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逢いたい

ピ・・・・ピ・・・・ピ・・・・ピ・・・・ピ・・・・ピ・・・・


「ハァ・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・・」


小さな機械的な音とか細い呼吸。


「----さん、」

「ッ、-----さん」

「-----さん!!」

「・・・・、----さん」


ああ、目を開けないと。

もう、ほとんど聞こえないはずなのに、呼ばれた声が聞こえた。


重く感じる閉じていた目蓋を何とか開くと、そこには涙を流す愛しい我が子達。

長男の陽一、長女の朝子、次女の日菜子、次男で末っ子の明。

優しくて、しっかり者なのに頑固で、甘え上手でいじっぱりな泣き虫。

そんな子供たちだったのに、みんな、本当に立派に育ってくれた。


早くにアナタを喪って、本当に辛かった。

でも、この子達が居たから挫けずに此処まで生きられた。

たくさんの人たちに助けてもらったよ。

4人も子供を一人で育てるのは確かに大変だった。大変な事も辛い事も沢山あった。

でも、大丈夫。

子供達が大きくなって、大きな怪我も病気も無く、健やかに育ってくれた。

良い縁にも結ばれて、みんな、結婚して、孫も産まれて、それだけでも大往生だと思っていたのにひ孫まで抱く事が出来た。

果報者だよ。

本当に。


「ハァ・・・・・、ッ、ハァ、」

「!、----さん!?」

「どうしたの?」


話すのに口のコレ、邪魔、だな・・・・。


「!?兄さん、マスクを外しちゃ!!!」

「・・・・、話すのに、邪魔だろ。なぁ、----さん」


流石、お兄ちゃん。

よく気が付いてくれる。

でも、そんなに顔をぐしゃぐしゃにして、折角の男前が台無しだぞ?


いや、みんな、泣いてくれている。

息子も娘もお嫁さん達も可愛い孫ちゃんも泣いてくれている。

不謹慎だけど、こんなに嬉しい事はない。


少し、息苦しさを感じるが、喋りやすくなった、口を震わせる。

誰かが皺くちゃになった手を握ってくれた。


だから、ちゃんと、言わないと。


「、ぁ、ぁは、ぁぁ・・・・・」


ちゃんと、言いたい。


ああ、折角、見えていたみんなの顔が歪んで見えなくなってしまった。


「・・・・・・み、んな、ありが、とう・・・・」


その言葉が口から出ると、枕元にあった機械がピーーー、と甲高い音を上げた。


「!!、----さん!!」

「----さん」

「-----さん!!」

「ッ、ング、うう、-----さん!!!」


肺の中の空気が、口を伝って外へ出ていく感じがした。


痛みは、無い。怖くも、無い。虚しさも、絶望感もない。

こんなに穏やかに一生を終えられるなんて、本当に運がいい。


だが、もし、来世が許されるならもう一度、人間になりたい。


そして、また、あの人に逢いたいなぁ。


そう思いながら、意識が段々深く沈んでいくのを感じた。


今度はずっと一緒に・・・・・・。


逢いたいなぁ・・・・・。


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