街での生活
「朝か」 そういって真也は起きる。 剣を魔法鞄の中にいれ、金貨を5枚とって宿を出た。 昨日、食事を食べた後に聞いておいた服屋へ向かい、中へ入る。
「いらっしゃいませ! 今日はどのような服をお探しですか?」
そういって、店員さんが出てくる。 宿の受付嬢も美人さんだったが、ここの店員さんもまた美人さんであった。
「取り合えずこの予算の範囲の中で、魔物と戦うことも視野に入れた一番性能がいい服がほしい」
そういって金貨5枚を渡す。 そうすると、
「は、はい! 金貨5枚の中でですね! 分かりました!」
少し慌てたように奥へ消えて行ってしまった。 少し経ったあと、さっきの店員が、豪華そうな服を持って帰ってくる。
「こ、こちらになります! 確認してください!」
ちなみに、俺はこの時、<索敵>で、奥にいるもう一人の店員と接触していたことを知っていた。 なので、一応鑑定を使用してみた。 すると、渡された服のうち、シャツの方は品質B、ズボンの方は品質C、となっていた。 特に技術もついてなかったため、脅すようにきいた。
「本当にこれが一番性能がいい服なのか?」
「ひっ......」
想像以上に怖い顔をしていたのか、怯えてしまった。 そして、奥からもう一人の店員が歩いてくる足音が聞こえた。 少しの間待っていると、その店員がこちらに来て、口を開く、
「いやいや、流石でございますお客様。 豪華な見た目に惑わされず、見事その中身を当てるその眼。」
芝居がかったセリフいいながら、姿を現した店員は、眼鏡をしており、いかにも悪人が似合いそうな顔をしていた。そのメガネ店員が他の服を持ちながら近づいてくる。
「私はこの服屋の店長をしている、ロイドと申します。 よく金だけを持ってやってくる実力がない輩が多くて、試させてもらいました。 その礼として、この店の中で一番性能がいいものを渡させてください」
そういいながら、白いシャツと、黒のズボンを渡してくる。 その二つを鑑定してみると、どちらも品質はS+。技術のとこには、<自動修復> <衝撃吸収> <伸縮>この3つが書いてあった。 あまりの変わりように驚きつつ、質問をする
「こんなにいいものを俺に渡していいのか? 」
「ええ、もちろんです。」
そう言い、ニヤニヤしながらこちらを見てくる。 なんだこいつは、と思っていると、
「なんだこいつは? という顔をしていますね。 まあそう思われるのも無理はありませんね。 理由としては、私がつけているこの眼鏡にあります。 この眼鏡は、鑑定の眼鏡という魔道具でして、普通の技術で使える鑑定よりも上位の鑑定が使えるんです。 ですが、あなたから得られた情報は、名前だけでしたよ。 シンヤ・ホシノさん。 これは、あなたがおかしなステータスを持っているという証拠になりますので」
そういった。 俺は、一瞬他のステータスがバレたのではないか、と心の中で驚きつつ、必死に顔に出さないようにこらえた。 また、星野真也ではなく、シンヤ・ホシノと呼ばれたことから、他の人にはそういう風に見えていると分かった。
「そうか......取り合えず理由は分かった。 それでお代はいくらになるんだ?」
そう、逃げるように話題を切り替えていいだす
「はい、シンヤさんが提示した金貨5枚です」
そう言われたので、金貨5枚を渡す。
「はい、金貨5枚ちょうど頂きました。 またのご来店をお待ちしておりますね」
そういいながらニコっと笑われたので、こいつは爺なみに敵わないな。と思いつつ、服屋を出ていく。取り合えず着替えるために、一度宿屋へ戻る。 ちなみに、自分の制服には認識阻害の魔法をかけてあったため、何も言われることはなかった。認識阻害先生万歳。早速さっき買った白いワイシャツと黒いズボンを履いてみると、恐ろしいぐらいに自分の体にあっていた。 これもあのメガネ店員のロイドの実力かと思うと、恐ろしいなと思った。(ちなみに、真也の身長は179cmで、元々は細身でしたが、合成や迷宮での戦いにより、細マッチョにランクアップしました。)
服も新しくなり、その上から黒い隠密のローブを羽織って、冒険者ギルドへ向かう。
「依頼を受けたい」
そういって冒険者カードを受付に提示する。
「はい、Fランクのシンヤ・ホシノさんですね。 でしたら、こちらの依頼はどうでしょうか? ゴブリン5匹の討伐になります」
「では、それでお願いします」
