影怪魔といっしょ!
「ところでこの全身真っ黒の怪魔は何者なのだ?」
魔王レディ・サタンが怪魔達を一斉に世界各所に送る前、はカタログ内の怪魔の画像が黒く塗りつぶされている怪魔を発見した。
「あぁ。そいつらは影怪魔という影の世界に潜む怪魔となっておりまして暗闇の場所に潜むことができる怪魔となっております。暗闇といってもかなり制限はなく、昼間でも他人の影に潜むことも可能です。」
「つまり、こやつが転生者どもの影に潜み、そのまま殺すことも可能ということか。」
「あぁはい。もちろん可能です。」
そしてレディ・サタンは影怪魔が載っているページをじっくり見ているとあるページで止まり、ある怪魔を指差した。
「それではこやつにしよう。」
「え〜と、すぐに出撃させますかぁ?」
「いや。こやつにはこの街で待機させ、時がきたら転生者どもを始末するようにする。」
「じゃあそういうことなので。…ギリマキくん、いっといてねぇ〜。」
ここはガルデの街
貴族ガルディオス家が治る大きな街である。
そしてアズマとアカルは山を超えて、この街にやってきた。
「おぉ〜大きな街並みだねぇ!」
「今度はこの街に宝玉の手がかりがあるらしいが…うん?」
すると後ろから突然聞いたことのある声がした。
「みなさ〜ん!ご無事だったんですね!」
「あっ!ミリアさん!何週間ぶりだね!」
アカルはミリアの手をとり、ぶんぶんと握手した。
「うわぁ!?アカルさん!?」
「やめろアカル」
「いって!?」
アズマはアカルの頭を叩くとアズマが前に出てきた。
「ミリア、一体何をしてるんだ?」
「はい!私は恵まれない方々のために各地を回って配給を行っているのですが…素晴らしいことにここには配給が必要な方が少ないですから、少々街を歩いてたところです。」
「そうなんだ!ここの貴族様はとっても優しい人なんだね!」
「いい人だけでは領主ができるということではないと思うが…まぁでもきっととても良い方なんだろうな。」
そんな会話をしている中、アカルはミリアに例の宝玉を渡した。
「そうだシスターさんこれ!宝玉だけど」
「あっ!無事に手に入れたのですね!?それではこれは私が責任を持ってお預かりして、教会に届けます。」
そしてミリアは2人にむかって微笑むと宝玉の手がかりについて話し出した。
「次の宝玉はその貴族様であるガルディオス家の方が知っているはずです。ガルディオス家はこの街の方によると人柄も良く温厚な方だと聞いておりますのでおそらく他の貴族の方に比べてコンタクトは取りやすいと思いますが…」
「うん!情報ありがとうシスター様!ってぐえぇ!?」
「ほら。さっさといくぞアカル!」
ミリアに抱きつこうとしたアカルの服を引っ張り、アズマ達はガルディオス家に向かって歩き出した。
「キキキ…どうやらあの転生者の2人はこの街に来ているようだなぁ。」
街の路地裏に
目は渦巻で口は裂け、頭の横に翼のような触覚がはえた全身真っ黒の悪魔のような怪魔
が影の中から出現した。
「ケッケケケ!さあぁてぇ?俺様のこの鎌でズタズタに引き裂いて……うん?」
その怪魔は後ろに何かの気配を感じ、後ろを振り向くとそこには高そうな服を着てブローチと耳にイヤリングをつけた年齢1ケタくらいの女の子がいた。
「……あなたは…誰ですか?」
「…………」
怪魔はその娘に静かに近づくと腰を落とし、彼女の目を見てとても優しい声で話し始めた。
「うん?どうしたのお嬢ちゃんこんなところでぇ?友達と遊んでいるの?かくれんぼ?」
「………いえ。違います。…ジェームスとはぐれてしまいました。……」
「あっらぁ迷子になっちゃったのねぇ〜お腹空いてない?ほら、チョコレート食べる?あとほら。黒飴ちゃんもあるよ。」
怪魔はその娘にお菓子を渡そうとした。
「いえ…結構です…知らない人にお菓子を受け取るのはダメといわれているの…」
「おぉ〜そういうこともう学んでるんだ賢いねぇ〜……あっ!おじさんのことは影のおじさんって呼んでね!」
「………影のおじさん……」
かなり陽気に振る舞ってみても一向に警戒心を解かない娘に怪魔は頭を抱えていた。
(そらそうだよな!こんないかにも魔物です!って見た目してんのにこんな陽気に話しかけられたら逆に怖いよな!というかキモいよな!)
