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《24.終わりを告げる逃亡劇》




「はぁ……やっと着いたわね」


 息も絶え絶えのシーラは目前にある場所を見つけて、呟く。 


「お、重い……こいつ、本当に何しに来たんだよ……」


 爆睡するシャーリーを背負い、顔を真っ赤にしながら必死にシーラに追従するのは、汗ダラダラのジアボ。シャーリーの寝息を聞くたびに舌打ちをしたくなるような、ちょっと怒り混じりの顔であった。


「お疲れ様ジアボ」

「いえ、これくらい全然平気です……」


 ──の割にダメージが大きそうね。


 げっそり顔のジアボにシーラは憐みの視線を向ける。

 シャーリーを背負っての長距離移動は、相当苦しいものであったと思う。

 しかし、シーラは我慢ができずに吹き出してしまった。


「ふふっ、あっ……ごめんなさい、つい。……うふふっ」


 ──いけないわ。ジアボが死にそうな顔をしているのに笑っては……けど、これは我慢できないわ!


 シャーリーが疲れたと告げ、仕方なく背負うジアボ。

 そこから爆睡を決め込んだシャーリーがここに到着するまで一度も目覚めなかったというのは、客観的に見て本当に笑えてしまった。


「笑いごとじゃないですって……こいつ、人の苦労も知らないで」


 悪態をついたところで、シャーリーは眠ったままだ。余程疲れていたのだろう。


「きっと頑張って疲れてしまったのよ。寝かしてあげましょう」

「いや……こいつはいつも寝てるんで、それは違いますよ」

「そうなの?」

「ええ、騎士団では他人に仕事押し付けて、自分だけ優雅にお昼寝してたくらいです」


 恨みたっぷりにジアボはそう告げるが、シーラは首を傾げる。


「いい子のシャーリーさんがそんなことするの?」


 残念ながら、シャーリーに対して高評価で確定されたシーラの曇った眼にはそんな話通じなかった。


「……シーラ様にシャーリーのリアルを教えてあげたいですよ」


 ジアボは苦笑する。


「そうね。……知れればよかったのにね」

「はい」


 急にしおらしくなる2人。

 シャーリーとはここでお別れするからである。

 王国騎士団に所属しているシャーリーをこれ以上連れ回すことはできない。国から出るシーラとジアボは、どこへ向かおうが勝手であるが、シャーリーはそうではない。

 まだ騎士団の騎士としての地位を持ち、この国で十分に生活をしていける。

 こんな逃亡生活に引きずり込んではいけないのだと、2人は認識していた。


「シャーリーさんにはお世話になったわ」

「そうですね。なんだかんだ、シャーリーとの時間は楽しかったと思います」


 ジアボはゆっくりと眠ったシャーリーを柔らかい草の生い茂る場所に下ろす。


「ありがとう。シャーリー先輩」


 お別れと言わんばかりにジアボは呟いた。


「では、馬車に乗りましょう」

「そうですね」

「操縦できる?」

「お安い御用ですよ」


 用意された馬車に2人は乗り込む。

 シーラは部屋のようになっている荷台に乗り込み、ジアボは馬を操るために御者台へと分かれて乗り込んだ。


 ──そういえば、サイファーさんとあの子は……。


 忘れ物を取りに行ったシュトレーナとサイファーが来るのかどうかを考えていたが、その疑問にジアボは察したように答える。


「サイファーさんたちは、待たなくてもいいらしいですよ。間に合えば、一緒に同行してくれるって言ってましたが、そうでなかったら、先に行ってて欲しいと」

「あら、そうなの」


 当然の措置である。

 サイファーやシュトレーナの到着を待っている間に2人が王国側からの差金に捕まったり殺されてしまっては本末転倒。

 サイファーはそこらへんの優先順位をしっかり考えていた。


「では、遠慮なく行きましょうか」

「はい。馬、出しますね」


 カラカラと車輪が回り、景色が徒歩の時より速く移り変わってゆく。


 ──名残惜しさはない。

 この先のことを考えると少し不安ではあるけれども、胸が高鳴る感じもするわね。


 新たなる人生。

 追放令嬢と逃亡騎士の2人は、まだ見ぬ未来のことを連想しながら、ガレン帝国へ続く道で馬車を走らせる。

 遠ざかる王国を背後に感じながら、シーラとジアボは前だけを見て進むのであった。

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