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自分をフった幼馴染が彼氏と破局した途端、手のひらを返してヨリを戻そうとしてきたら、今カノが一喝……という茶番を幼馴染と親友と演じた後、親友の与太話を聞く話

作者: 炬燵布団
掲載日:2022/02/26

 窓から夕陽の斜陽が差し込む教室。


 俺たち二人は真剣な表情で向き合っていた。


「お願いよ巧、私ともう一回ヨリを戻して! 私にはもうアンタしかいないの!」

「満里奈。……お前付き合ってたモテルはどうしたんだよ」

「それは……」


 俺……唯月巧の言葉に元カノ……水町満里奈は歯切れが悪そうにする。

 それでも俺は事情を薄々察していた。

 彼女らの話は俺の耳にも届いていたのだ。


 元々、満里奈の彼氏……池面モテルの女癖がすこぶる悪いという噂は前々からあった。

 その噂が本当であるなら、彼女がどんな目に遭ったのかはなんとなく想像できた。


「だったらわかるでしょ。お願い巧、私を助けてよ……」


 だから水町満里奈はまた俺の所に戻ってきた。


 もう自分にはここしかいないのだ、と今さらながらすがってきた。


 ……でも一度壊れた関係はもう戻らない。

 覆水盆に返らず。

 もう、なにもかも遅いのだ。


「見苦しいわよ。水町さん」

「……あんたは土屋裕子」


 そこへ長髪の女子生徒が教室に入ってきた……俺の今の彼女である土屋裕子だ。

 彼女は満里奈を睨み付けながら俺の隣に立つ。


「あれだけ手酷く唯月君をフっておいて、今さらすがるとか見苦しいと思わないの?」

「裕子……私は……」

「言い訳なんて聞きたくない!」


 満里奈は弁明しようとするが、怒りの燃える裕子は取り付くしまもない。


「友達に戻るならまだしも……ヨリを戻す? ふざけないで。今の彼の傍には私がいるって知っていたわよね? 彼は物じゃないのよ!」

「あ……あ……違……私は……」


 今にも泣きそうな満里奈。

 それでも裕子は攻撃の手を緩めない。それどころか彼女の怒りのボルテージは増していく。


「アンタみたいな恥知らずな性格ブスは巧君に相応しくないのよ。この時代遅れの暴力ヒロイン! 男だったら誰彼構わず尻を振る尻軽ゴリラ! さっさと森にお帰りなさ――」


「――おい」


 途中から完全にひたすら罵倒する裕子の弾劾。

 それがあかんかった。


「お前今、性格ブスって言った? 暴力ヒロイン? 女装してる変態の分際で尻軽ゴリラって言ったか?」


「え……あ、いや……」


 急に雰囲気が一変した水町満里奈はそのまま裕子の胸倉を掴み上げる。

 

