《25.置き去り騎士のその後》
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「おーい、起きろ〜」
「むにゃぁ……?」
真っ暗で静かな幸福いっぱい世界に鳴り響く煩わしい声を聞き、シャーリーの瞳はゆっくりと開かれる。
──もう、なんですかぁ。人が折角気持ちよく寝てたっていうのに……。
目を開けたシャーリーの瞳には、蔑むような顔をしたサイファーの顔が映っていた。
「……起きたか?」
「ん〜、あと5分……」
「二度寝をするんじゃないよ。……ジアボとシーラさんの2人はどうしたんだい?」
「んあ? 何がですか?」
寝ぼけたシャーリーのふにゃふにゃした反応にサイファーは頭を抱える。
シュトレーナの伝言通りであれば、シャーリーは2人と共に行動していたはずだ。サイファーはシュトレーナが別れ際に放った言葉を思い出す。
「シャーリーが、影ながら見守ってるってさ……」
確かにあの言葉の意味は、シャーリーが護衛として同行しているという意味であるとサイファーは再認識する。
……しかしながら、この場に残されているのはシャーリーのみ。
ということは、
「シャーリー、護衛の任務を放棄してお昼寝とは……いいご身分ですね」
真っ黒な笑顔でシャーリーに恐怖を植え付ける。
「い、いや……えっとその。……あっ、ほら! 馬車がないってことは無事ガレン帝国に行けたってことじゃないですか! よかったよかった、あはは……」
「はぁ……」
──こっわ! ……この人めちゃくちゃキレてるんですけど。こんなにゾワゾワした感覚は久しぶりだわ。
シャーリーは無事に目を覚まして、そして怯えた。
「で、でも……大丈夫ですよ。ジアボくんは私が持ってた例の聖水飲ましてあげたから、いい感じに強い魔法とか使えますし」
「そういう問題じゃないんだけど……いや、いい」
過ぎたことは仕方ないと首を振るサイファー。
切り替えの速さは、シャーリーも見習うべきである。
暫く考え込むサイファーにシャーリーは、おずおずと尋ねる。
「……えっと、どうするんですか?」
サイファーからしたら、お前が聞くなと怒鳴り散らしたい気分であることは間違いない。けれども、サイファーは静かに口を開いた。
「まあ、無事逃げてくれたのであれば問題ない。僕たちが2人に追いつけば、失態も帳消しになることだしね」
努めて冷静にそう結論を導き出したサイファーは、近くにある雑木林の方に向けて、指笛を鳴らす。
少し待つと、地面が左右に揺さぶられるような振動をシャーリーは感じていた。
──えっ、何かが近づいてくる。
サイファーがそれを呼び寄せたというのはシャーリーも理解していた。しかし、まさかその呼び寄せたというものがシャーリーの特に嫌いなものであったことは予想していなかった。
──……ほんと、反省するから勘弁してぇ。
「ごめんなさい、これは無理です」
「何がかな? ほらほら、さっさと乗って」
サイファーはポンポンとソレの頭を撫でる。
シャーリーの涙目を嘲笑いながら、早く行くぞと視線で圧をかけ続けてくる。
──この人マジで性格悪い。私が蛇苦手なの知ってるくせに……。
伸縮性のある鱗、まん丸の目玉に周囲の風景が映り込む。
赤い瞳と白い胴体を持つ、それはそれは立派な大蛇がそこにはいた。
全長は、どれくらいか計り知れない。
シャーリーの目に映るだけでも巨大であると分かるだけで、雑木林の中に尾が長々と続いている。加えて頭も大きく、人を丸呑みにできるくらいのスケール。
──控えめに言って、キモ過ぎて無理!
シャーリーは酷く後悔をした。
油断して、シーラとジアボとの移動の最中に気持ちよくお昼寝なんてするんじゃなかったと。
「……これに乗るんですか? 蛇ですよ?」
「ガブからの借り物だから躾もしっかりされてるし、特に問題はないから安心していいよ」
「あ、そ……」
言い訳も、同担拒否も認めないというサイファーの顔つきにシャーリーは諦めはことを決めた。
──もう、なんでもいいや。
悲壮な覚悟をしたシャーリーは、ガチガチの動きで大蛇に跨り、サイファーと共にシーラ、ジアボの乗った馬車を追いかけるのであった。




