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みんなの様子がおかしい

 ああ、ついに俺の黒歴史が公開されてしまった……もう終わりだ……。


【エディット・ツクラー】

【年齢】見た目は14だが本当は10000

【職業】真の勇者

【HP】99999/99999【MP】99999/99999

【攻撃力】9999【防御力】9999

【魔力】9999

【保有スキル】全看破眼、スカイストリームソード、アルティメット・スペルマスター、スキルテイカー、邪竜眼

【称号】神に愛された聖戦士


『編集』


「ん、なんだこのステータスは?!」

「あ、あなたエディの職業が『真の勇者』になっているわ!」

「それに保有スキルもリリィよりも多い5つだ……そして【称号】神に愛された聖戦士、これは俺も初めて見るぞ!」


 あれ?

 みんな真に受けてない?

 ちなみに【称号】の欄は正確には【保有スキル】のところに『【称号】』を書き込んだだけなので正確には存在しない。


「エディのステータスにフェイクがかかっている可能性は?」

「それはないはずです、この魔道具で出現させたステータスはフェイクの有無も判別しますので」


 そりゃフェイクで本物のステータスを被せたんじゃなくて、本当に自分のステータスを『編集』したからな。


「……となるとエディのステータスは本物か」

「遂に……うちの村から『真の勇者』が現れただと……」

「それにすべてのステータスがカンストしているわ、歴代の勇者をはるかに凌ぐ資質をお持ちよ」

「ならこの日がくるまでエディは無駄な騒ぎが起きないようにフェイクをかけていたのだろう」


 おいおいおい、村のみんなが本気で俺のステータスを信じ始めたぞ。


「俺……エディは昔から他の奴らとはどこか違うとうすうす感じていたんだよ」

「エディは俺たちが生んだの息子だったと今まで思っていたが、もしかしたら天が俺たちにエディを、未来の勇者を預けてくれたのかもしれないな」


 おいおいおい、俺の数少ない友達や果ては両親まで俺の出生を否定し始めたぞ。そして村人たちが俺が『真の勇者』であるという証拠を記憶から捏造し始めた。


「11歳の深夜に屋根に登って月に向かって叫んでいた」 

 行商から買ったコーヒーを飲んで興奮して眠れなかっただけです。


「『明日大嵐が来るかもしれない』という予言が見事的中した」

 それ月に1回くらい口走っているし、本当に偶然当たったのは1回だけなのだが。


「エディおにいさんの青汁飲んだらおかあさんの病気が治った」

 多分気のせいです。俺が作ったのは青汁のような何かです。でも治ったのかよかった。


「やはりエディ様は本当に『真の勇者』であらせたか……!」

 

 いつのまにかエディ”様”になっているし、本当にどうしたんだ……。こんなデタラメのステータス、一目見るだけでありえないってわからないのか?

 まずいまずい、やばいやばい。これ以上騒ぎになると本当に俺が『勇者』として送られる羽目になるぞ。スライムすら倒せない俺が魔王?無理無理無理!

 

 早いところこのステータス俺が好き勝手いじっただけなので『真の勇者』は嘘でした、って白状しないと……。

 今現在『勇者』リリィの尻に敷かれたままなので抜け出そうとするが、その前に急に彼女に抱きつかれてしまった。リリィの柔らかくて大きなものが胸に押し当てられる。


「は、なんだお前急に……」

「ねえ、あなたって前から思っていたんだけど、ちょっと、なんとなく、そこはかとなく、カッコイイよね?」


 何を言っているんだお前は。急に頭にウジが湧いてしまったのか?あと褒めるところは俺はそんなにないのか?

 ついさっきまであんなに俺に毒舌吐いてマウントをとってきたくせに、俺のステータスを見て急に態度を変えやがった。糸繰り車もびっくりの手のひら返しだよ。


「は、離せよ」

「ねえ、エディは私のことが嫌いなの?勇者である私の真の勇者のエディとの間にできた子供は、それはきっと素晴らしいステータスの子供になるはずよ……」


 ステータスを見た瞬間急に態度を変えるお前がキモいんだよ!


 マズイ


 早く、早く全てのことを話してしまえ、と俺の理性が叫んでいる。このままだと俺はは周囲の人たちから勘違いされたまま、モンスターや魔王軍と戦わされ、無残に殺される。そんなのは嫌だ嫌だ嫌だ。


 でも、


「15年間私の息子を育てて、ここまで報われたと思った日はありません」


 両親は感涙にむせび泣き、


「いままで何人も勇者を送り続けましたが、戻って来たものはおりませんでした。きっと真の勇者様であらせられるエディ様が魔王を倒し、世界に平和をもたらしてくださるだろう」


 勇者として送り出された自分の息子が未だに帰ってこない村の老人は、祈りを天に捧げていた。


 誰も、俺以外の村人の誰もが俺のことを『真の勇者』であると信じて疑わないのだ。

 俺は彼らの期待を裏切ることはできるのか?


 真実を話せは俺はそれまでかもしれないが、それ以外の人たちは大きく落胆してしまうだろう。

 俺がこの生まれた村が好きだ。なんだかんだあったがここが俺のふるさとで、ここには両親や知り合いがたくさんいる。

 そんな俺の村の人たちを悲しませたくない。


 多分後でめちゃくちゃ後悔する選択肢だろうけど、俺は『嘘』を突き通そうと思う。でもリリィ、オメーは許さないからな。

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