36.オスカーの”交換”、そして”模倣”
異母弟を見ると、胸のあたりがざわざわする。
思い出してはいけないことに気づきそうで、ひどく不愉快だった。だから、会うたびに罵倒してきた。
自分は以前、こんなふうに誰かに罵倒されていた気がする。
不快だったはずなのに、まるでそれを真似たかのように、ひどい言葉が口から飛び出すばかりだ。
「落ち姫様が参られたそうだ」
父が言った。父は自分にとって憧れだった。そして手が届かない相手でもあった。(どうしてだろう?)
弟と落ち姫が滞在する客室へ父とともに向かう。そこに居たのは記憶にない女だった。
落ち姫というのは、代々少女であったそうだ。しかし、焦げ茶色の髪に、地味な顔立ちをしたその人は、どう見ても自分よりひと回りほど年上に見える。
「このような年増の女が落ち姫だと?」
父が落ち姫に言う。
「父上、私がニエでなくてよかったです」
私もそう続けた。
「そうだな」
レンヴァントが前に出た。それを落ち姫が制する。その後ろには狐のような目をした、自分とほぼ年の変わらなそうな男が控えていた。
「──しかもなんて目つきの悪い平民だ」
私が言うと、父もつられてその従者に目をやる。
「……あにうえ」
父ははっとしたように顔を歪めた。私が父の目を見ると……ぷつりと糸が切れたかのように静かになった。
それからしばらくして、弟と落ち姫、そして平民は城を出て行った。私は自室からその様子を眺めていた。女が一人、子どもが二人。
(あの過酷な旅をこのような子どもばかりで?)
頭になにかが浮かんだが、しばらくするとそれも消える。
ミャア、と泣き声がする。そこには灰色の猫。鳴きながら私の手に頭を擦り寄せる。私は猫を捕まえて、抱きしめた。不快そうに濁った声で鳴くと、猫は私の口元を引っ掻いて、跳んだ。
夕空が血のように赤い。どうしてだろう、涙が止まらなかった──。
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名前:オスカー・ファン・ベチルバード(13)
状態:心毒
魔法スキル:
レプリカーラ(効果:模倣)
チャームウィーブ(効果:魅了 ※模倣スキル)
ギフト:
その他スキル:
剣 Lv.10/100
槍 Lv.10/100
弓 Lv.10/100
四大属性魔法 Lv.10/100
光魔法 不適合/100
闇魔法 不適合/100
結界術 不適合/100
治癒術 不適合/100
未来視 不適合/100
学問 Lv.10/100
語学 Lv.10/100
魔法知識 Lv.10/100
毒耐性 Lv.99/100
来歴:
ベチルバード王国第一王子であり、王太子。母マデリーンが、側妃の息子である第二王子レンヴァントに毒を盛る。外聞が悪いため、病気療養として離れに蟄居させられている。
国王ウィリアムに放った無意識のチャームウィーブ(スキルによる模倣版)で、ウィリアムがオスカーとレンヴァントを間違えて捉えている。
オスカー、ウィリアム共に心毒状態となり、粗暴・短慮・忘却・人格反転などの副作用が発現中。
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黒猫のその後は、「18.真実の愛(2)」へ。
連載、間が空いたら設定をまるっと忘れた部分がいくつかあったので、ちょこちょこ改稿していますm(_ _)m




