召喚後の日々
ステータスの確認から3日たち、遂に今日から戦闘訓練が開始される。生産系の固有技能持ちは戦闘訓練には参加せず、職人の下で固有技能を理解しようと努力している。そして、戦闘職はこの戦闘訓練に参加して、固有技能の理解を深めつつ、技術の取得と実践に向けての練習をするということだ。
俺は、生産系ではないので、この戦闘訓練に参加するしかない。2日の間に城をまわりたかったが、ヤンキー3人組が怖く、部屋に来るかもしれないので、彼らから逃げるように隠れていた。ちなみに、彼らから逃げ回っているうちに、<気配察知>の技術を手に入れた。技術の取得は、取得するためにそれに関することをすればいいらしく、<剣術>なら剣を使っていればそのうち手に入るという。
固有技能に関することでは、常に発動しているか、任意で発動するものがある。常に発動しているものでは、<勇者>のレベル上昇率倍増(レベルが上がりやすくなる)や、<聖女>の回復力増加などの、増加や倍増系のものだ。ちなみに<勇者>や<聖女>にはこれ以外にも複数の効果があるらしい。逆に任意で発動するものでは、<錬成>や<調合>などの固有技能がある。これらは、材料をもってきて固有技能を言うと、イメージしていたものが作れるという技能だ。ちなみに、俺の技能<合成>はいまいち理解できなかった。とりあえず、生きているものは合成できなかった。訓練場に転がっている石と石をならべて<合成>をしようすると、一つの石になった。この事から、ものとものを合成する技能だろうと思っている。元の石と合成後の石の強度を比べたところ、合成後の方が固いことから、恐らくあっているだろう。
職業については、ステータスから選ぶことができる<剣士><魔法使い>などが多い。<勇者>や<聖女>、<魔導士>などの固有技能は、それ自体が職業でもあるため、職業の欄に表示されている。職人は、鍛冶師などの専用の職業になっていて、生産系の人たちはそれが職業の欄にあったらしい。
何もない俺は<剣士>を選び、普通の騎士よりも低いステータスとともに、騎士団長の戦闘訓練に参加して強くなろうと考えた。
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「もっと腰を低くするんだ!」「視線に惑わされるな!」
騎士団長の厳しい声がひびく。今俺たちは戦闘訓練に参加している。騎士団長の訓練は思ったより厳しく、ほかの人よりステータスがすべて低い俺はみんなについていけてなかった。
「シンヤ、他のみんなについていけないのはわかる。だが、あきらめるなよ!」
「は、はい!」
そう返すが、厳しいものは厳しい。うまくついていけないまま今日の訓練は終わった。
「これで今日の訓練を終了する! 今日はもう疲れただろう。はやく飯を食べて休むといい」
そう言われて、俺たちは解散し、部屋へと戻っていく。汗を拭きとり着替えてから、食堂へと向かう。食堂にはクラスメイト達が集まっている場所があった。流石にそこから離れるわけにはいかず、飯をとってから、みんなが集まっている机へと向かい、席に着いた。みんなが集まった後、勇気から話があるらしく、先にご飯を食べてから話を聞くことにした。
「みんな、最近はどうかな? 今のところ、特に何もないし、元々の世界の方は不安だけど、今はどうしようもないからね」
そんなことを言うと、みんなそれぞれ愚痴をこぼす。異世界に来てから、みんなはそれぞれで新しく団結し、前よりも仲が良くなっているようだ。俺に関わるやつはいないが。 その後も、女子達からの質問や、今後の方針などが終わって、その日は解散になった。急ぎ足で自分の部屋に戻った俺は、その日は疲れていたのかすぐに寝てしまった。 前に俺に絡んできた奴らも、部屋には入ってこないらしく、なんとか今日を過ごせたのであった。
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次の日も、いつも通り食堂で朝食を食べ、訓練場へ向かった。他の人はもう来ていて、皆自主練をしていた。そうして、自分も始めようとしていると、
「おいおい、落ちこぼれのくせに一番遅いとは、ずいぶんと余裕だな~」
そんなことをいいながら、3人組が近づいてきた。
「そんなに余裕なら、俺たちと戦ってみねーか?」
ニヤニヤと笑いながらそんなことを言ってくる。
「いや、俺にそんな余裕はないから。」
そういって、素通りしようとすると、
「おいおい待てよ、てめえに拒否権なんかねーんだよ。こっちはこの世界に来てから中々ストレス発散できてなくてなぁ~、精々落ちこぼれなんだから俺らのストレス発散の相手ぐらいはしてくれねぇか? どうせ使えねぇんだからよ」
そういって肩をつかまれ、強引につれていかれた。
「よし、始めるぜ。」
そういって、無理やり腹を殴られる
「ガハッ」
とてもただの素手とは思えない威力だった。その1発を食らった後、
「よし、集まれ! 訓練を開始するぞ!」
そういって騎士団長がやってきた。だが、ここは騎士団長の位置とは真反対で残念ながら気づかれることはなかったらしい。
「チッ」
そう舌打ちして彼らは騎士団長のもとへと向かっていく。その後ろを追って俺も向かっていった。
========================================================================================== 訓練終了後、俺は意を決して騎士団長にさっきの話をしてみた。
「団長! 実はさっきなんですが・・・・・・」
「ふむ......ふむ。 そんなことがあったのか。 それはなんとかしなければならないな。 よく騎士たちの中でも起こることがあるが、まさか勇者達の間も、もうそのようになっているのか」
「いえ、全体がそのようなわけではないと思います。俺は元の世界でも彼らに好かれてなくて....」
