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プロローグ

 「くそ、どうしてこんなことに」

 真也は、暗闇に飲まれながら冷静にもそんな風に思っていた。

そんな態度とは裏腹に、彼の表情は今にも泣きだしてしまいそうだった。

とうとう視界の奥の光が見えなくなったと同時に、彼は泣き叫んだ。

走馬灯のようなものが頭の中を駆け巡る中、自分の孤独さを認識して、

悲しみのあまりさらに涙が溢れてきた。


 涙も枯れてきたころ、彼はいまだ加速を続けている自分の状況に気づいた。

その時、視界の奥にギラリと光る鋭い何かが見えた。恐怖のあまり、彼は反射的に

逃げようとした。しかし、その動きに気付いたのか、奥の何かは彼を見つけた。

目と目が合った。そう気づいた時には遅かった。ただ危険を感じることしかできなかった彼は、

必死に体を捻った。運がいいのか悪いのか、彼は右手足を失っただけで済んだ。

だが、痛みに慣れていない彼は何も感じることなくそのまま意識を手放した。

 なぜか暗闇の中で、あれが巨大な生き物だということを、

 失ったのが右手足と確認できたということの意味を。

彼は気づくこともなく飲み込まれていった、いや、入っていった。

地下迷宮の最下層へ。

誰も言ったことがないその階層が、一人の人物に私物化されてるとも知らずに。

その人物が、彼の運命を大きく変える人物だということも知らずに。


「うむ、来たか。」

 そういって、その男は初級魔法<ヒール>を行使した。

男が行使したのと同時に、まるで再生したかのように彼の体は元に戻った。







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