20話 全ては塵に
※あらすじを変更してみました。
章毎の話数に変更しました。こちらは変更前は53話になります。
あと、あらすじの内容を抜かして本文を作成していたため、そのうち追加修正する予定です。
『あらすじ』の意味がわかっておらず、申し訳ございません。お恥ずかしい限りです。
「さて、間もなく接敵するわけだが。」
俺はそう前置きをし、糸をたどりながら皆に作戦を説明した。
「それを加工とは言わないと思うんだが…。でも、本当に大丈夫なんだろうな?」
「多分大丈夫だろう。それよりもタイミングを間違えるなよ?」
「わかっている。俺達も塵になりたくはないからな。」
ルインとカースンはこれで良しと。あとはグレースだな。
「グレース、くれぐれも頼むね。今回も特に問題はないから、決して全力は出さないように。」
「ええ。大丈夫よ。」
「しっかし、イビルメイジはやることがえげつないな。スケルトンがこんなに恐ろしいとは思わなかったぜ。」
ルインとカースンが二人でヒソヒソ話をしている。
「普通あんな使い方しねえよ…。ベリルの頭がおかしいだけだ。」
「聞こえてるぞ。」
俺の言葉に二人は肩をすくめている。
今回は奇策に類する事だし、褒め言葉とでも思っておこう。発言者の意図は絶対違うだろうけども。
それから10分と経たず、俺たちはついに奴らと接触を果たした。
やはり感知した通り40体程が集まり、俺たちを待ち構えていた。腕が多い者、足が多い者、頭が2つある者など、その姿は様々だ。
「わ、わざわざ死ぬために追いかけてくるなんて、お、お前たちは馬鹿なんだな。」
ネロスと言われた者が俺達を悠然と待ち構えていた。もう人間ではないので、元ネロスと言うべきだろうか。
「そうはいっても、どうせ俺達を逃がす気なんて無いんだろう? せめて数だけでも有利にしようと思ったのに、そっち大幅に数が増えてるじゃないか。これは参ったな。」
全く参っていないのだが、俺たちは参ったフリをした。
「ぐふふ…。い、今なら苦しまずに殺してやるんだな。」
そこへルインとカースンが口を挟む。この辺りは予定通りの行動だ。
「ネロス、俺達は仲間だったじゃないか。なんでこんな事するんだよ!」
「そうだ。お前が居てくれたから、俺たちは何とかここまで頑張ってこれたんじゃないか。それがどうしてこんなことをするんだ!」
「う、うるさいんだな。こ、こいつは殺して俺が乗っ取ったんだな。」
元ネロスがムキになって喋った内容が引っかかった。
乗っ取った、だと!?
「せめて死ぬ前に教えてくれよ! お前に何があったんだよ。それを聞かなきゃ死んでも死にきれねえよ!」
カースンが必死に訴えている。これは演技ではなさそうだ。
「ふん、どうせ死ぬんだし少し位教えてやるんだな。お、俺達は移住者なんだな。そしてこいつとは相打ちになったけど、波長が合ったから、そ、その時に取り込んでやったんだな。」
寄生ではなく、死体利用か。誰が相手でも使えるというわけではないようだ。しかし、それと同時にネロスを救い出せる可能性は、これでゼロになってしまった。
二人にしてもあまりにもショックなことだったのだろう。会話が途切れてしまった。
「前のギルドマスターを殺ったというのもお前か?」
すかさず俺が会話を引き継ぎ、元ネロスに尋ねてみることにした。
「勘が鋭くて気づかれかけたからなんだな。さ、流石に強くて3人掛かりだったんだな。でも、お前らがあいつより強いわけがないんだな。」
共存を考えない移住者などと、もはや侵略者だ。だが折角なので、もう少し情報を引き出しておきたい。
「しかし、正直言ってお前達がこんなに居るとは思わなかったよ。参ったな。」
俺は心底困ったフリをする。
「別に拠点はここだけじゃなくて、隣の国にはこれ以上にいるんだな。あの蜘蛛共が居なければもっとこちらに入り込めたのに、残念なんだな。」
元ネロスは自慢気に喋ってくれた。だが、よくもまあペラペラと喋るもんだ。
