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自分との対面 迷宮の最下層

 真也がミノタウロスの層から降りて行って3日たった。ミノタウロスのそうから数えて50層、恐らく100層目というところで、今、真也は明らかにこの先にボスがいるといっているような扉の前で一応の準備をしていた。3日の間に、真也が手に入れたものは、宝箱の中から手に入れた、認識阻害の仮面、隠密のローブ、俊敏のブーツ、の3つだ。仮面は、付けていても内側からは外している時と変わらない視界になっている。他人から見ると、自分の顔は見ることができないというものだ。 ローブは気配を薄くし、気づかれにくくするもので、ブーツは込めた魔力の分だけ俊敏があがるというものだ。 ちなみに、今の真也のステータスはこうなっている。

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星野真也 歳:16 男 種族:? レベル 50

職業:剣豪

体力:260000

魔力:260000

筋力:260000

俊敏:260000

耐久:260000

種族固有能力 ・・・(変化なし)

固有技能 <合成>

技術:言語理解 索敵 身体強化 魔力操作 隠密 空蹴 剣豪

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レベルが上がりステータスも上がったが、もはや些細なことにしか感じられなかった。 索敵は、気配察知と、危険探知というスキルを、ダメもとで合成してみたらできてしまった。 身体強化は魔力を使いステータスを1.5倍にするもの。 魔力操作はそのまま魔力を操れるようになり、隠密はローブをつけながら隠れたりしてみたら取得できた。 空蹴は空中を蹴ることができる。剣術は、王都でもらった剣を、壊れるまで振ったときに手に入れていたようで、職業欄の剣士が変更可能になり、剣豪に変えたと同時に、技術名も剣豪へと変わった。


「よし、行くか」


 装備の確認も終わったとこで、真也は目の前の扉を開いた。しかし、その先で待っていたのは


「俺......?」


 高校の制服の姿をした自分だった。 しかし、その肌は黒に変貌しており、魔力もどす黒い何かだった。その時だった。


「!? マズッ」


 初めて真也は焦りを感じた。 自分と変わらない動きをして"俺"はこっちに飛び込んできた。


「グハッ」


 "俺"の手が腹に刺さった。 久々に痛みを感じて、動揺していると、


「なんだ......?」


 手の刺さった部分に火が点き、やがてすぐに消えると、そこは元に戻っていた。


「これは......<再生>の効果か!?」


 恐らくフェニックスから受け継いだものであろう<不老不死>の効果だと予想した。しかし、それに対して、目の前にいる黒い"俺"は無反応で、バックステップで下がっていった。 俺はそれに対して、すぐに冷静さを取り戻し、いつものように魔法を放つ。 しかし、俺は忘れていた。 相手が"俺"であるということは、ステータスも同じということを。 その中にはもちろん<全魔法無効>も含まれていた。


「くそ、お前今、わざと食らいやがったな」


 真也が使える魔法の中には、無属性魔法の、<魔法破壊>もある。 それがあるにもかかわらず、あえて食らうことによってより動揺させていると理解した。しかし、理解しても状況は変わらなかった


「くそ......お前、その体に慣れてやがるな。」


 黒い"俺"と肉弾戦をしているうちに、相手の方が戦いなれていることに気付く。徐々に壁際に追い込まれ、手数も負けていってしまう。そして、とうとう腹を殴られ、壁際に吹き飛ばされた時だった


 「ッ!!! 痛てえな......!?」


 黒い"俺"と目が合った。 そして真也は、意識の底に沈んでいった。

-----------------------------------------------------------------------------

 「どこだここは......?」

 ここにはなにもなく、ただの暗闇が広がっていた。

 その時、目の前に映像が現れた。 中学生の頃の映像だった。 部屋で一人泣いている自分。 そして、その暗い暗い、忘れていた感情が流れ込んでくる。 孤独に慣れる前の自分の、寂しさや虚しさといった感情が、体の中に流れ込んでくる。 それに対し彼は、


「ははっ、そんな時もあったなぁ。 これは大方もう一人の"俺"が発動させた幻覚だろうな。 今更こんなのを見せられたところで何も変わらないっていうのにな」


 彼は少し悲しそうに笑いながらそういった。 しかし、それに対して、


「違うよ。 君は望んでるんだ。 誰かに救われることをね」


 そう、変えるはずのない返事が返ってきた。 そして声の方を向くと、さっきまで戦っていた黒い"俺"がたっていた。


「違うよ、僕は僕だ。 君は感情に、慣れたんじゃなくて、感じることに慣れただけ。 だから君は今、少なからず動揺しているんだ」


 "僕"、それは、真也が昔、使っていた一人称だった。


「だから何だっていうんだ。 そんなことを言ったって何も変わらないじゃないか。 俺に動揺させて俺の体でも乗っ取ろうってことか?」


 少し自暴自棄になりながらそう返した。


「いいや、そういうわけじゃないよ。 僕は君だ。 こうして話すことで、思い出してほしかった。誰かに救われたいと願っている自分がいることを、君に知ってほしかったんだ」


 そういい、少しの間だけ時間を置くと、


「もうすぐ魔法が切れてしまう。 僕は君の一部に戻る。 僕が今持っている知識、感情、すべては君の中に入る。 僕がこの体を使いこなせていたから、君の体に戻った後は、以前よりもっと使いこなすことができるよ。」


「そうか、なら早く戻ってくれ。 時間がないんだろ?」


 もう自分の姿を見ていたくない俺は、そういって話を終わらせようとする。


「うん、そうだね。 もう戻るよ。 でも、僕の言葉を忘れないでね。 向こうの世界では救われなかったかもしれないけど、こっちの世界でなら何かがあるかもしれないしね。 僕が君に戻るときの感情を、大切にしてね」


 少し涙声になりながら、そういった。 そして、


「---------------<合成>」


 そういうと、"僕"は"俺"の中の体に溶け込んでいった。 そうして、再び"俺"は意識を手放した。

------------------------------------------------------------------------------

 起きると、さっき吹き飛ばされた場所に寝ていた。 体を起こし周りの状況を理解すると、なぜか自分の服に雫が垂れたことに気付く。 


「なんだこれ......俺は、泣いてるのか?」


 真也は、自分が泣いていることに気付いた。 そして、気付くと、さらにその感情が溢れ出してきてしまう。 真也は自分の感情を抑えつけることができずに、まるで赤子のように大泣きしてしまった。


「うあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」













































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