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4 少女二人の初遭遇

 ほうほうの体で練兵場に辿り着いたものの、練兵場は閑散としていた。


「あれ、何かあったのかな」

「はっ……はっ……はぁっ……」

「詰所の方に行こっか。……大丈夫?」

「はぁっ……すみませっ、もう、少し……」

「あ、また……もう行くよ、ラヴィス!」


 何やら怒った様子のリーネ。そのまま先に行ってしまった。


「はぁ……ふぅ……あぁ、そうか、喋り方か……」


 息が整ったところで、遅まきながら失態に気付いた。リーネを追って騎士団詰所へ向かう。


ーーーーーーーーーー


「リーネ?」


 詰所に着いたところで、リーネが中から出てきた。


「あ、ラヴィス。ねぇ、ここに来るまでに騎士団の人誰か見なかった?」

「ううん、誰もいなかったよ」

「そっか……あのね、ここにも誰もいなさそうなの。絶対誰かいるから困ったら来いってお兄ちゃん言ってたのに」


 確かに、ここの騎士団の役割を考えると詰所が無人というのはおかしい。リカルド曰くこの国の騎士団は第十二まであり、それぞれ役割が決まっている。第七騎士団は主に帝都外縁部の警らを任されており、平常の見回りとは別に通報を受けて動く人員が常に待機しているはずだった。


「私も行くから、もう一度一緒に探そう?」

「あ……うんっ!」


 不安げなリーネの手を取り、詰所の中へ。詰所の大きさは世界一般で言えば屋敷サイズだろうか、子供二人が歩き回って探すには些か広い。


「すぅーっ……誰かいませんかぁーっ!!!」


 リーネのよく通る声が屋敷中に響き渡る。聞こえないということはないだろう。


「……やっぱりいないのかな?」

「ちょっと奥まで行ってみようか」


 エントランスを抜け、裏へ入る。見つかったら面倒なことになるかもしれないが、見つかるために入っているのだと割り切るしかない。そのまま奥へ……不気味なほど静かだ。


「誰かいませんかー……」


 疲れたのか、リーネの声もだんだん小さくなっている。一通り回ってみたが、結局誰にも遭遇しなかった。


「ここにはいなさそうだし、外に出て探そっか」

「うん……」


 不安が増してしまったのか、私の手を握る力が強くなっている。……早く外に出よう。


「あれ、今……」

「どうかした?」

「ドアの閉まる音が聞こえたの。誰か詰所に入ってきたような気がする、戻ってきたのかな」

「私は聞こえなかったけど、リーネが言うならそうかも。……あんまり音を立てないようにして」

「どうして?」

「もしかしたら悪い人かもしれないでしょ?今騎士さんたちいないもの」


 そっか、と呟いたリーネと共に静かにエントランスへ向かう。物陰から覗いてみるが、そこには誰もいなかった。


「うーん、聞き間違いかなぁ。出よっか……あれ?ってちょっと、ラヴィス!?」


 正面扉の方を見ているリーネの視線の先に目をやると、先ほどはなかった長方形の紙が扉に貼り付けられていた。瞬間、私はリーネの手を引き受付カウンターの中に隠れる。事態は深刻だった。


「リーネお願い、ここで静かにしてて。何があっても絶対ここから出たらダメ」


 訳がわからないといった表情だが、ややあって頷いたリーネをおいてカウンターから出て、長方形の紙に近づいた。そして、疑念を確信に変える。間違いなく記録で見たものと同じだった。

 札には少なくともこの国のものでない文字が書かれている。そして私はこれを知っている。

やはりいるのか、この世界に。私と同じように飛ばされた連中が……


 薄々わかってはいたが、認めたくなかった。術も使えない、身体も優れない小娘に成り下がった私が、特異かつ強力無比な固有能力を持つ囚人相手に何が出来るというのか。……しかし、いつまでも腐ってはいられない。準備次第で世界を掌握できる囚人は何人もいる。いつかは当たる壁だった。その為にまずこの世界に順応し、それからの動きを考えるつもりだった。

 だが、出会ってしまった。これはもう発動している、この扉から逃げることは不可能。危険を承知で隠れ続けるか、どこかから外へ逃げるか……仕掛けた者を殺すか。


囚人番号214、前名、ヴィジル。非常に好戦的。能力は特殊な札の生成。生成の対価は本人の毛髪。意思のないものに対し札を貼り、可能な限り書かれた言葉を順守させる。札の効果範囲は半径3メートルほどの球形。それを超えるものは動かせない。貼るのは誰にでも出来るが、剥がす事はヴィジル本人でなければ不可能。この扉はもう「開かない」。


 記憶を辿りながらカウンターへ戻る。

前世では主に普通の兵器を無人兵器にしたり死体を操ったりしていたようだが、この世界にそこまで便利な兵器はない。出来るとしたらトラップの類か。兵器頼りで、本人の戦闘力もさほどではない。不意を打てば可能性はあるか。


 カウンター下に潜り込むと、不安げなリーネの姿があった。

……私一人ならいいがリーネを危険に晒す訳にはいかない。迂闊なことは出来ないな。


「あの、ラヴィス?何かあったの?」

「……危ない人が入り込んじゃったみたい。扉からも出られないから、もっとちゃんと隠れられるところに移動しよう」

「えっ……っ!だ、誰か来る!」

「……落ち着いて、呼吸を整えて。大丈夫だからね、リーネ」


 私の耳にも近づいてくる足音が届いた。今にも飛び上がりそうなリーネを抱きしめ、背中を擦ってやる。彼女の心臓は早鐘を打っていた。


 そして、エントランスに何者かが侵入する。

思った通りに書くと全然字数いっていなくて愕然とします。

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