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人でなし

 「王都を救いにいってくれないか?」


 この言葉に対し、真也は無言で頷き、冒険者カードを取り、、ギルドを後にした。 路地裏に入り、誰も見ていないことを確認して、隠密を発動しながら屋根の上に飛び乗る。 団長達は、真也が返ってきた方向と逆の方に進んでいったため、そちらの方向を見定める。そして、<飛翔>で翼を生やし、空に飛ぶ。 そして、空中で<空蹴>を使い、何もないとこを足場にして、今までで一番足に力を籠める。 そして、


「.............<光速移動>」


 声に出ているのも気に留めず、彼はその能力を発動させる。 そして、思いっきり空を蹴り、空中を体を一直線にして、最高速度で王都へと向かう。 真也が飛んでいるところは、傍目から見たら、まるでビームのような見た目だったという。


 「......何だこれは」


 そうして1秒もかからずたどり着いた王都は、ひどい有様だった。 あちこちで火の手があがり、また、どこをみても魔物と戦っている人たちの姿が見えた。


「いくぞ、ディーヴァテイン」


 迷宮でも使うことのなかった愛剣を魔法鞄の中から取り出し、王都の周りの草原へと着地する。


「ふんっ」


 そういいながら、魔物達の目の前の空間を切ると、その風圧だけで魔物達はこま切れになっていく。 それに気づいた魔物達が大勢近づいてくるので、横に一閃すると、全ての魔物達が真っ二つになる。


「弱いな......これぐらいならすぐに片付きそうだ。 とはいっても、バレるのは面倒だ。 一応、認識阻害の仮面をつけておくか」


 そういって魔法鞄から仮面を取り出し、城壁を超え王都の中へ入る。 王都は、それぞれ商業街や貴族街など、全部で4つに分かれているため、取り合えず近くにあった商業街にいる魔物達を一掃しに行く。


「来ないで......イヤァ!!」


 そう叫んでいる声が聞こえたので、そちらの方向に向かうと、女性が、オオカミ型の魔物に襲われそうになっていたため、一瞬でそこまでたどり着き、魔物を倒す。 その、あまりの速さに驚いたのか、女性は気絶してしまった。


「やはり、これは明らかなバケモンだよなぁ」


 そんな女性を見ながら、少し自嘲気味に笑う。


「王都にいる奴らは、残り大体300ってところか?」


 気持ちを切り替え、<索敵>を使いながら、魔物の反応の方がある方へと向かい、切り殺す。 そんな作業を10分ほどした後、違和感を覚える。


「勇者たちがいないな.....? 俺が殺すのが速すぎたのか? 嫌でも、奴らは馬車より早く走ることぐらい楽勝だろう。 あそこからなら、王都も見えるだろうし、異変にも気付くはずだよな」


 「なら考えられるのは......」と言おうとしたが、踏みとどまる。 体に電流が走ったようだった。 そもそも、こんなに多くの魔物が王都に入り込むなんておかしな話だった。 元々、魔物は知性を持たず、他の種族と共闘するなんておかしな話だ。


「なら考えられる可能性は、魔物を操った。 魔物を操ることができる......魔王、しかいないな」


「でも魔王は封印されたはずだ。 あの爺が失敗するはずがない。 ならば考えられる可能性は、その配下の魔人......!?」


 そこで、前に聞いた、今の勇者達では魔人を倒すことができない、ということを思い出す。


「まさか、そんなことないよな...? 俺が速すぎただけだよな!」


 少しやけになりながら、そう言い、<索敵>に意識を集中すると、


「くそが!」


 ちょうど勇者達と同じ数の反応と、周りの反応より強力な反応が1つ。


「間に合いやがれ!」


 そういって、真也はその反応の方へ、さっきと同じくらいの力を足に籠め、<光速移動>を発動して、彼らのもとへ駆けていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

side 森山未来


 私たちは今、絶体絶命のピンチにいた。 騎士団長は死に、他のクラスメイト達は、地面に突っ伏して、起き上がることができない状態にされてしまった。 唯一立っていられるのは、私、愛、それと勇気君の3人だけ。 今は、勇気君が戦い、私が魔法で支援をして、愛が勇気君に回復魔法をかける。 それで、なんとか耐えしのいでいたが、相手の様子を見ると、むしろ私たちをいたぶって、戦意を喪失させようとしているようにも見えた。 相手は、肌が黒く、頭から2本の角が生えていて、青い目をしている女性だ。恐らく、話に聞いていた、魔人というやつだろう。 そして、少し経った後、今まで終始無言で、私たちと戦っていたその相手が、突然、おもむろに口を開いた。


