真也、地上へ降り立つ
涙も枯れてきたころ、"僕"がいたところの奥に階段があるのを見つけた。
「よし...いくか」
誰言うわけでもなく、自分の気持ちに対してそういい、体を立たせて階段の方へ進む。
会談の奥は再び扉があった。
「またボス戦をすんのか? めんどくせぇな」
そう思いながら扉をあける。 すると、目の前にあるのは、1つの大きな宝箱だった。
「罠とかじゃないよな?」
そういいながら魔力がこもっていないか調べる。
「流石にこんなところに罠なんてないか」
調べた結果なにもなかったが、警戒を解かずに宝箱へと手をかける。そして、その宝箱を開けると
「剣か? あとこの本もかなり怪しいぞ」
中に入っていたのは、鞘に収まっている長剣と、表紙の真ん中に赤い球体がはめこまれている分厚い本だった。 とりあえず、長剣を鞘から抜いてみると、
「っ..!?」
中から出てきた長剣は、水色と白で彩られていて、神秘的な輝きをしていた。そして、その長剣を振るってみると、
「なんだこれ? めちゃくちゃ手に馴染むな」
長剣の持ち手の部分はまるで体の一部かのように自分に合った。
「これなら今からでも実戦に使えるな。 で、この怪しげな本の方はなんだ...?」
そうやって本を開いてみると、
「ッ......痛ってぇ。 何が起こったんだ?」
本は光って粒粒になった後、真也の頭の中に入っていった。
「とにかく、何かしら変化があったに違いないな。 とりあえず確認してみるか、<ステータス>」
------------------------------------------------------------------------------------------星野真也 歳:16 男 種族:人外 レベル100(現時点での成長限界)
職業:剣豪(変化可能)
体力:500000
魔力:500000
筋力:500000
俊敏:500000
耐久:500000
種族固有能力: ・・・
固有技能 <合成> <全魔法理解>
技術:・・・
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「っ...もはやバケモンだな。 あの爺さんにはこれでも勝てないのか? 新しく全魔法理解が追加されてるってことは、さっきの本の効果はこれか。」
ステータスを見つつそういう、
「剣豪から変化できるのか。 とりあえずこれをやってみるか」
そうして剣豪の職業欄を押す。 すると、
『職業を剣豪から剣聖へと進化させますか?』
そう頭の中へ響いてくる声が聞こえたため、
「はい」
と答える、すると、ステータス欄の職業欄の横には、"剣聖"と表示されており、レベルの横の成長限界という文字も消えていて、そして、固有技能の横には、新しく、<剣聖>というのが追加されていた。
「これで俺は剣も魔法も使えるバケモンになってしまったのか。 ますます孤立を深めそうだな」
そういって彼が自嘲気味に笑っていると、頭の中に、
『あなたはこの迷宮を踏破しました。 このまま迷宮を抜けたい場合は今から展開する魔法陣の上へ、この迷宮の主として君臨したいのであれば、今から奥へ続く道を出すので、そこへ進んでください」
そんな声が聞こえ、目の前には魔法陣が展開され、奥の方には壁が割れてさらに道が出てきた。真也はこの迷宮の主なんてやる気は全くもってないので、魔法陣へ向かうことにする。
『迷宮を抜けますか?』
と声が響くので、
「はい」
と答えると、魔法陣が光りだし、
『それでは転移を開始します」
そう声が響くと、よりいっそう輝きが増し、思わず目を瞑ってしまう。 光が収まってきたころに目を開けると、そこには森が広がっていた。
「どこに転移するかぐらい教えてほしかったな」
そんなことをぼやきながら、前へと進んでいった。
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転移されてから3時間後、ただひたすら前へと歩いていると、<索敵>で、人の反応を感じ取った。少し急ぎ足でその方向へ向かう。 だんだんと反応が多くなっていき、森が開けた場所にでる。すると、前に広がっていたのは、
「街か。 一体ここはどこだ?」
そういいながら、街の方へと歩き出す。近くの反応の方へ行ってみると、そこにはいかにも門番のような兵士がたっていた。 ローブの効果を発動して、無理やり入ってもいいが、特に理由もないので、そのまま門番の方へ近づいていく、すると声をかけられた。
「止まれ、身分証を出せ」