「それは良いことを聞いた。やはりお前達の次元への入り口があの辺りにあるんだな。」
「わ、笑うな! もう殺してやるんだな!」
俺は思わずニヤリと笑ってしまったのだが、どうやらそれが気に入らなかったらしい。
だが、話に釣られてこいつがペラペラと喋ってくれたおかげで、かなりの情報が得られたのだ。これが笑わずに居られようか。
もう少し情報を得たかったが仕方がない。あらかた聞けたのだから、後は殲滅するだけだな。
後は打ち合わせ通り順調に事を運べば終わりだ。
「そうか。だが、俺たちも簡単にやられるわけにはいかない。」
「雑魚が何人来たところで、む、無意味なんだな。」
「そうでもない。俺たちよりも遥かに強い精鋭部隊にお越し頂いたんだからな。では先生方、お願いしやす。」
俺は昔に本で読んだことがある物語の登場人物ぽく言って、後ろに下がる。
勿論アース・スケルタルナイトが喋るわけもないが、俺の操作を受けて手にした槍を掲げ、一斉に前に進み出た。
それを見て俺達4人は更に後退し、建物の影に身を隠した。
「ならその精鋭部隊から片付けてやる。絶望するが良いわ!」
元ネロスの口調が変わる。元ネロスの言葉にカオス・ヴァリアントシェイプ達が反応し、一斉に身構えた。元ネロスを含めたその数は、こちらのアース・スケルタルナイトと同数である。
「さて、どっちが絶望することやら。」
俺は建物の影から奴らを挑発した。傍目にみたら逃げ隠れたやつが挑発とか格好悪い場面だが、これも作戦の内である。
「自分は隠れているくせに。まあ良い。力の差を思い知らせてやるわ。全員一斉にかかれ!」
「全軍突撃!」
元ネロスの声を聞いた俺は、アース・スケルタルナイト全軍に突撃の命令を下す。
アース・スケルタルナイトの軍団が槍を構え、突撃を開始した。
見た目は大理石の甲冑騎士だがその動きはかなり早く、ただのスケルトンではまず出せない速度である。
一体一体がバラバラの動きであれば付け入る隙はあるだろうが、魔法的に作り出された集団は動きに一切の乱れが無いため、かなりの速度で突撃を受けると正面からでは対処し辛いはずだ。
それに見た目が甲冑騎士なので、すぐにはスケルトンだとは気づかれないだろう。
「その程度で勝てると思ったか。だから人間は愚かなのだ。」
「一気に突き刺せ!」
俺は元ネロスの言葉を無視し、そのまま指令を出す。
だが、槍の先端が奴らを捉えかけようとしたその時、カオス・ヴァリアントシェイプ達は一斉にアース・スケルタルナイト達を飛び越え、その背後に回った。
アース・スケルタルナイト達が目標を見失い、突撃していた足が止まる。
ドガッ、バキィン!
アース・スケルタルナイト達が振り返る前に、その全ての背中がカオス・ヴァリアントシェイプ共に一斉に貫かれた。背中から体を貫通して胸に抜けており、その姿は胸から腕が生えているようにも見える。
胸を貫かれたアース・スケルタルナイトは、その動きを停止した。
「ハハハッ! 口ほどにも無い。全員一撃でくたばりおったわ! 次はお前らだ!」
歓喜の声をあげ、ご機嫌の元ネロス。どうやら有頂天になっているようだ。
「やったわね!」
「楽しそうでそれは結構、結構。人生最後の高笑いになるんだ。思い残すことが無いようにな。」
グレースも俺もご機嫌であった。ここまでうまく事が運ぶとは思わなかったので、とても嬉しかったのだ。
「うわー、鬼畜だ。」
「滅茶苦茶嬉しそうだなあ。」
その反面、ルインとカースンの二人は冷静である。さすがはアサッシンだと感心しておこう。
「何を言っている? お前たちの精鋭は、この通り全員胸を貫かれて……。」
そこでハタと気づいたような顔をした元ネロス。焦りが顔に出ている。
「ようやく気づいたか。」
「ぬ、抜けん。腕が抜けん! 貴様何をした!」
焦る元ネロス。アース・スケルタルナイトから腕を抜こうと必死になっているが、ガッチリと食い込まれた腕は中々抜けないようだ。
それも当然の事だ。俺がそのように加工してあるのだから。
