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私の婚約者は



空気が重い。

ジュディアンナは人事の様に感じた。


「ち、父上聞いて下さい!!」


その重い空気を打ち破ったのは、エリック殿下だった。


「ジュディアンナ・マーシャルは私の婚約者なのをいい事に、ここにいる、モニカ・グーデルに悪質な嫌がらせをしたのです!!」

「何?」


国王陛下は、エリック殿下の言葉に訝しげな顔をする。


「私は、立場を利用して、か弱い、モニカを貶めるジュディアンナを許す事が出来ません!今ここで、ジュディアンナの婚約破棄、及び新たにモニカとの婚約を願います!!」


何故か妙に役者がかった、言い振舞いのエリック殿下。

・・・・・・妙にウザいな。

それに、言われっぱなしは、流石にいい気はしない。


「国王陛下、僭越ながら失礼します」


私は、左手を胸に当て、右手でドレスの裾を軽く持ち上げる、国王陛下に深く頭を下げ、国王陛下の許しを待つ。


「・・・。ジュディアンナ・マーシャル。其方の意見を聞こう」

「御心遣い、感謝致します」


下げている頭を上げ、姿勢を正す。


「まず、私の意見を述べる前に一つ確認をよろしいでしょうか?」

「うむ、許す」

「ありがとうございます」


エリック殿下に睨まれている気がするが、あえて、無視しておこう。


「私はいつの間にエンミリオン王国第2王子エリック・トム・ゴルドン殿下の婚約者になったのでしょう?」

「へ?」

「え?」


私の言葉に目を丸くする殿下グーデル嬢。


「やはり、其方も身に覚えがないか」

「はい、今日いきなり婚約破棄だと言われ、父も私も少々困惑気味で・・・・」

「な、何を言っている!!ジュディアンナ!!」

「エリック」

「グッ、」


噛みつく勢いで迫ろうとしてきたエリック殿下だが、国王陛下の静かな一喝に悔しそうに渋々引き下がる。

そんな、エリック殿下を見て、思わずため息をこぼす。


「先程もお答えしたように、私はエリック殿下の婚約者ではありません」

「嘘をつくな!!お前は13歳の時から私の婚約者のはずだ!!」

「違います」

「はぁ!?」

「ええ!?」


私の即答に驚いた顔をする殿下。

隣にいるグーデル嬢も信じられないと言った顔をしている。


さて、どうしたものかと、チラリと、国王陛下に目配せをすると、


「よい、話を続けよ」


お許しが出たため、左手を胸に当て軽く会釈をし、改めて、エリック殿下とグーデル嬢へ向き直る、ジュディアンナ。


「確かに、私は、13歳の誕生日に国王陛下からエリック殿下との婚約を勧められましたが、お断りいたしました」

「はぁ!?断った!?父上の命に逆らったのか!?」

「逆らったなんて、恐れ多い。丁重に辞退を申し上げたのです」

「わ、私との婚約を辞退した、だと!?」

「はい。婚約関係は国王陛下からの勅命、厳命でなければ、本人、当家当主の申し出でにより断る事が出来ますので」

「はぁ!?」


私に婚約を辞退された事が信じられないと唖然とするエリック殿下。


「私はその年にエンミリオン王国の隣国にして同盟国であるギア帝国への推薦留学が勧められていたので、そちらを優先させていただきました」

「は?留学?」


私の言葉に何を言っているのか分からないと言った表情のエリック殿下。

私のギア帝国への留学の話は王宮内でも広がっていたはずなんだけど。


「はい。私は13歳からギア帝国の学院へ留学をしていました」

「う、嘘をつくな!!毎年王宮で何度かお前を見かけたぞ!?」

「大事な式典、祭典、その他の用事の折には長期休暇を利用して里帰りをしていました。ギア帝国は同盟国と言っても馬車で往復3日程、行き来出来ない距離でありません」

「それは、私の婚約者としての参加だろ!」

「いいえ、現王妃様、アンジェリーナ叔母様の姪としての参加です」

「は?め、姪?お前が?」

「はい。現王妃様は私の父方の叔母にあたります。大切な式典や祭典にはよく招待を受けています」


王妃様の方へ小さく会釈をすると、王妃様は優しい笑顔で私に小さく、手を振ってくれた。

流石、エンミリオン王国の美宝と謳われる王妃様。

見た目は20歳後半くらいに見えるのに今日で38歳の誕生日を迎えたとはとても思えない程の綺麗な笑顔だ。


ところが、私が王妃様の姪と言うことにポカンとした顔をしている殿下。

え?もしかして・・・・・、


「・・・・・・まさか、殿下、わたしが従兄妹だと言う事をよもや、忘れていたなん言いませんよね?」

「ば、馬鹿な事を聞くな!!おお、覚えていたに決まっている!!」


慌てて、言い繕う殿下だが、説得力は無かった。


「・・・・・忘れていましたか。殿下」

「うるさい!!覚えていると言っている。そうだ!!む、昔、私の従兄妹だといい事に、あんなに私に付き纏い追いかけていたじゃないか!?」

「付き纏う、ですか、」


チラッと王妃様へ視線を送ると、伯母様は小さく溜息をつきながら頷いてくれた。


「・・・・あの頃、殿下の学歴が少々危ういとの事で留学前に勉強を教えるように王妃様からお願いをされていました。ですが、勉強を教えようと何度も殿下にお声をかけていましたが、殿下は何を勘違いしてか、私から逃げ回っていました。そして結局、補修授業を受ける羽目になったと聞きましたが?」

