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《23.盛大な誤解》

次回より、毎日一話づつの投稿となります。





 シーラとジアボの順調そうな旅路も、結果的に言えば危険度マックスの一本橋渡のようなギリギリのものとなっていた。

 これは、シュトレーナ、サイファー、シャーリーの手によって対処しきれなかった分が2人に襲いかかってきたからに他ならない。しかし、もしこの3人の尽力を受けずに、同じような逃亡を試みたとしたら、ここまでギリギリで受け流せてはいなかっただろう。

 数に押し切られ、シーラとジアボは跡形もなく消されていたに違いない。


 ──はぁ、もう終わりかと思ったわ。


 地面に倒れる無数の追手の残骸を眺めながら、シーラはぶるりと身を震わせた。

 ジアボが魔法で進行を遅らせ、シャーリーの援護がこの場で発生しなかった時のことを想像したからだ。


 ──やっぱり、城から逃げたことはバレているのね。


 追手の数からして、シーラを殺しにやってきた殺し屋だけではないことが伺えた。

 幽閉塔から逃げ出したシーラを捕縛すべく、グレアス王子の差し向けた軍の兵士たち。安易に逃げさせないという強い執念がそこにはあった。


「……ありがとう。助かったわ」


 シーラは改めて、ジアボと緊急参戦してくれたシャーリーに頭を下げる。


「いえ、シーラ様が無事でなによりです」

「私も、終始楽しませてもらったので、気にしなくていいですよ!」


 ジアボはシーラに傷がないことを確認して安堵。

 シャーリーは、眩しいくらいの満開スマイルであった。

 身の危険を回避したシーラは、周囲を十分に確認してから、

「では、気を取り直して行きましょう」

 と馬車のある場所を目指して、再び進む。


 ──思わぬ出来事もあったけれど、これなら夜が明ける前に目的地まで行けそうね。


 ジアボはシーラの横にすぐさま位置取り、シャーリーもそれに続く。

 特に同行すると明言していないものの、襲撃からシーラとジアボを守ってくれたことから、ここから先も2人の身の安全を保障してくれるようである。


「というか、シャーリー……騎士団辞めたのか?」


 と、後方から付けてくるシャーリーにジアボは尋ねる。


「やだなぁ、辞めてませんよ。……これも私のお仕事ってやつです!」


 キリッとした顔でそう答えるシャーリー。

 お仕事と言われてしまい、頭に疑問しか浮かばないジアボはそのまま考え込む。

 王国騎士団の仕事では、逃亡者に手を貸すなどという悪事はおこなったりしない。


「シャーリー、やっぱり騎士団辞めたんじゃ……」


 『シャーリー』『騎士団』『解雇もしくは退職』という単語しかジアボの頭には浮かんでこなかった。

 失礼なことを考えているように思えるが、矛盾した答え方をしているシャーリーの言葉を曲解してしまっているのだから、しょうがないことである。

 シャーリーは、ジアボの疑いの視線を受け、あからさまに怒ったような仕草をとる。


「もぅ、どうして隊長は私をクビにしたがるんですかぁ! 私がそんなダメな騎士に見えるんですか?」

「……まあ、それなりに酷いなとは思うけど」

「失礼なっ!」


 そんな騒々しいやりとりを横目にシーラはジアボを宥める。


「まあまあ、助けてくださったのだから、もっと優しくしてあげないと」


 甘いことをいうシーラにシャーリーはすぐさまロックオンをかけた。

 いつのまにか消えたかと思うと、シャーリーはシーラを挟んだジアボの反対側に現れ、シーラの腕に植物が根を張るかのように巻きついた。


「そうなんですよぉ、この隊長ったら私のことを雑に扱ってきて、もう私の味方はシーラさんしかいないんですよぉ〜。ぜひ、頭でも撫でてくれたら私としては嬉しいのです」

「あっ、えっと……」


 こうして誰かに抱きつかれる経験の薄いシーラ。

 恥ずかしさとどうしようか分からない思考にやられて、うまい言葉を使えずになってしまった。

 もちろん、シャーリーはそんなことは把握していない。

 ただいつものように媚を売り、ジアボをいじり倒して困らせてやろうという捻くれた考えを持っているだけであった。

 しかし、


 ──私に遠慮なく接してくれるなんて、きっとジアボと同じように誰にでも平等に接してあげられるいい子なのね。


 シーラに盛大な勘違いを生んでしまっていた。


「ジアボ、シャーリーって、とってもいい子なのね!」


 シャーリーの頭を愛玩動物でも愛でるかのようにゆっくり撫でるシーラ。その様子にジアボは深いため息を吐く。


「……どうしてそう思ったのか、俺には分かりませんよ」

「……ん、これなんの話してるの? ……まあいいか。シーラさん、好き〜」


 シャーリーに対しての評価爆上がりのシーラと状況の乱れように頭を抱えるジアボ。ついぞ自分が掻き乱したこの雰囲気を全く理解していないシャーリー。

 未知数なシナジーを発生させ続けてしまう前途多難な3人なのであった。

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