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エピローグ

本日二話更新です。 こちら最終話になります2/2

 何も見えないほどの光が消えると、空に青空が広がり始めた。

 濡れた大地に、二人の男が倒れている。

「草野さん」

 美紀は健司に駆け寄った。

 その胸がゆっくりと呼吸をしているのを確認をしてホッとする。美紀は丁寧に外傷がないかを調べていく。

 大きな傷はない。おそらく霊力を使いすぎたのだろう。美紀は健司の額に手をのせて、ゆっくりと気を流していく。

「相も変わらずままごとみたいな恋愛ごっこをしている」

 あきれたような声に顔を上げると、神崎が身を起こしていた。

「そんな朴念仁のどこがいいのだ?」

 美紀は咄嗟に符を構える。

「お前の符で、オレが止められるとでも?」

「試してみなければわかりません」

 普段なら、神崎にはかなわないが、健司と戦った後だ。相変わらず自信に満ちたふりをしてはいるが、おそらく身を起こしているだけでやっとであろう。

 今の神崎の態度が虚勢であることは、長年神崎を見てきた美紀にはわかる

「やめろ」

 美紀の手に優しい手が重なった。

「彼女を挑発して、止めを刺されようとしても無駄だ」

 健司は身を起して、神崎の手に手錠をかける。

「死にたいからといって、俺たちを巻き込むな」

「ふん」

 神崎は顔を背ける。

「相変わらず、甘い男だ。オレの命を絶っておいた方が、よほど安全だろうに」

「あいにく俺は公務員なんでね。お前を裁くのは法だ」

 健司は神崎を立ち上がらせる。

「お前のそういうところが、オレは大嫌いだ」

 神崎は悔しげにつぶやいた。




 やってきた『退魔課』の捜査員に神崎を引き渡すとようやく二人は肩の荷をおろした。

「それにしても、綺麗ですね」

 伊吹山の山頂に広がる花畑は、色とりどりの花が咲き乱れている。

 空は濃い青色で、日差しは眩しい。

 雨上がりということで、山頂に人は少なく、まるで貸し切りのような状態だ。

「神崎は結局、草野さんと戦って死にたかったのかもしれませんね」

 美紀がぽつりと呟いた。

「彼にとっては、草野さんは唯一の人生の壁だったのだと思います。素直に憧れていると認めるのは、彼のプライドが許さなかった」

「そうかな」

 神崎が何を思って戦っていたのか、ひょっとしたら神崎もわかっていないのではないかと、健司は思う。ただひたすらに力を求めてはいたけれど、その先は見えていなかったのではないだろうか。彼にとって力と戦いが全てで。それが目的になった時点で、神崎保という人間はずっと前にすでに壊れていたのかもしれない。

「八坂あのさ」

「なんでしょう?」

 健司は言うべきかどうか、悩む。言えばそれは決定的になる。でも、言葉を濁すのは、自分をごまかすのはもう無理だ。

「その……このまま相棒(バディ)でいるの、辛いなあと思って」

「やはり私には無理ということでしょうか」

「えっと、そうじゃない」

 健司は首を振った。

「結婚しないか? いや、順番違うか。えっと俺と付き合ってほしい。それが無理なら、その、君は俺のそばにいない方がいい。俺の理性は、そろそろ限界だから」

 突然の告白に美紀は目を丸くした。

「ノーなら、すぐに山を下りて。そうでないなら」

 健司は大きく息を吸い込んだ。

「そうでないなら?」

 美紀はまっすぐに健司を見返してきた。

「キス、しないか?」

 健司は手を美紀の顎に添える。

 美紀の目が閉じられたのを見て、健司は唇を重ねた。最初は軽く、しだいに深く、そして激しく求める。

 甘い香りは、花のかおりだろうか。葉に溜まったしずくが静かに転がるように大地に落ちた。

 山頂にわたる風は恋人たちを祝福しているかのようだった。


お読みいただき有難うございました。

こちら『男女バディ』企画参加作品になります。

本作の地名は実在する地名でありますが、当然フィクションであり、実在のものとはいっさい関わりはございません。

近畿五芒星については、伊吹山ドライブウエイのホームページを参考にさせていただきました。


今作はとことん趣味をぶち込みました。

厨二病炸裂で、すみません。


企画では、他にも素敵な作品がたくさんありますので、ぜひお楽しみいただければと思います。

お読みいただきまして、ありがとうございました。


2021/8/15 秋月忍

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです。 退魔ものとしても、警察のバディものとしても楽しかった! ラストの二人も甘くて情熱的でした。
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