プロローグ
校庭に等間隔に立つ木々。
その枝達には淡いピンク色の桜の花が咲いている。
とても綺麗で、立派に咲き誇っている。
グランドでは、二年生と思う人達が校庭を走っている。
面倒くさそうな顔で走っているが窺える。
「そこ! ぼーっとしない!」
「すみません」
全く、と言い振り返える先生。
クスクスと笑うクラスメイト達。
グランドを眺めていたら先生に怒られてしまった。
仕方ないじゃないか、気持ちの良い日差しを浴びていたら眠くなってくるんだから。
気を取り直して、先生の話に聞き耳を立てる。
あ、桜と言えばこの私立北丘高校には、こんな噂話がある。
校庭の桜の木ノ下で告白をすると、両想いになれると言う噂話。
しかも、桜が咲いている時期でないとダメとか。
まあ、あくまで噂話は噂話だ。本当に両想いなるとは限らない。俺の友人もフラれてるしな。
なる人もいるらしいが、そこまでの人数はいないらしい。
♢♢♢
「よっ、奏太」
そう言って、声をかけてきたのは友人の木島 亮だ。
ボサボサとしていて整えてないと一目で分かる金髪。目つきは鋭いが、整った顔立ちをしている。
本人はモテないと嘆いているが、意外とモテている。
俺と亮は所謂、幼馴染だ。
家が隣同士で、親同士も仲が良くて昔っから一緒にいる時間が多かっただけだ。
自分で言うのもなんだが、俺は性格に難があるらしい。そんな俺と仲良くしてくれる数少ない友人でもある。
「さっき先生に怒られたみたいだけど、何見てたんだ? やっぱ女子の体操着姿か?」
と亮が口にだした瞬間、周りいた女子達が冷たい視線を送ってくる。
おいおい、楽しそうに話してたギャルの皆さんも会話をやめて、鋭い目付きで睨んできてますよ?
「ちげーよ、桜見てたんだよ」
「なーんだ。違うのか」
つまんなそうに口を尖らせる亮。
何で、こいつはそう言う話に持っていきたがるんだ? だから、顔はいいのにモテないんだぞ。
いや、モテてはいるのか。理不尽だ。
「噂通り、ここの桜は長いんだな」
手をデコに当てて桜をみる亮。
確かに、この学校の桜は普通の桜より長い。
四月に入ってもう二週間は経つ。そろそろ鮮やかな緑色の葉に変わってもいい頃だ。
なのに、まだ葉に変わる様子すらない。
「ねえねえ!」
そんな他愛もない話をしていると、元気な声が聞こえてきた。
声のした方を向くと、明るい茶髪をポニーテールにしている女子生徒がいた。
名前は、何だったっけ? 覚えてないや。
「ん? どした綾崎?」
彼女の名前は、綾崎さんと言うみたいだ。亮の知り合いかな?
「?」
一瞬、綾崎さんがこっちを見て、口元をにやり、と緩ませたように見えた。
え、なに? 名前を覚えてないの気づかれた? いや、さすがにないか。
綾崎さんは、周りに聞こえないように手で口元を隠して、こしょこしょと話をしだした。
亮がうんうん、と頷き、こしょこしょ話が終わると、
「じゃ!よろしく!!」
「おっけー、任せとけ」
とっとことっとこと急いで帰っていく綾崎さん。
なんだったんだろう? 嵐みたいな子だったな。
亮が前の席に座る。なんか、ニヤニヤとしてるのが腹立つ。
「なあなあ、奏太。帰り一緒に帰ろうぜ!」
「それはいいけど、顔がムカつくから殴っていい?」
「なんで!?」
「冗談冗談」
「なんだ冗談か」