そういって依頼をうける。 冒険者カードにはランクと名前しか書いていないため、認識阻害先生のお世話になることはない。ちなみに、このゴブリン討伐の依頼は常に発令しているものである。依頼には、今回のような常に発令している薬草採取やゴブリン討伐のような依頼と、一般的な1回きりの依頼、ランクが高い冒険者に出される指名依頼などがある。
「はい、これで受付完了です。 一応、討伐したことの証明のために魔石を持って帰ってきてくださいね。 それでは、頑張ってください」
そう言われて、ギルドを出る。歩いて探しに行くのはめんどくさいので、路地裏に入り、隠密を発動して屋根の上を飛んでいく。冒険者用の街の出入り口があるらしいが、聞いていないので、そのまま外の草原へと出る。ゴブリンがどこにいるかは聞いていないので、自分の耳を澄ましてみる。すると、「ゴブッ、ゴブッ」という懐かしい声が聞こえてくる。どうやら北東にある山にいるようだ そちらの方向を目指して走りだす。
「折角だし、<光速移動>を試してみるか」
そういって、彼は立ち止まり、光速移動を発動させる。さっきと同じ要領で走り出すと、気付いたら目の前にゴブリンがいた。
「......速すぎるな。」
そういって、目の前のゴブリンを瞬殺し、魔石を抜き取る。 遅すぎるゴブリンの動きに関してはノーコメントだ。
「くそ、よりにもよって4体か。 仕方ない、他のゴブリンを探しに行くか」
そう言って彼は、他のゴブリンを探そうとする。 すると、
「ん? ここの下...か?」
そういって多くの気配が集まっている場所を見つけた。
「どっかに下に行ける場所があるのか?」
そういって辺りを探すと、上に上がってくる気配を感じたので、そちらの方に向くと、ゴブリン達が下から出てきていた。
「お、ビンゴか」
そういって彼は、出てきたゴブリンを、一瞬の間に殺し魔石を抜き取って先へ進む。 すると、どうやらゴブリンの集落のような場所にでた。
「5体、他のゴブリン達より強いやつがいるな」
<索敵>を使いながら、片っ端からゴブリン達を殺しつつ彼は言った。
「これで普通のゴブリンは全部か。 さて、残ってるやつはどんなやつかな?」
そういいながら、5つの反応が集まってる場所へ向かう。すると、そこにいたのは
「キングにメイジ、ナイトってところか?」
他のゴブリンより大きく、冠をかぶっているゴブリンと、杖、剣を持つゴブリンだった。
「さて、お手並み拝見といこうかな」
そういいながら、彼はゴブリン達に近づいていき、目の前で立ち止まる。それに対しゴブリン達は、
「ゴギャァァァ」「ゴブッゴブッ」「ゴブブブブブ」
それぞれ別の声を叫びながら襲ってくる、まず、剣を持つゴブリン、ゴブリンナイト達が剣で切ろうと襲い掛かってくる。剣は真也に勢いよく振り落とされ、辺り、そして砕けた。
「そんな品質の剣じゃ痒くもないな」
そういいながら、目の前のゴブリンナイト達を瞬殺し、魔石を抜き取る。 そして、その後に、ようやくゴブリンメイジたちが魔法を放ってきた。魔法、<火弾>により作り出された2つの火の玉は、真也に向かって勢いよく飛んでいき、真也に当たって消える。
「何も感じない。 これが<全魔法無効>か」
その後も、ゴブリンメイジ達で実験をした結果。 真也はどの魔法を食らってもなにも感じることはなかった。ナイト達と同様、メイジ達も瞬殺した後魔石を抜き取り、キングとの戦いになった。
「さ、やろうか」
そういって魔法鞄から剣を取り出し、キングと向き合う。
「ゴブゥゥゥゥゥ」
そういい、キングが飛びかかってくると同時に、真也はゆっくりと力を籠めずに剣を横に振るった。すると、キングの体は、まるでプリンでも切っているかのように、何の手ごたえなく真っ二つになった。
「......やはり、品質S+は相当なものか。」
そういい、ゴブリンキングの魔石を抜き取って、他の魔石とともに魔法鞄に入れ、体を水魔法で洗い、火魔法で適度に乾燥させた後、ギルドへ帰った。
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「ゴブリンを討伐しましたよ」
そういってゴブリンの魔石を5個取り出す。
「はい、ちょうど5個ですね。 それでは、冒険者カードを提出してください」
そう言われて、冒険者カードを提出する。すると、
