合成の真髄
「起きたか」
「ここは・・・?」
真也が起きた場所は、確かに迷宮の中だが、彼はその中でベッドの上に寝ていた。そして、真也の前には、仙人のような見た目のおじいさんがたっていた。
「ここはお主らが来ていた迷宮の最下層。じゃよ。 お主は死にかけじゃったから儂が回復しておいた」
そう言われて自分の体を見てみると、確かに右手足が元に戻っていた。
「あなたは・・・?」
「儂は......今の時代では大賢者と呼ばれている者じゃよ」
大賢者、その名前には聞き覚えがあった。 遥か昔に、魔法を極め、魔法を使う道具である魔道具などの研究に尽力したと書いてあったはずだ。しかし、
「大賢者は昔の話だ。もう生きていないはずなんじゃ?」
本にも書いてあるが、御伽噺などが多い。
「儂、寿命ないわい」
「え?」
「儂、死なない」
「え?」
「儂、不老不死」
頭が混乱してしまったが、本当にその通りのようだ。
「それで、なんでそんな人がここに?」
「お主が来ると思って、ダンジョンの話を聞いた後に最下層の魔物を倒して待っておった。 儂は魔法で未来を見ることもできるしな」
それならなんで落ちる前に助けてくれなかったんだ! そう言おうと思ったが、どちらにせよ、クラスの奴らと離れれるのは一つの目標だったので、言わなかった。
「お主も中々辛かったようじゃな」
「ああ、そうかもな」
今まで少し怪しんでいたが、その言葉と優しい目をみて、信用できる人だと真也は判断した。
「お主、<合成> の他の使い方を知っておるか?」
「<合成> ? ああ、この使えない固有技能か。 これはものとものを合成するぐらいしか使えないんじゃないか?」
この固有技能は、今までも少し試してみたが、すぐに忘れてしまうぐらい使えないものだと思っていた。
「その固有技能は、とんでもないものじゃよ」
「どういうことだ?」
「魔物には魔石というものがあるじゃろ?」
「ああ」
この爺さんの話をまとめると、魔物の魔石には、その魔物のすべての情報が入っており、それを自分の体と合成することでその魔物が持つすべてのステータスを上乗せできるという。
「それでじゃ、儂が持っている魔石を使って、実験してみないか?」
「ああ、もちろんだ。どちらにせよ、強くなるためにはいずれそうするんだろう?」
「そうじゃ、しかし、体に新しい機能が追加されるんじゃ、相当の痛みがあるじゃろう、それでもかまわないか?」
「もちろんだ。この際痛みなんてどうでもいい」
強くなれるなら、という思い一心で、即答した。
「じゃあ魔石を持ってくるから少しまっておれ」
そういって爺さんは魔石を取りに行った。 帰ってきたときに爺さんが持っていたそれは、とにかくでかく、そして光り輝いていた。
「これが...魔石、なのか?」
「普通の魔石はこんなんじゃないわい。これは、フェニックスやらリヴァイアサンとかのトップクラスの魔物の魔石を加工して作ったものじゃわい」
よりにもよって伝説の魔物とか呼ばれてるやつららしい。 こんなんと合成して俺は無事でいられるのだろうか? 変な色の肌とかになったらいやだな。
「お主に必要なのは、自分の下の体を意識することじゃ、そうすれば、翼が生えたりするだけですむ。 肌の色も意識すれば変わることはないぞ」
「なるほど、分かった。 この魔石に向かって<合成>といえばいいのか?」
「そうじゃ、だが本当にいいのか? 体が変わる痛みは恐らく今まで経験したことがないものじゃろう」
そう最終確認をされるが、俺は強くなれるなら少しの間の痛みぐらい構わない。無言で頷いた。
「そうか、では始めるがよい」
「<合成>」
そうして真也は、意識を手放した。
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「ここは、なんだ?」
真也が目覚めた場所は、暗闇だった。
「合成を開始します」
そんな声とともに、体にするどい痛みが走りだす。
「合成率20%...」
少しずつ体が変わっていくのを感じた。
「合成率45%...」
(グ...ああああアァァァァァ)
痛みのあまり叫びだす。
「合成率60%...」
翼が生え、肌と髪の色が変わりだした。
「合成率75%...」
回らない頭で、必死に元の自分の姿をイメージした。
「合成率90%...」
ただひたすらに自分の下の姿をイメージしていた。
「合成率95%......」
少しずつ、痛みが引いていく
「合成率97%...」
痛みが引いていくが、まだイメージは続ける。 変わろうとする色に対し、元の色をイメージすることによって抵抗していた。
「合成率99%......」
痛みが引いた。 最後は、自分の体の構成のことを考える時間なのかもしれない。 翼は別に構わないが、肌の色は元のままがいいという思考をしていた。
「合成率100% これで、合成を終了します」
そんな声とともに、真也は再び意識を手放した。
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「起きたか」
「......またそれで起こされるのか」
再び爺さんの声で起きた。
「どうやら成功したようじゃな」
「爺さん、俺の体はどうなってるんだ?」
「爺......まあよい、肌は変わらぬままじゃ。 髪は橙色、目は赤じゃな。 あとイケメンになっとるぞ。 お主イケメンになりたいと想像したのか?」
どうやらうまくいったらしい。 イケメンになりたかったのはきっと俺の根底にある思いだろう。
「それでじゃ、とにかくステータスを開いてみるんじゃ」
「あい分かった。 <ステータス>
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星野真也 16歳 男 種族:人?魔物? レベル1
職業:剣士
体力:250000
魔力:250000
筋力:250000
敏捷:250000
耐久:250000
種族固有能力 <不老不死> <飛翔> <再生> <火支配> <水支配> <毒生成> <毒支配> <糸生成> <糸支配> <光速移動>
<全魔法支配> <全魔法無効> <全状態異常無効> <硬化>
固有技能 <合成>
技術:言語理解 気配察知 身体強化
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「はぁ~?」
思わずそんな声がでた。 あきらかに頭のおかしな数値だった。 種族なんてもはや分からないし
「ふぉっふぉっふぉ。 そりゃ平均50000ぐらいの魔物の魔石を全部合成したんじゃ。そんくらいなるじゃろ。 これでお主は世界で儂の次に強いぞ」
どうやらこれだけあってもこの爺さんには敵わないらしい。
「さて、お主の新しい体も試したいだろうし、そろそろ飛ばすぞ」
「え? 飛ばすってどこに」
「もちろん、最難関迷宮の中間層あたりからじゃ。 ちなみに誰もそこに来たことなんてないぞ、荷物はお主が持っている魔法鞄に全部入れておる! 魔法鞄の中にはお主が前まで持っていた魔法袋もある! その体をちゃんと使いこなすんじゃぞ! ではいってこい!」
「ちょ!? まて、おい、ジジイィィィィィィ....」
質問が山ほどあったのに一つも解決しないまま飛ばしやがった。 これは恐らく空間魔法の一種だろう。 さりげなく無詠唱で飛ばしやがった。絶対もう1度きて殴ってやろう。