そう言われる。
「すいません。 身分証をなくしてしまったんので、この街のギルドで発行してもらおうと思っているんですが、通してもらえませんか?」
身分証が何かは分からないが、取り合えずギルドに行けば何かしら発行してくれるだろうと思い、礼儀正しく言ってみる。すると、
「うむ。 そうか。 ならば仕方ないな、では銀貨3枚だ。」
「あ..」
すっかり金のことを忘れていた。 どうしようと考えているうちに、思わず声に出してしまうと、
「ん? どうしたのだ? そのその鞄の中に入っているわけではないのか?」
そう言われたので、魔法鞄の中に手を入れ銀貨3枚をイメージしていると、手に銀貨3枚の感覚がある。 鞄から手をだし、見てみると、そこには銀貨3枚がちょうど乗っていた。 それを門番に渡すと、
「うむ。 これで銀貨3枚ぴったりだな。 よし、入っていいぞ。 ギルドはここを真っすぐいって、右を見ていればそのうち着く。」
そう言われたので、門をくぐって真っすぐ進んでいると、やけに人の気配が多いとこを見つけたので、そっちに視線を向けると、大きな建物があった。 恐らくこれがギルドだと思うが、一応確認のため、合成によって強化された五感のうち、聴覚を使って、中の会話を盗み聞きする。すると、何やら笑いあう声や、魔物の討伐。 依頼の話をしている声が聞こえたので、中へ入ってみた。
中は広く、正面には受付があり、横は酒場のようなものになっていて、多くの冒険者達がくつろいでいた。 俺はとりあえず、身分証を発行してもらうために受付の人に声をかける。
「すいません」
「はい! おや? 見ない顔ですね。 何のようでしょうか?」
そう言って話しかけてきた受付嬢は、思い通り美人さんでした。 タイプではなかったので無視し、とりあえず冒険者登録をしてみようと思う。
「冒険者登録をお願いします」
「はい。 わかりました。 では、こちらの紙に必要事項を記入してください。 代筆はいりますか?」
そういって紙を渡してくるが、自分で書けるので首を横に振り、渡された紙に目を通す。
(名前と年齢に種族、それに職業か。)
思っていたより項目が少ないことに驚きつつ、体力や魔力などの項目がないことが気になったので聞いてみた。
「体力や魔力とかは書かなくても大丈夫なんですか?」
「はい。 冒険者は自分の身を自分で守ることが普通ですし、あれは人によって元が違うので、書かれても参考にはなりませんから」
意外と厳しい答えが返ってきて、納得しつつ。紙に必要事項を記入するが、2つ問題点があった。種族と職業だ。 俺は、職業はレベルの上限に当たると進化が可能になると思っているが、この世界でレベル100なんていう人族は、俺しかいない。あの爺はノーカウントだ。 つまり、剣豪はいても、剣聖の職業は俺しかいないだろうということだ。 種族も同様に、恐らく俺だけの種族だろうから、バレルわけはいかないと思った。 どうやって隠そうかと思っていると、頭の中に魔法が浮かんでくる。 その魔法の内容は、認識阻害だった。 俺は、種族と職業を書いた後、そこに認識阻害の魔法をかき、提出した。
「書けましたよ」
「はい。 分かりました、少しお待ちくださいね」
そういって受付嬢は奥の方へと歩いていってしまった。
「さっき頭に魔法が思い浮かんできたのが<全魔法理解>の効果だろうな。 便利なすぎるな」
そんなことを考えていると、受付嬢が戻ってきた。
「虚偽の記載もありませんでした。 これが冒険者登録をした証の冒険者カードになります。これでシンヤ・ホシノさんはFランク冒険者となります。 冒険者の説明は必要ですか?」
紙にシンヤ・ホシノと書いたので、慣れない名前に違和感を覚えた。前に王都の図書館で本を読み、冒険者の説明は頭に入っているため、断った。
「そうですか、ではこれで冒険者登録は終了です。早速依頼を受けていきますか?」
そう言われたが、今日は他に色々とやりたいことがあるため首を横に振り、ギルドを出た、しかし、出たあとすぐに、声をかけられ、
「おい、兄ちゃん。 あんたいい剣持ってんじゃねぇか。 俺らにそれ、くれねぇか?」
チンピラに囲まれてしまった。 あまりの持ち心地の良さに、すっかり剣を持っていることを忘れていた。 鞘に入ってはいるが、その鞘も十分派手な見た目のため、チンピラ達の行動になっとくしつつ、あえて喧嘩をかってみた。
「お前らなんかにあげるわけねーだろ。 このバーーカ。 欲しいもんなら自分で買ってみろよ!」