 調子づいて言い過ぎた事にようやく気付いた裕子もとい裕太はその長髪……演劇部から借りてたカツラをずり落ちらせる。


「散々好き放題言ってきたのはこの口かぁー!」

「あぎゃー!」


「カーット! 満里奈ストップ! どうどう!」


 その怒りは烈火のごとし。

 あやうく涙と退廃に満ちた暴力の宴が始まりかけたその直前、俺が後ろから満里奈を羽交い絞めにしてどうにか事なきを得た。





 というわけで茶番でした。


 この前も、俺は教室で幼馴染の水町満里奈と似たような寸劇を繰り広げたのだが、人は過ちを繰り返すものである。

 丁度テスト明けの休みで暇になったのと、辛く苦しい試練テストが終わったばかりで、全員テンションがおかしくなっていたというのもあったのかもしれない。

 親友である土屋裕太を交えて、この前の茶番話をしたら、『だったら恋敵がいた方が盛り上がるんじゃね』と彼が言ったのが発端である。


「ありえない! 酷過ぎる! 本気で殴りかかってきやがった! こいつ小学生の頃から何も変わってないんだけど!」

「すまん……本当にすまん」


 涙目でガクブルしている親友……土屋裕太に俺は平謝りする。

 昔、満里奈にボコボコにされたトラウマがどうやら完全に蘇ってしまったようだ。

 今度購買でパンでも奢ってやるか。


「私悪くないし……乙女に向かってブスとかゴリラとか言う奴が悪いし」

「……ったく、これだから三次元は嫌なんだよ!」


 ちなみに満里奈はそこでずっとブツブツと不貞腐れておられます。

 しかし、いつになく機嫌が悪いな。どれだけゴリラ呼びが嫌だったんだろうか。


「ゴリラは森の賢者なんだっつうの。悪口に使うなし……」


 逆かよ。

 ゴリラ好きなんかい!

 ……いや、そういや確か動物全般好きだったな。

 小さい頃から、よく一緒に動物園見て回ったっけ。


「まぁ暴力的な女の子にボコボコにされかけて、内心ちょっと興奮したのは認めるよ」

「止めなきゃよかったか?」


 そんな彼女を余所にこっちの親友も親友で知りたくもない性癖をカミングアウトしてきやがる。


 コイツ、ルックスは中性的で整っているのに所々変態なんだよなぁ。だからモテないんだよ。俺から言わせればもったいない限りである。


 そしたら裕太はジト目でこっちを見てくる。


「ていうか、僕としては君の方が充分恵まれてると思うんだよね」

「……そうか?」

「そうだよ。どれだけ美少女に囲まれてると思ってるのさ」


 確かに俺が人の縁に他より少しばかり恵まれている自覚はある。

 これで可愛い彼女ができれば……あがぁ!


「なんで殴った?」

「いや、君ってラブコメ主人公に据えても鈍感過ぎて読者から嫌われるタイプだよなーって」

「訳の分からんことを……イダッ!」


 言いかけたら、今度は満里奈が脛を蹴ってきた。なんなのお前等!


 つうか、そういう裕太はどうなんだよ。

 黙っていればそのルックスだ。

 高校に入学して一年と半年。一つくらいなんか浮いた話でもあるんじゃないのか?


「ふむ。ならば僕が勇者として異世界に召喚された話でもしようか」

「「妄想乙」」


 俺たちは一言で妄言を速攻斬り捨てる。

 そっち系の話を聞きたいんじゃねえんだよ。現実恋愛の話をしろ。

 そういうのは小説サイトにでも投稿してろよ。


「いや、本当に召喚されたんだよ。信じてよ! 異世界に呼ばれて魔王退治の旅してたんだよ!」

「そういう夢の話ね。わかってるわかってる」

「ちなみに魔王はレザーボンテージを着た褐色巨乳の悪魔っ娘でした」

「詳しく聞かせろ」


「巧?」


 いかん。

 つい食いついてしまった。

 満里奈が汚物を見るような目で見てくる。


 ……まぁいいか。

 所詮はコイツが夢で見た与太話だ。


 そんなわけで意気揚々と語り始める土屋裕太。

 まぁ、話自体は普通にテンプレートなファンタジーな冒険ものだった。出てくるヒロイン候補とは悲しいぐらいフラグは立たなかったみたいだが。


「姫様やエルフは勿論宿屋の看板娘にもキモい目で見られてた僕にはもう魔王様しかいなかったのさ」


 お前、異世界でもそんな感じかよ。


「だって彼女だけはどんな時も優しい言葉を何度もかけてくれたんだよ。こっちに来い。闇の世界はいいぞってさ」


 それ完全に闇堕ち狙いですやん。


「まぁ僕の方から二・三言話すと最後は嫌そうな顔をして勝手に帰っていくんだけど。ツンデレってやつかな?」


 魔王にまでアウト判定されるとかどんだけだよ。どんなこと言ったん?


「えっと……逆バニーの素晴らしさとか、赤ちゃんプレイの背徳性と有用性について少々……」


 あ、やっぱいいです。


「しょうがないじゃん。僕含めた勇者パーティー全員男だったんだから! こっちだって飢えるし、拗らせるわ! そのくせ魔王軍の幹部四天王は全員女だよ? なんだこの男女比率はって思うよ!」


 合コンでもすればいんじゃね?