「な、なぁ!?」

「そもそも、殿下は私に興味をお持ちでは無かった。そして、私も殿下にさして好意を持つ事もありませんでした」


淡々とものを言うジュディアンナの言葉に顔を赤くする殿下。


「はぁ・・・・」


これが、この国の第2王子とは、世も末だ。


ジュディアンナは瑠璃色の瞳で真っ直ぐ、エリック殿下を見据え、


「エリック殿下。もう一度、申し上げます。私の婚約者はアナタでは無い」


キッパリと言い放つ。


「ぶ、無礼者!!」


怒りの感情で顔を真っ赤にして叫ぶエリック殿下。


「王族を侮辱してタダで済むと思っているのか!?」

「侮辱なんてとんでもない。私は聞かれた事を答え間違いを訂正しただけです」

「何を抜け抜けと、衛兵!!この者を取り押さえ、」


殿下は怒り任せにホールの護衛をしていた衛兵をジュディアンナにけしかけようと声を上げた、その時、


「エリック!!」


重みのある一喝が会場全体を震わせる。


「ッ、」


ビリビリと肌を刺すようだ。

会場から人の声が途絶え、ピンと貼った緊張感が漂う。


「見苦しい真似をするな。みっともない」

「ぅ、・・・・・・ッ、」


低く、威厳のある国王陛下の声が、静かに響く。

エリック殿下は実の父親に鋭い眼光で睨まれ、正に蛇に睨まれた蛙のようだ。

隣にいるグーデル嬢もガタガタ震えて、両手で声を出さないように口を押さえている。


「何を考えていたか、知らぬが、これ以上の無様な発言言動、見るに耐えん」

「ヒィ!」


静かではあるが、明かに穏やかではない国王陛下の言葉に情けない声を上げ、後退りをする殿下。

それに同調するかの様に、一歩後退するグーデル嬢と周り貴族達。

ピリピリとした空気に、息苦しさ。


「・・・・、国王陛」

「おいおい、母上の誕生祭にしては随分と重い雰囲気のパーティーだな」


重々しい空気に耐えかね、意を決したジュディアンナの声が誰かに遮られた。

振り返ると、


「・・・・・、兄上」


エリック殿下の絞り出すような声。

そこにはエリック殿下と同じ白を基調とした正装に身を包んだ、エンミリオン王国第1王子、ライアン殿下。

私の目の前で情けない顔をしているエリック殿下の実兄である。


「戻っていたか、ライアン」

「申し訳ない。父上。親友と少し話し込んでいたら遅れてしまった」


ギッ、と睨みつける国王陛下にカラカラと笑うライアン殿下。


短い金髪に王妃様に似た青い瞳を持つエンミリオン王国第1王子ライアン・カイン・ゴルドン殿下。

エリック殿下よりも、5歳年上で、明るく社交的なのだが、かなり好奇心旺盛な性格で、ジュディアンナ自身も幼少の時度々ライアン殿下の好奇心に巻き込まれた事がある。


「母上、御誕生祭おめでとうございます」

「うふふ、ありがとうライアン」


重々しい雰囲気の中、王妃様とライアン殿下だけが朗らかに笑って会話している。

どうやら、ライアン殿下の性格は王妃様に似たらしい。


「今日は母上の誕生祭。重々しい空気は相応しくありませんぞ」

「・・・・・・・」

「そこにいる、馬鹿は誕生祭が終えた後で対応すればいい。そうでは無いか?父上」


子供のように大らかに笑うライアン殿下に、


「・・・・・・・、それも、そうだな」


溜まった息を吐き出し呆きれながら呟く国王陛下に先程ようなの覇気は無かった。

それにより、重々しい空気が若干緩和され、その場にいる者は密かに安堵の溜息をこぼす。


「さぁ!!今日は取っておきのサプライズを用意しております」

「あら、何かしら?」

「それは後ほどに母上。それよりも父上も今日は皆に発表があるでは?」

「うむ、そうだったな」


ライアン殿下がその場を取り仕切る形で、なんとか、場の空気を取り戻す事に、ジュディアンナも安堵し、少し気を緩めた。

と、その時、


「ジュディ!!」

「は、はい!!」


ジュディとは私の愛称だ。

いきなりライアン殿下に愛称を呼ばれ、慌てて気を引き締め、振り向くと、満面の笑みのライアン殿下が、


「おいで、ジュディ」


私に手を差し伸べていた。

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