「え? ゴブリン討伐量315? それに加えて、ゴブリンナイト2体と、ゴブリンメイジを2体、キングを1体討伐しているって.....一体どういうこと?」
思わず素が出ていたが、そこはあえて気にせずに、ありのままあったことを説明した。 ゴブリン達が集まっている場所があったので、全て倒した、という内容だ。 そうすると、
「と、とりあえず少し待っていてください!!」
そういって慌てて奥へと消えていく。 やってしまったかもしれない。 と思いつつ、これからの展開をどう乗り越えるか考える。 少し経つと、
「君が、シンヤ・ホシノか?」
奥から受付嬢とともにやってきたおっさんにそう声をかけられたので、無言で肯定する。
「そうか。 私はこの冒険者ギルドのギルドマスターをしている。 アルレイドという。 話があるから、私について来てほしい」
そういって、ギルドマスターは、受付から出てきて、上へと続く階段へ上っていったので、それに続いて俺も上っていく。少しだけ歩くと、一つの部屋の前に来たので、そこに入るように促される。
中に入ると、対面のソファーが真ん中にあり、そこに座ってくれといわれる。
「改めて、私がギルドマスターだ」
「俺がシンヤ・ホシノです」
そういって握手をかわす。
「君が討伐しにいったゴブリン達だが、そこには集落のようなものがあったんだろう? もう一度詳しく私に聞かせてほしい」
そう言われたので、地下へ行ったらゴブリンの集落があったこと。 そこにいたゴブリンを殲滅して、ナイトやらメイジやらキングやらを倒したことを伝えた。
「なるほど......そんなことがあったんだな。 ゴブリンの集落は、見つけ次第直ちに殲滅することになっているが、君の討伐数が300体以上であることを見ると、それだけ数を集めていたのにバレなかったことから、もし君が殲滅してくれなかったらこの街に甚大な被害があったことが想定できる。本当にありがとう」
そういってギルドマスターは頭を下げた。
「そんなことは気にしないでください。 俺はたまたま気配を察知して見つけられただけですから」
「そうか......ならばそのことはいい、それでだ」
そういうと、さっきのギルドマスターとは別人のように顔が変わった。
「君の力についてなんだが、Fランクが一人でその規模のゴブリンの集落を殲滅することは異常だ。Aランクの中でも上位のものならばできるかもしれないが、Fランクになりたての君ではできるはずがないと断言できる」
かなりめんどくさいことになったなと思いながら、その話を肯定する。
「この際、君のことを信用して、力を全部見せろとは言わない。 君にも少なからず事情はあるだろうしな。 しかし、ギルドとしては、君のような戦力をFランクなんかにしておくのは惜しいんだ。 そこで、君には、Aランクになってもらおうと思う」
ギルドマスターの発言はかなり思い切ったものだったのか、受付嬢が少し慌てだすが、「特例だ」といって黙らせる。
「どうかな? 君としては悪いものではないだろう。 Aランクになれば街に入る際に税を取られることもなくなるしな」
少し悩むが、取り合えずデメリットを聞いてみることにした
「ちなみに、悪い所はなんですか?」
「そうだな。 指名依頼が入るようになり、それを断ることはできない。 まあ、そうとはいっても、ギルドを介して本人のもとへ行くから、無理なものはこない。 それから、名前が広がることになるだろうな。 これも、今回はできる限り広めないようにする。 それで、どうだ?」
元々、対して拒否する理由はなかったので、頷いで肯定した。そうすると、ニィとギルドマスターは笑って、
「そうか、よかった。 ならこれからよろしくな、シンヤ。ホシノ。 俺のことはアルレイドと呼んでくれても構わないぞ」
そういってギルマス改めアルレイドは右手を差し出す。
「それがそっちの素か。 じゃあこっちも素でいこう。 よろしく頼む」
そういって真也も右手を差し出す 握手を交わした。
「ああ、そうだな。 よし、入ってきていいぞ」
そういうと、なにやら箱のようなものを持った受付嬢が入ってきた。そしてその上には、
「これがAランクの冒険者カードだ。 大切に使えよ」
更新された冒険者カードがあり、アルレイドに渡された。
「最初からなるって分かってたんじゃないか」
そう愚痴をこぼしながら冒険者カードを受け取り、部屋からでていった。