そして俺は元の世界での俺たちのこと、主にどういう立ち位置にいたか、そして、嫌われものの彼らの矛先が俺に向いていることを話した。
「ふむ......なるほど。 では今お前はあまりよくない状況なのか」
「はい、そうです」
騎士団長は優しい人らしく、少し考えてくれているようだった。
「今の状況は好ましくないんだろう? お前はどうしたいんだ?」
「え? あ~、そうですねぇ...」
どうしたいのかと聞かれたので、少し悩やんだ。そして、
「あまり人が来なくて、無駄な時間を過ごさない場所...ってありますか?」
と、聞いてみた。すると、
「ふむ......そうか、ならば図書館などはどうだ? あそこならば、許可がなければ入ることができないだろう。読むのは俺にとっては退屈だが、あそこにはかなりの情報があると聞いている」
「図書館があるんですか!? 是非、お願いします!」
元々本を読むのが趣味だった俺は即答した。
「う、うむ、分かった。 戦闘訓練はどうするんだ? 続けるのか?」
そう言われると少し迷う。しかし、どちらにせよ最低限の強さは必要だと思い、続けることにした
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騎士団長に話した日から、俺の一日は、大体戦闘訓練を半分、残りの時間を図書館で過ごすようになった。 団長が話してくれたのか、あの日からヤンキー3人組からの俺への干渉は減っていた。
図書館には、色々な本が置いてあった。剣士の職業を選択したため、<身体強化>の技術しか学ばなかったが、魔法使いの職業があるように、この世界には魔法が存在していて、頭の中で魔法のイメージをし、詠唱をすることで魔法を使うことができるということ。 魔法は下から初級、中級、上級、超級が存在していて、上級が使えるのは大陸でも一握りといわれているぐらいだ。 ちなみに超級を使える人はいなく、俺たちを召喚したであろう超級魔法はそれに対応している、"魔道具"と呼ばれるものを使って行ったらしい。また、魔法にも種類があり、<火>、<水>、<土>、<風>、<光>、<氷>、<雷>、<空間>、<無>などがあるという。
その他には、この世界には、迷宮や魔物など、ファンタジーにあるものは大概存在していた。魔物には、魔石が存在していたりなど。中でも、俺の心をくすぐったのは、"伝説の魔物"と呼ばれる魔物達だ。人が生涯に1回見ることができるなどといわれていて、存在そのものが伝説であるらしい。色々な意見があったが、そのほとんどが信じがたいような内容だった。死なない鳥。海を自由自在にあやつる竜など、まるで空想の世界の物語だった。ちなみに、普通の魔物達は、F~Sランクまで分かれている。ちなみにこれは、冒険者も同じで、Bランク以上の魔物と戦う場合は、Bランクの冒険者が5人必要らしい。
迷宮に関しては各地に存在しているが、まだまだ未知な部分が多く、今でも数多くの冒険者たちが探索を続けているらしい。俺たちの近くにも迷宮はあり、よく騎士の練習場に使われているらしい。
次には、この世界の地図だ。俺らがいるのは、ドワール王国の王都ルディアというとこらしく、隣には、アルーシュ帝国と海に隣している。他には、種族ごとにいろいろな国があるらしい。
種族は、多いのが人族、これは俺らと同じ普通の人間だ。特に秀でたものもない。次に魔族、人間達にはあまり好かれていない。全体的に魔法を扱うのに優れているらしい。他には、亜人族と呼ばれる、エルフ族や獣人族などがある。 吸血鬼やサキュバスといった種族も存在しているが、魔族と同じくくりにされるらしい。
こうして俺は、この世界での知識を着実につけていきつつ、戦闘訓練にも励んでいた。だが、いくら調べても、<合成>に関するヒントは得られなかった。
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今日も、いつも通り戦闘訓練に参加し、途中から図書館へと向かおうと思っていた。
「シンヤ、今日は話があるから残っていてくれ」
そう団長に言われた。
そして、訓練が終わった。
「みな! 聞いてほしいことがある。 一週間後、王都近くのダンジョンへ行き、実戦の訓練へ行き、レベルを上げることにした! これは魔法の訓練をしている奴らも同様だ!」
クラスメイトはそれに対し、それぞれ異なった反応を示していた。怖がる人もいたり、楽しみにしていそうな人もいた。俺はどちらかといえば楽しみだった。戦闘訓練だけではステータス上うまくできなかったため、レベルアップで、と期待していたのだ。
それから、迷宮への1週間の間、俺は今までよりも練習に励んだ。 図書館においてある読みたい本は、あらかた読んでいたため、なお集中することができた。
そして、迷宮へ行く日の1日前、俺たちは最終確認をしていた。
「明日から迷宮へと向かう! 皆、準備をちゃんとしておくように! 荷物は、後で渡す魔法袋に入れておくように! それでは、解散!」
『「はい!」』
もうすっかり慣れたのか、みんな返事をし、部屋へと向かっていった。その途中、今まで無干渉だったヤンキー3人組に声をかけられた。
「よぉ、お前も迷宮にいくのか?」
「ん、あぁ。 そうだ」
「そうか...なら、頑張ろうな」
「ああ、そうだな」
特に何もされなかったことに驚きつつ、俺は彼らの前を通り過ぎていった。 彼らの言葉が、俺に対する確認だともしらずに。
そして、迷宮へ行く日が来た
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星野真也 歳:16歳 男 種族:人族 レベル1
職業:剣士
体力:100
魔力:100
筋力:100
俊敏:100
耐久:100
固有技能<合成>
技術:言語理解 気配察知 身体強化




