表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の影  作者: 星屑の猫
2/3

01話 こんにちは

 

「おっはよ!綾斗(あやと)!」


「おはよう、翔月(かける)くん」


「相変わらず早いねぇ。朝練あるわけじゃないんだろ?毎日毎日朝練組の俺らと同じ時間に登校するなんてさ」


「朝の学校は静かだしね、本を読むのには最適な環境なんだ」


「ほっっっんと読書が好きだよな、お前を誘いたいっていう運動部は山程あるんだぜ?」


「あはは、それはありがたいけどお断りさせてもらうよ。バイトしてお金を稼がなきゃいけないからね」


「普通の高校生はお小遣い稼ぎするくらいなんだが綾斗ほどとなるとなぁ」


「大学の費用を今の状態で親だけに負担させるわけにはいかないからね、(しずく)もいるんだし」


「今中2だっけ?いいなぁ、俺もかわいい妹が欲しかったよ」


 そんな他愛もない話をしながら歩いていたらいつの間にか学校に着いていたらしい。


「おい翔月!さっさと整備手伝え!」


「おっと、見つかっちまった」


「そんじゃ俺は行くよ、また後で教室でな〜」


 彼はそう言って小走りに去っていった。時々彼のように部活を本気で取り組んでいる生徒たちを見ると羨ましいと思うこともある。もし、裕福な家庭に生まれてやりたいことを金銭的な面などで制限されずにできていたら?

 もしそうだとしたら、僕はこうも人を羨み、劣等感を感じるような人間にはなっていないだろうとつくづく思う。


 朝の学校は快適だ。もう9月も下旬なこともあって気温も落ち着いてきて学校の廊下のひんやりとした空気がとても心地良い。それに朝早いため教室には誰もおらず静かでありながらどこか落ち着く雰囲気を作り出している。


 席に着き図書室で借りている本を取り出す。これは翔月くんにオススメしてもらったものだがなかなかに面白い。魔王と異世界に転移してしまった勇者の戦いのファンタジー作品だが、王道の物語でありながら勇者が全てを圧倒していくというわけではなく、基本強敵との戦いでは勇者の方が劣っているのだけれど知恵と戦いの中での成長により敵を打ち倒すというのがとても自分好みの作風であった。戦いの途中で勇者の内なる力が覚醒し全てを凌駕するような作品は言ってしまうと単調であまり好きではないためこの作品をオススメした翔月くんには感謝しかない。


 今は7時、クラスに最初に人が来るのは毎日窓付近でおしゃべりをしている数人の女子グループが8時前後にやってくるので1時間ほどは静かに物語に没頭できるというわけだ。


 本を6.7割読んだ頃、第一クラスメイトが教室に入ってきた。

「おっはよー!」と言いながらドアを開け放ち1人の女子が教室に入り後に続いてもう2人入ってきた。

 僕は小さく「おはよう」とだけ返し物語の世界に戻る。


「みさきー毎日挨拶しながら教室入るのはいいけど翔月くんいなかったらただの虚しい人だからね?」


「いいじゃんいいじゃん!いるんだし!それにいなかったとしても教室に挨拶してると思えばさっ!」


「はいはい、わかりましたー」


「何その反応!質問したのそっちじゃん!?」


「私は美咲(みさき)の将来が心配だよ...」


「なんで!?」


 とよくわからないやり取りをし始めたが構わず本を読み進める。


「ごめんね綾斗くん、毎朝本読んでるとこうるさくしちゃって」


 さすがに話しかけられているのに無視するわけにもいかないので


「いつものことだし気にしてないから大丈夫だよ」


「そう?あれでもうるさくしないように言ってるつもりなんだけど...ほんとにごめんね」


「本に集中してればあまり気にならないし物理的に邪魔されなければ大丈夫だから」


 前に一度だけなんのひょうしか美咲さんが転んで机にぶつかりそのぶつかった机が僕の机にぶつかるということがあったがあれはやめてほしい。さすがに一旦手を止めて机と本人の確認をせざる負えない。


 そんなこんなで時間は過ぎていき8時25分教室には9割ほどの生徒が登校し翔月も朝練が終わり教室に来ていた。これから遅刻ギリギリの生徒が走って滑り込んで来るだろう。


 僕は本を畳んで先生が来るまで今日の単語テストの復習でもしてようと単語帳を開いていた。予想通り30分ギリギリでクラス全員が揃い、各々準備などを済ませ席に着いていた。




 それから2()0()分が経った


 先生は来なかった



 正確には時計が8時30分で止まっていたので体感の話だが少なくともそれくらいは経ったと思う。普段であれば35分迄には先生が朝のHR(ホームルーム)を始め50分からは1時間目の授業が始まる、そんな時間だ。


 ――しかしそれは起こらない。


 試しにスマートフォンで時間を見てみたら8時30分で止まっている。クラスのみんなも40分を過ぎたであろうあたりから異変に気づき、授業がなくなって喜ぶ者、冷静に考える者、談笑に励む者、教室からの脱出を試みる者がいた。ドアも窓も開かず電話は繋がらない。自分たちの教室以外で発せられた音が一切聞こえずまるでこの教室だけ空間から切り離され時間が止まっているようだった。


 「ねえ、どういうこと」

 

 「くそ、なんで開かないんだ!」


 「電話も繋がらない、ここはほんとに教室なの?」


 さすがの異常事態にクラス全員が困惑を隠せない。

 時間は進んでおらず、電話もネットも繋がらない、ましてや教室から出ることもできない。この状況で普段道理にするほうが難しいだろう。

 そんな中、



 〘こんにちは、みなさん〙


 突然、頭の中にそんな声が響き渡った





 

頑張って投稿します

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