折り紙のメダル
幼稚園だか、保育園だか、小さい頃に、折り紙で作られたメダルを貰ったような気がする。
セロハンテープでリボンが貼りつけられていて、オリンピック選手が金メダルを貰うみたいに、友達や先生が首に掛けてくれた気がする。
あれは、何で貰ったんだっけな。
自分がどんな理由で貰ったのかは流石に覚えてないけど、確かその時は友達もみんな一緒に貰っていたはずだ。
先生がメダルの折り方を教えてくれて、友達みんなで、今使ったら絶対に低すぎる小さな机で、一生懸命つくった。
男の子も女の子も、気の強い子は、自分の方がうまい、この子のは下手って言って、下手って言われた子は泣いちゃったりして。
でもたぶん、きっと、その時に自分の方がうまいって自信いっぱいだった子のメダルも、下手だって言われて大泣きしていた子のメダルも、大人目線ではどっちもそれほど上手くはない出来だった。
そしてその後、先生に言われて、みんなで、誰かが誰かに、適当な理由をつけて、作ったメダルをあげる、っていう、そんな授業だったと思う。
いつも一緒に遊んでくれる、とか、遊具で遊ぶ順番を譲ってくれた、とか、何か忘れ物をした時に貸してくれた、とか。
別にオリンピックで優勝したとかじゃない、子供が思い付く、折り紙のメダルによく似合う、本当に小さな理由。
当然、下手って言って友達を泣かせた子は、下手って言われた子には貰えなかったし、逆に、普段からみんなに優しくしていた子は、一人で何枚も貰っていた。
もちろん、そうすると、友達の誰からも貰えない子が出てくるけど、流石にそこは先生もちゃんと考えていて、先生が全員、ひとりひとりに違う理由でメダルを渡して、一枚も貰えない子はいなかった。
今思い出そうとしても、自分が何枚貰ったのかは覚えてない。
覚えてないってことは、もしかすると、先生に貰った一枚だけだったのかもしれない。
まぁ、何枚だったにせよ、どんな理由がついていたにせよ、今そのメダルは手元に残ってない。
親がそういったものまで何でも保存しておく人なら、今でも家のどこかに眠っているかもしれないし、もしかしたら自分も探せば出てくるのかもしれない。
けれど、大人になった今でも自分の部屋に飾ってます、とか、たまに首からかけて過ごしています、何て人は、まぁ、いないんじゃないかな。
小学校に上がって何かの賞を受賞した表彰状とか、中学や高校の大会で貰ったトロフィーとか、それこそ金のメダルとか、そういったものなら、飾ってあるかもしれないけど。
だって、世間的目線としても、金銭的価値としても、今さら何の自慢にもならない、一円ですら売れない、ただの折り紙だし。
それも、別に当時の折り紙のプロが作ったわけでもない、今も残っていたとしたら時間の経過と共にボロボロになっているであろう折り紙。
大人になった今なら、ちょっと本気を出して頑張れば、きっと、そんな素人の折り紙なんかよりよっぽど価値のある、簡単な資格とか賞とかを狙えてしまうと思う。
そんな、本当に価値のない、記憶の片隅に残るか残らないかレベルの、何でもない、ただの紙。
でも、今の自分は。
名前も顔も思い出せない人が殆どとなってしまっている、当時の友達や先生に。
まだ、折り紙のメダルを貰えるような人間でいられているだろうか。