「もう諦めろ。 ここで全員諦め、我等が魔王様に絶対服従を誓えば、その力に免じて、命はだけは助けてやろう。」


 まるでそうすることが普通だろう、とでもいうように、その魔人と思われる女性は呆れた眼差しを向けながらしゃべりだす。


「ふ、ふざ、けるな! 誰が、おま、え、たちなんか、に、服従するか!」


 そういって、勇気君は抵抗して見せるが、力の差は歴然としていた。


「なぜ服従しない? なぜ我等魔人の、魔王様への思いは、こうもお前ら劣等種である人族には理解されないんだ?」


 そういい、勇気君を吹き飛ばした。


「まあいい。 勇者以外の付属品どもにようはないからな。 お前らが服従しないというんだったら、もう殺してしまおうか」


 そうやって他のクラスメイト達へと近づいていく、そして、おもむろに、近くにいた寺田君の頭を左手で掴み取り、


「やめ、ヤメろ! おい、見てないで助けてくれよ! なぁ、勇気! お前、勇者なんだろ? 岡田、お前は俺のダチなんじゃないのかよ! おい、まて、やめ、やめろおおおおおぉぉぉ.....」


 寺田君の悲鳴を聞けて満足したのか、腹に右手を突き刺し、動かなくなった寺田君を投げ捨てた。


「さて......次はだれがいい? 勇者以外のやつは全員殺してやるからな。 こうやって手間をかけてな」


 そうやって、他のクラスメイトへと、近づいていこうとする。 すると、


「ゃめろ......」

「ん? おい、勇者。 お前、今なんかいったか?」


 勇気君に向かって、わざとらしく聞き返さす。


「ヤメロオオオオオオオオオオオ」


 勇気君の周りを、赤いオーラが包みだし、そして消える。


「く、くそ! まだこんな力を......まずい!!!」


 そういって勇気君は、数回魔人と切り合い、隙が生まれた魔人の体に、切りかかろうとする。しかし、


「なんて、そんなわけがないだろう」


 そういって魔人は、正面から勇気君の剣を受け止める。


「なぁっ!?!?」

「弱いなぁ」


 そういって魔人は、勇気君を吹き飛ばす。


「そうだなぁ。 誰でもいいが......次はお前にしようか」


 そういって魔人は、私を狙いにつけた。 私は、恐怖のあまり体が動かなかった。 前に、迷宮で真也君に助けてもらった時と同じ感覚だった。


 そして魔人は、私にゆっくりと近づいてきて、そしてその手を振り上げ、私に向かって思いっきり振り下ろした。 私は、思わず目を瞑ってしまった。 あまりの恐怖に数秒経った後、いつまでたっても自分に衝撃が来ないことに気付いた。 恐る恐る目を開けてみると、そこには振った手が空中で止まって呆気に取られている魔人と、振り下ろされそうになっていた手を止めている、顔を認識することができない、人が、立っていた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

side 星野真也

 真也がたどり着いたのは、森山未来に近づいていく魔人だった。 そして、魔人が森山未来に手を振り下ろそうとしていたので、反射的に、持っていた冒険者カードを捨て、その手を止めた。 魔人は数秒のあいだ呆気に取られていたが、少し経つと冷静に戻った。そして、


「お前は、誰だ?」


 低い、脅すような声でそういわれたため、答えを返す必要もないと思い、返事代わりに握っている魔人の左手を、手刀で切り落とした。


「なっ!?」


 魔人は気付かぬうちに自分の左手がないことに驚きつつ、冷静に真也から距離をとった。そして、自分の切り落とされた左腕を見ながら、


「......この、バケモノめ。 一体何の用だ」


 そう、言ってきたので、俺はとりあえず周りの倒れている"元"クラスメイト達を回復することにした。 倒れているクラスメイトの人数を確認し、俺は浮かんできた魔法の名前を呟いた。