 余談だが、実際にパーティーの仲間の剣士(金髪ショタ)は魔王軍幹部……四天王の一人のダークエルフの女剣士(ビキニアーマー装備)とライバル同士という名のいい仲になっていたそうだ。


 オネショタごちそうさまです。


「毎回、魔物との戦いの最中で『勘違いするな。貴様を倒すのはこの私だ』って割り込んできてイチャつき始める度に後ろから炎魔法ブチ込んでやろうかと思いました」


 あ、そこはちょっと共感できるわ。


 そうして、その後も裕太たちはメスガキな吸血鬼ロリや、バブ味全開のゆるふわ人魚姫、腹筋バキバキの豪快なオーガお姉さん。

 そんな人外美女四天王とのフラグが立ちそうで立たない生殺し異世界バトル冒険譚が文庫一冊分ぐらいの密度で続いていき、彼らはついに魔王城辿り着いたらしい。


 ……ありゃ、満里奈ちゃん退屈過ぎて眠っちゃってるよ。こういう系はあまり好みじゃないっぽいしなぁ。


 しかし、ようやく例の褐色魔王様と最終決戦か。


 そこからは激戦に次ぐ激戦。文字にすると一万字ぐらいの厚さの長く苦しい戦闘だったが、どうにか最終的に裕太たちは勝利したらしい。


「その時、僕は言ったんだよね。彼女の首元に聖剣を突きつけながら『命が惜しければ僕と付き合ってください』って」

「最低の告白っつうかもう脅迫じゃねえか」


 恫喝してどうするよ。

 そこは人と魔物、言葉を交わせるならば手を取り合えるはずだ、とかいい感じの事言って和解しろよ。


「向こうも僕の想いに答えてくれたよ。『この礼は絶対にする。お前が元の世界に帰ろうと次元の壁を突き破ってでも会いに行く』ってさ」


「それ絶対お前が思っているお礼じゃないぞ」

「というか答えになってないじゃないのよ」


 完全に夜道に気を付ける系だわ。


 というか、いつのまにか起きてる満里奈ちゃん。さては突っ込みやリアクションが面倒で寝たふりしてたな?


「まぁ作り話としては面白かったぞ」

「暇つぶしにはなったわよね」

 

 俺たちの言葉に対して、親友は憤慨する。


「だから本当なんだってば! じゃあ証拠を見せてやるよ! 女神様から世界を救った特典として異世界から好きな物を持って帰っていいって言われてたんだ!」


 そう言ってポケットを漁り始める裕太。

 呆れつつも俺も所詮は少年だ。心の中のどこかで燻ぶっている厨二心が不覚にもときめいてしまう。


 ロザリオの形に収納した伝説の聖剣か。あるいは魔力を秘めた宝石か。……いや信じてないけどね!


 すると親友が懐から取り出したのは黒いヒモ状の布地だった。


 ……何これ?


「魔王様のパンツ!」

「もしもし警察ですか?」


 速攻で満里奈が通報した。

 さらば親友、お前の事は忘れない。



 後日。


 隣のクラスに転校生が転入してきたらしい。

 なんでも海外から来た留学生の超スタイルの良い褐色肌の美少女だそうで、自身の下着を盗んだとある男子生徒を探しているとか。


 俺は隣の席の満里奈と顔を見合わせた後、共に後ろで深夜アニメを夜遅くまで観ていたため机の上で爆睡中の裕太を見る。


 この前の話……アレはあくまで与太話だったはずだ。


 ……そうだよね?

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― 新着の感想 ―
[一言] まだ茶番やってたのね、この二人。良い加減幼馴染ちゃんも告白した方がいいと思うの。 親友も濃いキャラしてるな。巨乳褐色美女が追いかけてくるとか羨ましい。 続き期待してます。
[良い点] クスリと笑いました、面白かったです [気になる点] 現実恋愛ではなくコメディなのでは?
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