№1 アーサーとエルフの姫アリエルそして円卓の騎士たち
不穏・・・。
その日は鉛色の空だった。
「・・・・・・」
アーサーは自室の窓から空を見あげる。
アーサー=バーンは先の大戦で英雄コォジィとともに戦ったもう一人の英雄王である。
金獅子眉目秀麗、否のつけどころがない男なのだ。
彼の視線の先には亡き父の霊廟があり、遠くに黒煙があがっていた。
「なにがあった」
彼は思わず呟いた。
「おはよう。アーサー」
エルフの姫、アリエルは挨拶をすると彼の背中に飛び乗った。
彼女は先の大戦でコォジィの14人の花嫁のひとりとして共に激闘を戦い抜いたエルフの姫である。
母エスメラルダと変わらぬ美しい容貌であり、11ン歳とは思えぬ姿をしている。
いわゆる彼女は彼にとっては姉さんなのだ。
「おはよう。アリエル、君は私の妃候補になんだから、そんな子供じみたことしないでおくれ」
「・・・自分だって、お姉たま~の甘えん坊さんでしょ」
「それは・・・」
二の句が返せないアーサー。
「おはようアーサー、アリエル」
「・・・姉上」
「ケイさん、おっはよー」
アリエルは陽気に挨拶をする。
「なにやら不穏を感じるな」
ケイは言った。
ケイはアーサーの腹違いの姉である。出戻り円卓の騎士一人で男装の麗人である。
しなやかな肢体に似合わない、その爆乳は見る者の目を掴んで離さないのである。
「ええ、姉上」
アーサーは再び黒煙のする方を見つつ呟いた。
「・・・ところで、2人とも、ここ私の部屋なんだが、ノックぐらいしようね」
それからすぐさま、アーサーは円卓の騎士達に登城を命じた。
バーン城に騎士達が集結する。
アーサーとアリエルそして円卓の騎士達は、文字通りの円卓テーブルを囲み、座っている。
「ゆうべの父上の霊廟に雷が落ちた件だが・・・」
アーサーは本題を告げる。
「はっ、私の配下の者に付近を探らせましたところ、霊廟を含む周辺が大火に見舞われています。目下のところ全力で消火活動を致しています」
騎士の一人、パロミデスが報告をあげる。
細身に釣りあがった目、諜報に最も適している彼は淡々と告げる。
「で、父上の廟は?」
ケイはパロミデスに問う。
「報告では灰燼と化したと」
鎮痛の面持ちで言う彼の言葉に一同は唸り声をあげた。
「付近に不穏な動きは見られなかったか?」
アーサーの声に騎士ベディヴィアが立ちあがる。
彼はアーサーの側近である大魔導騎士、その幼い顔だちに似合わず、切れる頭脳と目にも止まらぬ速さは円卓の騎士の中でも一目置かれる存在である。
「霊廟に雷が落ちたさい、私は駿足を飛ばして辺りを探ってみました・・・」
「それで・・・」
「・・・王が・・・我らの崇拝する王が復活なされました」
「何?だと」
アーサーはベディヴィアの顔を見た。
騎士の瞳は曇り、視点は定まっていない。
「ベディヴィア・・・お前」
「アーサー様、我等の王が帰ってまいりましたぞ」
ベディヴィアはアーサーから背を向け扉に向かって平伏した。
ドンっ!
扉の閂が外される音
魔法で閉ざされた二重扉がいとも簡単に開く。
懐かしくも恐ろしい声が響いた。
「久しいな、皆の者」
真覇王バーンが騎士達の目の前に立つ。
父と子。