「...超回復」


 そう呟くと、倒れているクラスメイト達の周りに光の粒が集まり、中に入っていった。そして、


「なんだこれ、体が元に戻ってる!?」


 他にも、呑気に、「スゲーー」だったり、「なにこれ!?」だったりと、騒がしくなった。 そして、目の前で完全にスルーされていた魔人はというと


「本当に何なんだお前は。 だが、まあいい。 殺すべき対象が増えただけだ」


 さっき左腕を切り飛ばされたのにも関わらず、こちらへ突っ込んできたので、その頭を掴み取り、



 ------握り潰した。


 それに対して、クラスメイト達は目の前で殺人が行われたことに、かなりショックをうけ、黙り込んでしまった。 しかし、その沈黙は、予期せぬ形で破壊された。


「真也、くん......?」


 そう、言われた。 俺は、反射的にすぐ後ろへ振り向いた。 そして、後ろにいたのは、俺の冒険者カードを持った森山未来だった。 流石にこれは、隠しようがないとも思った。


「そう、かもしれないな。 とりあえず、その冒険者カードを返してくれ。」


 そういうと、未来は素直に返してくれた。 俺は無言で受け取り、そのまま立ち去ろうとする。すると、後ろから、


「待つんだ真也君!」


 そう声をかけられる。


「あれほどの力を持っていたのに、どうしたあの人を殺してしまったんだ!? やはり君は、今、壊れてしまっているんだね。 大丈夫、今からでもまだ遅くないよ。 これから僕たちと一緒に王都に戻って、またやり直そう!」


 そう言いながら、哀れみの視線をこちらにむけ、近づいてくる。 俺はその言葉を聞いて、頭が真っ白になるのを感じていた。 そして、思った言葉をそのままいった。


「なぜ殺したか、だって? そりゃこっちを殺しに来ていたんだぞ。 やらなきゃやられていたんだよ。 それにな、あれぐらい魔王に忠誠を誓ってるんだ。それに、俺が仮にこの場を収めて、その後どうなるか分かるか? あいつは国に連れてかれ、拷問されるだろう。 そして最後には殺される。 仮に逃げ出しても、その時はまた俺たちを殺しに来るだけだ」


 そういうと、勇気はさらに何か言いたそうだったが、それを無視してこっちに近づいてきた奴がいた。 岡田だ。


「お前、そんな力を持ってるんだったらよ。 寺田と団長を生き返らせることだってできるんじゃねぇのか?? さっさとやれよ」


 そうやって脅してくる。 勇者達には今後も頑張ってほしいので、魔法で生き返らせた。 無事に生き返ったのを確認して、今度こそ帰ろうとすると、


「待てよ真也。 お前が持ってる武器、全部ここにおいてけよ」


 そんなことを言われる。 流石にこれには意味が分からなかったため、無視しようとすると、


「どうせお前が持ってるその剣とか防具とかのおかげでそんな強くなってんだろ? ならそれを俺らに渡すのは当然だ。 ま、渡さなくても奪うけどな」


 そんなことを言いながら、俺の持っている剣を奪い取ろうとしてきた。 流石に我慢できず、糸を作り出して、彼に絡めて動きを止める。 そういって、


「そんなに信じられないならば見てみればいい......<ステータス>」


 そういって、彼ら全員に見れるように、ステータスを見せびらかす

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星野真也 歳:16 男 種族:人外 レベル 147

種族:剣聖

体力:530000

魔力:530000

筋力:530000

俊敏:530000

耐久:530000

種族固有能力 <不老不死> <飛翔> <再生> <火支配> <水支配> <糸支配> <毒支配> <全魔法支配> <全魔法理解> <全魔法無効> <全状態異常無効> <糸生成> <毒生成> <硬化> <光速移動>

固有技能 <合成> <剣聖> <魔力支配>

技術:言語理解 索敵 身体強化 空蹴 隠密 鑑定

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「「「なっ....」」

 流石に、このステータスと、自分が動けないことが分かると、バカの岡田でも力の差を理解したようだった。 今度こそ、立ち去ろうとすると、思いがけない言葉をかけられた。


「けっ、チートになったからって、調子に乗ってんのか。 あーあ、うらやましいなぁ、そんなに強くなれてさ。 僕なんて、どんなに頑張ってもそんな風にはなれないよね」


 そんな声が聞こえた。それに続いて、「チート野郎が!」や、「裏切りもの!」 といった罵声が響いてくる。 その中でも、ひときわ俺の中に響いた、「この人でなしが!」という声に対して、俺は見せびらかすように、翼を広げて、自嘲気味に、こういった。


「なんとでもいってくれ。 俺はもう、ただのバケモノなんだからな」


 そういって真也は、ひとり、空に羽ばたいた。 手には、聖魔剣ディーヴァテインと魔法鞄を持って。

 







 















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