買ったわけじゃないが、あえて買ってみろといったことは気にしてはいけない。 安いっぽい挑発だったが、彼らの怒りはちゃんとかえたようだ。
「ふんっ。 命知らずな奴だな。さっき冒険者登録をしたFランクの雑魚が俺らに勝てるわけねーだろ!! 泣いて後悔するなよ!!」
そういって先頭の奴が殴りかかってくると同時に、他のチンピラ達も飛びかかってくる。が、俺がいざ戦おうとすると、視界の中に移る人が全員停止したため、驚きつつ全員に首トンをする。すると、さっきまでの光景に戻る。 目の前ではチンピラ達が全員気絶していた。 ここを誰かに見られるとまずいと思い、<隠密>を発動して、その場から去る。その後、そこは案の定騒ぎになっていたが、犯人が誰かは分からないらしい。
<隠密>で隠れながら、俺はさっきの先頭でリアル首トンができたことに感動しつつ、ステータスのことについて考えを回す。
「恐らく、俊敏や筋力とかも、任意で調整することができるみたいだな。 チンピラ達に絡まれる前までは何もなかったが、戦おうとした瞬間に全開の俊敏になったってことだろう。筋力も同じだろうな」
そんなことを考えながら、彼は道行く人に尋ねた。
「すいません。 宿ってどっちの方向にありますか?」
「ん? 宿ならあっちだよ」
そういって宿の方向を指さしてくれたため、礼をいって今度は普通あるいて街を探索しつつ向かってみる。 今見てみると、この街は思ったより広く、人が多い賑やかなところだった。
歩き出してから少しして、宿についた。中に入り、受付の女の人に声をかける。
「すいませ~ん、泊まりたいんですが、ここの宿はいくらですか?」
「はい! ここの宿は1泊銀貨5枚で、食事付きで銀貨7枚ですよ!」
安いかどうかは分からないが、特に金銭に困っているわけでもないので、銀貨7枚を渡す。
「はい。ちょうど7枚ですね~。 この札に書かれている数字が書かれている部屋になります! 食事は朝と夜に2回ずつありますので、食堂の方で注文して座っていれば来ます!」
そういって札を渡されたので、早速部屋へと向かう。 札に書かれている数字と同じ番号の部屋を見つけたので、中にはいる。 中は簡素なつくりになっていて、ベッドと机がおいてあるだけだった。俺は、取り合えず剣を立て掛け、ベッドに座り魔法鞄の中身を知ることにした。 ちなみに、剣にも認識阻害の魔法が掛けてあり、鉄の剣にしか見えないだろう。
魔法鞄の中には、爺からの手紙も入っていた。 その中には、魔法鞄の使い方や、中に入っているものなどが書いてあった。 魔法鞄は、魔法袋の上位互換で、内容量が多い。 中に入れたものを、イメージすることによって取り出すことができるらしい。魔法鞄は、魔法袋より高価なもので、所持している人も少ないらしいのが、みためは普通の鞄と変わらないためあまり気付かれることはないらしい。俺は、念のため認識阻害の魔法をかけ、魔法袋に見えるようにしておいた。 鞄の中には、銅貨、銀貨、大銀貨がそれぞれ100枚と、金貨と大金貨が10枚入っているらしい。 それに加えて、俺の剣と本のこともかいてあった。 あの本は、予想通り<全魔法理解>の本であった。 そして、この剣は、オリハルコンで出来ている剣だった。 爺からは、アダマンタイトの剣か鉱石を見つけて合成すればいいんじゃないか、とも書いてあった。 それに使えるように、スクロールという読むだけで技術を覚えることができる巻物も用意してくれた。 そのスクロールの内容は鑑定で、アダマンタイトを見つけるために使え、とのことだった。試しに、剣に向かって<鑑定>を使用してみる。すると、
--オリハルコンの剣(変更可能)----------
オリハルコンを使って迷宮により作られた長剣。 切れ味と硬度はトップクラス代物。水色と白で彩られており、神秘的な輝きを見せるのが特徴的である
品質:S+
<自動修繕>
こんな情報が頭に流れ込んでくる。 <自動修繕>に意識を集中させると、
<自動修繕>・・・自動で刃こぼれやさびを落とす
こんな情報が頭に入ってくる。
「やけに用意周到な爺だな。 やっぱあの爺には敵う気がしない」
そんなことを思いながら、注目を集めてしまうようなものに認識阻害の魔法をかけて行動することにした。そうこうしているうちに、食事の時間になったので、食事へ行き、食べたのちに水支配の応用で体を洗った。 そこで今、自分が制服の上からローブというおかしな格好をしているのに気づき、明日は洋服を買おうと思い、真也は眠りについた。
真也が岡田によって暗闇に落とされてから、ここまでは、1週間の出来事であった