ステータスを『編集』してみた
この世界には『ステータス』と呼ばれるものがある。
ステータスとはこの世界すべての人間に与えられたパラメーターであり、この数字の大きさによってその人の強さを測ることができる。と口頭で説明してもわかりにくいかもしれないので実践してみよう。
「ステータスオープン」
すると虚空に四角い枠が現れ、その中にはいくつかの文字列が並んでいる。
【エディット・ツクラー】
【年齢】14
【職業】無職
【HP】20/20【MP】13/13
【攻撃力】15【防御力】10
【魔力】3
【保有スキル】なし
『編集』
このように俺自身のステータスが表示される。ここに書いている【職業】無職は別に俺がニートなわけではなく、モンスターとの戦闘で必要とされる役割のことである。
この国では15歳になると天から【職業】を与えられ、『勇者』や『賢者』などのレアな職業を与えられた人間は国から召集がかかり、魔王やモンスターを退治するための『勇者部隊』といわれる部隊に配属されるらしい。もっともその確率は数万人に一人いるかいないかという確率なので、俺がなれる確率は皆無に近いが。
それ以外のステータスも基本的に戦闘にしか影響はないらしく、せいぜいHPが高い人は総じてマッチョな人がおおい、というくらいである。
俺のステータスはMP以外平均より低いくらいだが、村人として一生を過ごすのならば別に気にすることはない。
でここからが問題なのだが、ステータスの一番下に『編集』という文字が書かれているのだ。
未知の言語なのでどういう意味かはわからないが、そこを指で押すとステータス表示が点滅しだす。『編集』を再び押したり、時間が経つと元に戻る。
他の人に『編集』のことを聞いてもわからないとしか返事がかえってこず、実際にステータスを見せてもらっても『編集』という欄はどこにもなかった。そのため今まではなんとなく不気味で、そのまま放置してきた。
とはいえこの『編集』が何であるのかというのは興味があり、15歳の『選定の儀』といわれる職業をもらえる機会の前にぜひとも試してみたい。
『編集』
『編集』をタップするとステータスが点滅し始める。いままではここで不気味がって何もしなかったが……おそるおそる【職業】をところタッチしてみる。
【職業】無職|
ステータス全体の点滅が止まり、代わりに無職の文字のとなりに『|』が点滅し始めた。
前からこの「無職」という響きがなんとなくいやだから消したい、とおもったら、
【職業】|
ステータスの「無職」の文字が消滅した。慌てて元に戻そうとおもったらまた「無職」の文字が復活した。
となると……、俺は試しに「無職」の文字を消して「勇者」を入れようと思ってみる。すると
【職業】勇者|
という表記になった。
これは大発見だ!この『編集』はステータスの表記を好きに書き換えることができるのだ!職業以外の欄もためしてみるとこれらも同じく書き換えが可能だった。
というわけで調子に乗って俺のステータスを俺の思うがままに『編集』してみた。
【エディット・ツクラー】
【年齢】見た目は14だが本当は10000
【職業】真の勇者
【HP】99999/99999【MP】99999/99999
【攻撃力】9999【防御力】9999
【魔力】9999
【保有スキル】全てを見通す目、絶空両断剣、すべての魔法を極めしもの、スキルテイカー
……調子に乗りすぎた。【】内は『編集』できなかったがそれ以外のステータスは『編集』が可能だった。とりあえずHPから魔力までを書き込める最大の数値にして、保有スキルもとりあえずかっこいい名前のスキルを適当に作って書き込んでみた。
しかしこれを知り合いに見られたら絶対に笑われるだろうし、なにより自分の趣味をさらけ出している気がするからすっげえ恥ずかしい。ステータスは他人が見るためには、本人の許可がない限り見ることはできないので隠すことはできるが。
恥ずかしいし元に戻そうかなあこれ。でもかっこいいからステータスはしばらくはこのままにしておこう。
『編集』を再びタップすると、ステータス画面は元に戻ったが内容は『編集』をしたとおりになった。
【エディット・ツクラー】
【年齢】見た目は14だが本当は10000
【職業】真の勇者
【HP】99999/99999【MP】99999/99999
【攻撃力】9999【防御力】9999
【魔力】9999
【保有スキル】全てを見通す目、絶空両断剣、すべての魔法を極めしもの、スキルテイカー
『編集』