02話 依頼
声のしたその方向を向くと激しい光が襲い思わず目を瞑った。
目を開けるとそこは明らかに数秒前までいた教室ではなかった。あたりは黒く染まっており前方に眩い光があるがそれ以外なにもない。光の指す方向には1人?と表現していいのかわからないが1人の天使らしきものが立っていた。
〘こんにちは、世界を救う英雄の皆さん〙
なんとも掴みどころのない声質だ。透き通っていて響く声なのだが作られた声という感じがするのは気のせいだろうか。
〘皆さんにはこれからある世界へと転移していただきそこで魔王を打ち倒してもらいます、ですので・・・〙
小説やゲームである異世界転移?
そんなこと現実に存在するのか?
魔王?
なんだそれ?
などと考えている時、
「ちょっと待て!何を言ってるのか、全然わからん!」
と、翔月くんが皆の思いを代弁してくれた。非常にありがたかった。
彼が先陣を切ってくれたおかげで他の人からも「どういうことだ!」 「元の場所に返してよ!」 「せめて説明を!」 「なに黙ってやがる!」などと疑問をぶつける声が上がった。
〘あなたたちは勇者が魔王を打ち倒す物語を聞いたことがございませんか?人間に害を成す魔族の王である魔王を勇者一行が打ち倒し、英雄として崇められる物語を。その勇者一行としてあなた達に魔王を打ち倒していただきたいのです。もちろん、魔王を打ち倒していただけたらそれに見合う報酬、さらに希望する者は元の世界へ返すことを約束いたしましょう。〙
「その報酬ってなんですか?」
なんとなく聞いてみた。よくある物語ならなんでも好きなことを叶えるというものだが...。
〘なんでもでございます。魔王を討伐後以降のあなた方の人生において願うものはなんでも叶えて差し上げます。〙
なるほど、思ってたよりスケールが大きいらしい。そんな上手い話などないと思うが・・・。余生全て?たとえ魔王討伐の報酬といえどもそんなことをしたら下手すると世界が崩壊するかもしれない。
それになんでも叶えるような力があるのならばなぜ自分で倒そうとしないんだ?
そしてこの人は誰なんだ?
〘すみません、自己紹介をまだ行っていませんでした。〙
〘私は神盤世界11柱が1人、〈シトリー〉と申す者でございます。〙
〘なぜ私が討伐に行かないのかとあなたはお考えられましたね?ごもっともなお考えだと思います。私達神は世界の統治を行っております。しかし、その中で魔族に属する者から生まれる突然変異、それを総称して魔王と呼ばれます。この突然変異は世界の理から外れ、私達神からの干渉を受け付けない存在です。よって、排除しようにも手が届かず、放っておけば世界を滅ぼし、他の世界へ影響を与える存在となることもあるのです。なのでその前に魔王を倒せる存在に魔王を討伐していただく必要があるのです。そしてあなた達は魔王を討伐できると判断された選ばれた存在です。そのためあなた方には魔王のいる世界に転移していただき討伐をお願いしたいのです。〙
「言いたいことはある程度わかりました。ですが平和な日本で生まれ育った俺達は武術の心得のあるものは少数ですし魔王討伐には力不足に思えますが?」
翔月くんの疑問はごもっともだろう。この人の言い方では僕達が住んでいた世界以外からも人も呼べるみたいだし、戦闘に特化してるわけでも知ってるわけでもない僕達になぜ白羽の矢が立ったのだろうか?
〘それは、あなた方に眠る素質のためです。この後あなた方には職業が与えられ、スキルを好きなように選んでいただきます。その負荷に耐えることができ、使いこなす素質を他の全ての人間より持っているのがあなた方です。そのためあなた方が選ばれているのです。〙
「理由はわかりました。ですがここで俺達が断ったらどうなるんです?今の世界で僕達がどうなってるのか心配ですし全員が納得するのは不可能です!」
〘心配事はわかりました、ですがそれは無用な心配と言えるでしょう。現在あの世界の時間は止まっています。あなた達が役割を果たし終え戻る時、再び時間は流れ始めます。さらにここにいるのはあなた達の魂のようなものです。肉体自体は残っていますので転移した後の世界で本当の意味で死ぬことはありません。転移後の世界での肉体はあくまで仮初めですのでいくら肉体が壊れようと再生します。また、その肉体を鍛えたりすることはもちろん可能です。〙
「では俺達は拒否権なく行かなければいけないと?」
〘そういうことになります〙
それを聞いて各自頭を悩ませる。
――この神の言ってることは本当に信じられるのだろうか。
――信じるとして、ほんとに魔王討伐などできるのか
――他の選択肢は無いのだろうか
「わかりました、引き受けます」
またもや翔月が先陣を切る。
これが決め手となったのか「なら俺も」「翔月くんが行くなら...」などと決心がついた人が現れ始める。
――僕は――
―もし魔王を倒した一員になればずっと抱えている劣等感を拭えるだろうか
―少しは自分に自身を持てるようになるのだろうか
そう考える内に口が勝手に動いていた
「僕も、行きます」
結局クラスの全員が行くことを決心した。
しかし後になって思い知ることとなる、
――これが全ての地獄の始まりであったと――
下手くそな文章ですいません。