異世界への召喚
金曜日。明日の休日への思いを胸に、真也は家を出た。もう慣れてきたその道を歩いて、
彼は高校へたどり着く。教室のドアを開けると、みんなの視線がこちらへ集まる。
それに少しビビりながら、真也は自分の席へと向かう。その途中で、
「なぁ、あいつってオタクなんだろ?徹夜でゲームとかしてきてるのか?」
「もしかしたら徹夜でエロゲーでもしてるんじゃねぇか?」
「うっわ、なにそれめっちゃきもいじゃん~」
そんな声が聞こえてくる。そんな彼らはクラスの嫌われものである。
上から、岡田太一、山田英二、寺田三郎。一二三がつくことから俺は、
彼らをヤンキー三兄弟と心の中で呼んでいる。そう、心の中で。
そんな彼らの熱い視線を無視しながら、自分の席へと向かうと、当たり前
のように座っている女三人組がいる。まあ、いつも通りだ。そのため、
「ごめ~ん」
と、なるべく優しく声をかける。怖いから。そうすると、
「あ、めぐ、来ちゃったよ~」
「あ、君ごめんね~」
そんなことをいいながら去っていく、名前を憶えられてすらいない、まあ
そんなことはべつにどうでもよかった。
「チッ、あのオタクってやっぱだりーな。」
「ほんと、それな!」
「うちらが話してるときに割って入ってくるとかまじないわ~」
すぐにこうなる。 ちなみに上から、井上恵、田村花音、加藤結衣という。
また、彼女らのことをビッチ三人衆という。心の中で。
そんな彼ら彼女らとのいつも通りのことをしていると、二人の女子と、それに続いて
一人の男子が入ってくる。そんな3人に対しクラスの視線は釘付けになり、しばらく
すると元へと戻っていく。女子2人の名前は松田愛と森山未来。男の名前は佐藤勇気。
容姿端麗、運動神経抜群、完璧超人な彼らには、自然と人が集まり、モテている。朝の時間は、いつもその中の一人である森山未来と目があう。あいつが彼女だったらいいのになどと妄想しつつ、変な感情に浸らないよう、現実を見るために視線をそらす。
そんな彼らを横目で見ている俺は星野真也、ヤンキー3人組やビッチ三人衆のいうように、
どちらかといえばオタクだろう。学校の休み時間には小説を読み、家ではゲームに熱中。
高校に入ってからはマイペースを意識して、特に友達も作らずに一人でやってきた。
しかし、普通にコミュニケーションはとることができ、髪も短い、体系は同年代よりは
かなり細い方だろう。
そんないつも通りの朝。担任の先生が入ってきてHRが始まる。
「よし、お前ら~、みんないるか~? いるな、よし号令」
「きり~つ、気を付け、おはようございや~~す」
やる気のなさそうな挨拶とともに、今日も1日が始まる。はずだった。
「朝のHRは以上だ! 次の授業の準備をしなさい!」
そういって先生は出て行った。それと同時に、クラスが賑やかになる。
俺は次の授業の準備をするため、席を立ち、ドアをあけようとした。しかし、
「はぁ!?」
開かなかった。別のドアの方もそうだったようだ。
「おい、ドアがあかねーんだけど!?」」
ヤンキー3人組の誰かが言った。そのドアの向こうでも、
「おい! 扉があかねーぞ! 閉めてるのは誰だ!」
そんな声がした。俺も誰かが閉めているのかと思った、その時だった。
「みんな! 床が光ってる!」
そんな声が聞こえた。そして床を見てみると、それが魔法陣のようなもの
であると気付いたと同時に、ドアを叩く音が遠くなっていった。
そして俺は、意識を手放した。




