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15話 神の使徒

「あの遺跡に悪魔がもう居ない。ということになると、誰が殲滅したかということになるな。」

「確認されているのはナイトストーカーだけなんでしょう?

シュタイナーさんが倒したことにすればいいのでは。」

俺が見る限り、シュタイナーの実力ならナイトストーカーくらい余裕で倒せるだろう。

「確かに俺ならナイトストーカーくらい倒せるけどな。

だが、ギルドマスターがそんな簡単に街から出歩くわけにもいかないんだ。

それに今回のことは既に騎士団に要請している。

その俺が討伐したとなったら、いくらまだ動けていないと行っても騎士団が良い顔をしないだろう。

倒せるなら最初から自分でやれとな。」

出動を要請しておきながら、騎士団はゴタついて動きが遅いから自分でやりましたでは、騎士団は役に立たないと公言しているようなものだもんな。

「それに、偵察した者から何かを守っているようだという報告があります。

これは騎士団にもそのまま伝わっていますので、ナイトストーカーを倒してそれで終わりというわけにもいきませんね。」

アレクシア嬢が補足した。


「そうなると、誰かが勝手に倒したってことにするしかないですね。」

「ああ、ってなんでそうなるんだ。」

「でも殲滅したのが俺だって事がバレたら、確実に注目の的になるでしょう。俺はそんなの嫌だ。」

「嫌だとか、お前は子供か。」

「諦めましょう、ギルドマスター。ベリルさんはこういう人みたいですから。」

「そんなわけで誰かが倒していなくなっていたってことにすればいいでしょう。

それに奴等が守っていた理由は、アークデーモンの拠点だったからですよ。」

「そうか。ならばナイトストーカーは門番のような存在だったわけか。

悪魔は上位者の命令には絶対遵守だからな。ところで遺跡の中には何があるんだ?」

「そうですね。最奥部には玉座代わりにつかっていた椅子がありました。

あと書斎にはベッドもありましたね。別の部屋には薬研もありました。

価値ある物は全部俺が貰いましたので、後は執務机、椅子、本棚、ベッド、薬研の器具くらいかな。

それと寝具もありましたので、クッションが発見されたといってもおかしくはないですね。」

「中に入ったら価値あるものは全然なかった。それでクッションを持ち帰り、中を取り出してみたらクイックバードの羽毛が入っていて、奇跡の品質だった。そういう話にすれば大丈夫そうだな。」


