道具を使うし、一般的なポーションも多く服用する。そして、親父の店も冒険者ギルドからは小さな魔石の一部を卸してもらっている。街で働く人たちも客層ではあるが、冒険者の人たちも大いに客層といえた。


「けど、うまくいくかな」


 不安に思う俺とは正反対にミルカは自信満々に答える。

 

「大丈夫よ。ちょっと一緒に同行させてもらうだけよ。年齢の近い人を探せば危険も少ないわ」


 確かにミルカの意見も一理ある。俺たちは今年で十三歳になる。冒険者ギルドは十二歳から所属できる為、年齢の近い冒険者なら、よっぽど無茶をしなければ、近隣で仕事をする可能性が高い。

 少し明るい表情をミルカに向けると、ミルカは俺の手首を更に強く引っ張りながら冒険者ギルドの中へ入っていく。

 ミルカは辺りを見渡し、何かを見定めるように目を細めた。


「あのパーティにしましょ」


 ミルカの視線の先には確かに俺らと同じくらいの年齢の男女の2人パーティが立ち話をしていた。


「どうかされましたか?」


 ミルカは店の接客をしていると思わせるような見事なファーストコンタクトを男冒険者へおこなっていた。

 女冒険者が男冒険者になにか耳打ちをしてから、男冒険者が答える。


「いや、ポーションが心もとないって話していたところなんだよ」

「それなら、私たちのポーション買わない?安くするよ?」

「おぉ、それは助かる。代金はいくらだい?」


 ミルカはニコっと営業スマイルをしながら、俺の方をみた後、冒険者へ向きなおした。


「ポーション二本で、私たち二人を同行させてくれない?」

「二本も貰えるなら、いいけど……君ら武器も何も持ってないじゃないか?そんな状態じゃ、狩りもできないんじゃないか?そこは自分たちでなんとかしてくれよ。」

「わかったわ」


 ミルカは「上手くいったでしょ」と言いたげな表情を俺に向けるが、俺は更に不安になった。この冒険者は完全に同業者だと思っているのではないか?

 

「正門でちょっと待っていてやるから、準備してこいよ。昼過ぎになるから、食える物も持ってこいよ。遅かったら置いていくからな」


 高圧的な態度の割に気を聞かせてくれるいい人の印象を受ける。ミルカは人を見る目があるのかもしれないと感心すると同時に、なんとかなりそうな気がしてきた。

 

 冒険者ギルドを出るタイミングで女冒険者が俺とミルカに小声で「頼られて、嬉しかったんやで」と言った後、笑顔で男冒険者の背中を叩いていた。


 ――――


 俺らは急いで店に戻った。店では親父と隣の奥さんが接客をしていた。親父は俺をみるなり、近づいてきた。


「どうだ?なにか収穫はあったか?」

「親父、冒険者と今日一日狩りいってくる」


 親父は驚いた表情をしたが、すぐにいつもの表情に戻り「ちょっと待っとけ」と手で静止した。親父は奥へ入るなり、なにやらガチャガチャと音を鳴らし、すぐに戻ってきた。


「気を付けて行ってこいよ。あと、市民証は絶対になくすなよ」


 親父は鞄と短めの剣を俺とミルカに渡した後、カウンターへ戻っていった。

 店の外からカウンターを見ると、心配そうな表情をする親父がみえた。


 ――――


 正門へいくと、あの二人の冒険者が待ってくれていた。


「おぉ、遅かったな。いいもん持ってるじゃねぇか。それじゃ、いこうぜ」


 男冒険者の表情をよくよく見ると嬉しそうなのが、なんとなく俺でも分かった気がした。


 ――――


 冒険者二人は談笑しながら、街道を進んでいく。二人の様子をみたところ、街道は比較的安全なようだ。冒険者二人は男冒険者が剣と盾を身に着け、女冒険者は杖を持ってローブを着込んでいる。なんとなく、これだけで戦闘スタイルが分かる気がした。年齢はそんなに変わらないと思っていたが、仕草がとても大人っぽく感じた。ミルカがなにか話しかけてくれていたが、緊張してなのか耳に入ってこなかった。

 

 街道を一時間ほど歩いていくと途中で森に入るルートが出てきた。


「今日はこの先にある狼の群れを、数匹間引く。奥までいったら囲まれるから注意しろよ」


 俺の中で緊張が更に高まる音が聞こえた。


 ――――


 森へ入り十分くらい進むと、女冒険者がなにかの呪文を詠唱すると同時に男冒険者が武器を構えた。その直後、なんの魔法かは分からなかったが、男冒険者の動きが速くなったように見えた。男冒険者は木陰から飛び出してきた狼を一振りで首を両断した。初めて見る光景のはずが、なぜか自分でもできそうな気がした。冒険者二人は狩った狼の肉をナイフ切り出し、皮で包んでいた。


 そんな同じような光景を二度繰り返した時、男冒険者が俺らへ話しかけてきた。


「お前ら何も狩ってないけど、大丈夫なのか?」

「大丈夫、今日は見学なので。それに私たちは商人だから」


 緊張している俺に代わり、ミルカが答える。二人の冒険者は驚いた表情をみせてから、一度街道に戻って昼食をとろうと提案してくれた。


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