《28.新たなる人生へ》
ラストです。
馬を走らせ、太陽が頭上に登る時間帯。
ジアボは、前方に見える都市を視認する。
「シーラ様、見てください。ガレン帝国です」
「わぁ……」
アズラエル王国の隣国にあたるガレン帝国。
国土はアズラエル王国の3倍の規模を誇る大国家だ。
軍事技術、医療技術、魔法技術も最先端のものを持っており、アズラエル王国と並ぶ先進国である。
大きな城壁に囲まれた立派なガレン城が広い街並みのど真ん中に存在し、遠目からも分かるほど壮観なスケールを有している。
──ここが、ガレン帝国。訪れるのは2度目だけれど、本当に綺麗な都市ね。
圧巻の光景にシーラとジアボは目を輝かせる。
アズラエル王国の城も大きなものであったが、それ以上に巨大なガレン城。その綺麗な造形を存分に堪能してから、次に2人はその次に大きな建造物へと目を向ける。
「あっちのも大きいですね。なんの施設ですかね?」
「あれは、ガレン帝国の大教会。世界で最も大きい教会と言われているわ。その横には、修道院も併設されているのよ」
「へ〜、教会なのにあんなに大きいんですね……」
「となりの修道院にいる人がとても多いから、それに合わせて教会もより大きく改修工事されたそうよ」
エクレール大教会。
ガレン帝国の誇る世界一の教会だ。
シーラは過去にも、教会を訪れたことがあり、その時はあそこまで大きな教会ではなかった。こじんまりとした、それこそ地方にあるような小規模なもの。
──今は、あの頃の面影すらないのね。
そう思うと、ちょっぴり寂しい気がしてくるシーラ。けれども、新鮮な感じもするので悲観することはなかった。
「ガレン帝国に着いたら、どうしましょう」
ジアボがそんなことをシーラに聞く。
「何も決めていないものね」
「はい。これから先の予定はないですから、今のうちにざっくりとしたことは決めておきたいと思いまして」
──確かに、ガレン帝国に来れたのはいいものの、こちらで生活するには、何か仕事を探さなければならないわね。
問題は、どんな仕事をするべきか……。
新天地での観光よりも、今後の生活難の心配をする現実重視のシーラである。
そうして、考えた結果、
「……取り敢えず、今着てる服とかを売って、当面の生活資金に充てましょう」
最短での資金確保を優先した。
幽閉中の身であったものの、シーラはれっきとした侯爵令嬢。それなりの身なりであるため、売ればそこそこの資金源となる。それに加えて、ジアボも重々しい騎士の鎧を身につけた。
王国騎士団を捨てた今、その装いは無用な長物に成り下がっていた。
──ジアボに至っては、専用の鎧だから、この先着続けるわけにはいかない。
居場所を悟られるようなものは処分するに限るのだ。
「ジアボの鎧も売ってしまって、代わりに平民っぽい服でも買いましょうか」
「そうですね。アズラエル王国の紋章も入ってますし、この姿のままだと目立ちますからね」
「私も、下町娘風のコーデをしなきゃ……」
特に使命感を燃やさなくてもいいことであるのだが、貴族のしがらみを捨てたシーラにとって、これは初めての試みである。
平民の着るような素朴な服装を頭に浮かべながら、シーラは顎に手を当てて、考え込む。
──今日からシーラ・アルファスターではなく。平民のシーラとして、生きていくんだ。
「ジアボ」
「はい、シーラ様」
「私、これからの生活が楽しみだわ」
屈託のない笑顔を浮かべるシーラ。
そこに僅かな嘘などはない。
気負いすることもないまま、過ぎ去る日々をゆっくりと送る平民の暮らし。貴族令嬢であった頃では、経験したことのないことも自由にやれる。
そんな苦労も多いが、充実しそうな平民暮らしをシーラは望む。
「頑張りましょうね!」
「はい!」
シーラがジアボを鼓舞した頃、ちょうどガレン帝国の入り口である橋に馬車は突入。
検問所は、馬車内に用意されていた身分証と通行料を支払ったことによって難なく通過することができた。2人は念願のガレン帝国の地に辿り着いたのであった。
そして、2人の入国は後にアズラエル王国、ガレン帝国の両国間の関係性に大きく関わってくるのだが、それはまた別の話である。
これにて、一時完結とします。
二章の作成はモチベが戻るようなことがあれば執筆の方を進めていきたいとおまいます。
応援してくださった優しい方々へ。
ブックマークや高評価によるご支援ありがとうございました!
出来れば、応援してくださった方々のご期待に添えるようにこれからも頑張っていきたいと思います。また、二章の執筆が行えるようであれば、ぜひお会い致しましょう。