「それと、本棚に仕掛けがあってその隠し階段から行ける地下室がありましたよ。

そこに白骨化した遺体と魔法陣がありましたね。」

「魔法陣? 召喚陣か。恐らく術者が悪魔召喚をしたものだな。

遺体ってことは事故ったのか、あるいは召喚中に病死したのか。」

「普通は術者が死亡すると契約が切れるらしいので、悪魔は勝手に送還されるはずです。

あそこには悪魔がはびこっていたので、おそらく何らかの不備があったのではないでしょうか。」

術式の記述にミスがあった等の具体的な事は言及せずに伏せておく。

悪魔の召喚術は適性者自体が少ないものの、書物から学ぼうと思えば学ぶことが出来る。

ただ、暗黒属性適性が無い者はインプですら召喚がおぼつかない。

まともに使えば、術者は悪魔に取り込まれて即座に殺されるからだ。

今や邪神の神官等のごく一部の人間しか身に付ける者はいない。

当然死属性魔法と並ぶほどに暗黒属性魔法も嫌われている。


「何れにしても悪魔はもう居ないのなら、筋書きを作ればいいな。

再度様子を確認にいったところ、悪魔は全て居なくなっており中は全てもぬけの殻だった。

人知れず神の使徒が現れて倒していったのだろう。

簡単に作ってみたが、こんなところでいいんじゃないか?」

「『魔神殺しの大賢者』が動く所、神の使徒があり。有名な言葉ですが、ギルドマスターはそれを使うというわけですね。」

アレクシア嬢の言葉にシュタイナーはうなずく。

「そういうことだ。実際に見たものは誰もおらんのだからな。

それに実際ベリルが悪魔を滅ぼしたのも事実だ。文句も言われまいよ。」

「そうですね。しばらくは騒ぎになるでしょうが、我々が羽毛を流通させるまでの事でしょうね。」

「見えない財宝より眼の前のお宝って事だな。」

「儂はベリルが神の使徒っていう方が話がわかりやすいんだがな。」

「冗談はよしてくださいよ。俺はただの人間ですよ。」

神の使徒が死属性魔導師のわけがない。どっちかっていうと邪神のほうが近いな。

「ともかく、その線で行こう。まずは誰かを派遣して現場の確認をさせよう。

アレクシア、人選は任せる。」

「畏まりました。早速に。」

「くれぐれも俺のことは内緒にしてくださいよ。」

「わかっています。ハンターギルドの名誉にかけて誓います。」

そう言って、アレクシア嬢は退室していった。


「さて、それでは今回の件での買取額を渡しておこう。

先に説明しておくがクイックバードの羽毛は、1羽分は王家へ献上ということになるので残り2羽分の代金になる。

金額は暫定として、競売の結果が出たら差額を支払う。

ただし、お前さんの名前を出さないという条件で動くとなると別途で税金が絡む。

一端ギルドの所有になるので、すまんが利益の5%は税金で引かせてもらうことになる。

その他の説明はロランに任せる。」

「待たせてすまなかった。本来なら即日支払うものなのだから申し訳ない。

ともかく内訳の説明をしていく。

まず猪肉が42キロあった。1キロ辺り銀貨3枚なので銀貨126枚。

クイックバードについてだが、肉は1キロ銀貨50枚で12キロだから銀貨600枚。

あと3羽分の羽根と2羽分の羽毛の内訳が、羽根が銀貨20枚が3羽分で銀貨60枚で、羽毛は2羽分で金貨100枚とさせて貰った。

羽毛は競売にかけるので、取引完了後に差額を補填する。

ただし全体の5%は税金として国に納めないといけないのでその分は天引きさせてもらう。

今渡す分として合計から金貨5枚を天引きして、残りが金貨102枚と銀貨86枚になる。

中身を確認してくれ。」

俺の前に大金貨10枚、金貨2枚、大銀貨8枚、銀貨6枚が入った袋が置かれる。

なんだこの大金は…。ただの狩猟でこの稼ぎはちょっとおかしいように思う。

この前まで里暮らしで銅貨すらほとんど触らない生活だったから、余計に現実感がない。

「ぼーっとしてどうした。中身を数えなくていいのかい?

まあ、ごまかしてないから安心してもらっていいけどね。」

「いや、構わないですよ。金貨や大金貨なんて見たことも無かったから、これが本物かどうかわからないだけなんだ。」

「村から出てきたってのは本当なんだな。この街に住んでたら、さすがに見たことあるはずだしな。」


「ともかくこれで一先ずは取引完了だけど、競売は周知に時間がかかるから、お金に変わるまで10日はかかるとみて欲しい。」

「そこはロランさんに任せますよ。ただ、1つお願いがあります。

金貨や大金貨は使いづらいので、せめて何枚かは銀貨や大銀貨にして貰えると助かります。」

普通の支払いの基本単位は銀貨と銅貨になる。

金貨は桁が大きすぎる上に両替手数料を取られるので、敬遠される事が多い。

両替は商業ギルドの領分だが、利便性を考えて各ギルドでも行っている。

それはギルドの大事な収入源になるのだ。

「わかった。お前さんはここのギルドでなら手数料無しで両替出来るように通達しておく。いつでも来てくれて良い。」

さすがギルドマスター。決断が早い。まあその分両替手数料以上の利益を与えているからな。

「王家への献上については、儂の方で進めておこう。」

「すまんが頼む。今の所この話は以上だな。皆ご苦労だった。」

シュタイナーが締めくくり、解散となった。グレイとロランが退室していった。


「それで、ベリルはこれからどうするんだ?」

「とりあえず他のギルドでも行ってみようかと。」

「ん? なんでだ?」

何を言ってるんだこいつはという顔をするシュタイナー。

「なんでって、無職だからに決まっているでしょう?」

「ベリルは昨日からハンターになっただろう?」

それをきいて俺もシュタイナーと同じ顔をしたと思う。

「確かに俺は昨日登録しましたが、どちらかというと動物専門です。それに猟師をするとは言いましたが、専業にするつもりはないですからね。やっぱり安定した職業につきたいので。」

「そりゃあ、ハンターギルドは重複加入可能だけどさ。お前の実力があればいくらでも稼ぎ放題だろうに。」

「何言ってるんですか。俺は静かに暮らしたいんですよ。なら、手に職をつけるほうが良いに決まってるじゃないですか。」

「しかしなあ…。」

「ドカーンと1発稼いで休むっていう働き方を否定はしないですけどね。でも俺は自分の店を持って商売をやってみたいんですよ。」

どうせなら得意分野の魔法を使って身を立てたいからな。戦場で生きるならそれで良いんだろうけど、何とか平和利用を考えたい。

商品の主体は発酵食品なるだろうから、種別としては乾物屋になるのかな。仕入れ先を見つけないといけないから、そのうち他の街にも行く必要があるな。


「まあそういうわけなんで。お世話になりましたー。」

そそくさと退出しようとする俺の腕をシュタイナーが掴んできた。かなり力が入っている。

「悪いが俺にそういう趣味はないんだけど…。」

「ちがうわ! お前の実力を見込んで頼みがあるんだ。」

何やら俺に頼みたいことがあるらしい。

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