「そっちもペラペラと喋ってくれたからな。教えてあげよう。それはトリモチだ。」
アース・スケルタルナイトは大理石ような光沢のある石で出来た甲冑を着たスケルトンである。このスケルトンは骨を組み立てて魔法を動力にして動く存在であり、他に余計なものはついていない。
つまり甲冑の中身は骨以外空洞なのだ。そこで甲冑の内側にトリモチのような物質の層を作ることで、貫通した腕を容易に抜けなくしているのである。
そしてこのトリモチは、大理石タイプの石の破片が飛散することを防ぐという非常に重要な役割を担っている。これがあることで、次の段階でより効果的な結果を生み出す事が可能となるのだ。
「忌々しい奴め、嵌めおったな。だがな、また跳んで逃げれば済むことよ。どの道、貴様らではこちらに勝てんのだからな。」
実は俺たちが奴らに襲いかからずに会話を続けていたのは、さらなる増援を警戒していたからだった。
確かにこのままにしておけば、奴らは空間跳躍で逃げてしまうだろう。だが、どうやら増援はこれ以上無い様だ。最早遠慮する必要もなくなった。
「時間稼ぎすら出来ないのかよ!」
俺が悔しそうに叫ぶ。これは勿論演技である。
「フハハハ! 怯えるが良い!」
その一瞬の油断が命取りだ。逃げられる前に仕留める。
「伏せろ!」
俺の言葉で、全員が地面に伏せて耳を塞いだ。直後に俺は指を鳴らす。
すると俺が事前に仕掛けた魔法が発動した。アース・スケルタルナイトが発光し、内部から赤い光が漏れ出る。
俺は即座に結界魔法を展開した。ルインとカースンは自分で身を守れないのでこれは当然の措置だ。
その直後、アース・スケルタルナイト達を中心に大爆発が発生した。
ズドォーーーーーーン!
強烈な光と大音響が辺り一面を支配する。目を耳の防護まで手が回らなかったせいもあり、しばらく耳鳴りが止まず、目も開けていられない状態が続いた。
光が収まった後、俺は素早く全員の状態異常を解除して状況確認を行う事とした。
「ああああああああああああっ!」
目の前に広がる光景を見て、ルインとカースンが絶叫している。
「大声で叫ぶなよ。子供か。」
「こんなの叫ぶに決まってるだろうが! お前、さっき大丈夫って言ってたよな!? てか今の爆発のほうがうるさいわ!!」
「内部に詰め込んだガスの爆発で奴らを一気に消し飛ばすとは聞いたが、あんなに大爆発するなんて聞いてないぞ!」
「だから、皆が怪我しないようにしたし、天井は崩れないように結界を張っただろう?」
「やりすぎだ! 辺り一面何もないじゃねえか!」
目の前には直径300メートルほどのクレーターが出来上がっているのだった。
「あれでも工夫して爆発規模を小さくしているんだがな。」
「そうね。あれ以上弱ければ、逃げられる可能性が高かったわね。」
しかし二人ともその言葉では納得出来ないようだ。
「工夫とか適当言うなよ!」
「あの大理石の甲冑さ。あれが細かい破片になって、爆発時の殺傷力をあげているのさ。」
「甲冑を薄くしたのは、奴らに突き破らせるためだけじゃなかったんだな。」
「ついでに言うとトリモチもだ。爆発前に甲冑が崩れ落ちたら、当然その分殺傷力が低下するからな。」
「じゃあ、しょうがないか…。しょうがないのか?」
「まあいいじゃない。とりあえず目的も果たせたことだし、一度戻りましょう?」
それでもグチグチいうルインとカースンであったが、俺は軽くスルーしておくことにした。他にやりようがなかったのだから、しょうがないと思う。
ひとしきり文句を言った二人であったが、これ以上言っても無駄と悟ったのか、俺達と共にひとまず現場から立ち去るのであった。
「クレーターの中に、赤いトレーラーを発見したぞ!」
※こんな展開はありませんのでご安心ください。あってもすぐに埋め戻させます。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
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