「….ジェームス…どこ…?」
とはいえ怪魔は娘のことを放っておかなかった。
「よし!おじさんがそのジェームスって人のところまで案内してやろう!」
「…えっ!?」
すると怪魔は唐突に暗闇に潜ったあと
「ごめんひっぱるよ。」
「キャッ!」
その娘も暗闇の中に引き込んだ。
「…何ここ?…」
「ここはおじさんたち闇の住人がいける影の世界さ。ほうら!上を向けば地上が見えるだろう!」
娘は周りを見渡すとそこは暗く光る空間の中にいた。そして上を振り向くさっきまでいた路地裏が見えた。そして路地裏もどこか朧げに黒みがかって輝いていた。
「…不思議な感じ…でもどことなく綺麗…!」
「ギギギ!手は離さないでね。落っこちちゃうから。」
そして怪魔は泳ぐように影の世界を進んでいった。
「えーっとここは街道を進んでいるけど…そのジェームスって人はどの人かな?まだいない?」
影の世界の街の街道までいった怪魔は一旦止まり、そこで娘にジェームスを探してもらっていた。
「あっ!ジェームス!」
「おー!見つけたか!よかったよかっ…!」
しかし怪魔はここであることに気づく
(そういや見つけた後のこと考えてなかった!どうしよう。ここからこの娘出しても絶対怪しまれるよなぁ…)
怪魔は周りを見渡すとそこにちょうどいい路地裏があった。
(よし!あそこだ!)「いいかい嬢ちゃん。あそこの路地裏で君を地上に戻すからそしたらそのジェームスって人のところまでいってね。」
「…うん!」
多少の警戒心を解いたその娘は元気よく返事した。
その後、路地裏で下を向きながらその娘を押し上げて地上に戻した後、その娘は無事、ジェームスのところへ走っていった。
「ジェームス!」
「おぉお嬢様!探しましたぞ!」
「…ごめんなさいジェームス…気になるお菓子があったから…」
「いいぇとんでもない!私が目を離してしまったゆえの悲劇であります。誠に申し訳ありませんでした。」
「ううん。私が悪いの…」
「お気になさらずお嬢様。さぁ旦那様のところへ帰りましょう。」
そしてジェームスと名乗る執事風の老人と娘は帰っていった。
「はぁ…よかったよかった。さて、仕事の続き…ってあれ!?あいつらどこにいった!?というかここはどこだ!?」
だが怪魔の方は転生者を完全に見失っていたが。
場所は変わってここはガルディオス家の屋敷。
アズマとアカルはすでに屋敷へ辿り着いていた。
「うわ〜ちょーでっかい屋敷!!こんなのTV番組でしか見たことないよ!…アズマ大丈夫?」
「いや…こんなにでかい屋敷に住んでいる方と話をするとなると…緊張して…」
「ねぇ本当大丈夫?アズマってもしかしてこういう人苦手なの?」
「苦手というわけではないが…ミリアにこの世界のことについてある程度教えてもらったとはいえ、礼儀作法とかしっかりしないといけないとなるとなぁ…」
すると突然屋敷外の門が門番の兵士たちによって開かれた。
そして屋敷の門が開くとそこには大きな鎧が息を荒くして大剣を携えてやってきた。
「うわぁぁぁぁ!!」
「なっなんだ!?魔物か!?」
思わずアズマたちが構えると門番の兵士たちは慌てたようにその鎧に近づいた、
(ガレオ様!やっぱり鎧は脱いだ方がいいですよ!)
(旅の者が警戒して剣を抜こうとしています!)
門番がその大鎧に耳打ちしているのを見て敵ではないことを悟り、警戒を解いた。
そしてその大鎧は兜を脱いだ。
「うむ!やっぱり鍛錬後の鎧のまま前に出てはいかんな! はるばるガルデの街へようこそ旅のものたちよ!」
「すっすいませんでした。まさか領主様だとは…。」
「いやいや気にする必要はない旅のものよ!実際鎧を着た自分の姿は私の大きさも相まって魔物に見えるからな!この間深夜に鍛錬をした時鏡に写った自分に思わずこの大剣を振るってしまい鏡を壮大に壊してしまってな!ハハハ!」
「ハ…ハハハ…」
領主からの自虐ネタにアズマはただ愛想笑いしか出来なくなり、アカルはそのアズマをみて未だにその様子に心配していた。
「では自己紹介を。私の名はガレオス・ラ・ガルディオス!ガルディオス家の18代目だ。ガレオと呼んでも構わないぞ!っで、君たち2人は?」
「はっはい!村雨 東と申します!」
「本当に大丈夫かな…あっ!僕は日之町 明でーす!」
「はっはっはっ!アカルは元気がいいなぁ!…そこのアズマも私が領主だからって緊張しなくても良いぞ。」
「はっはい!すいません!」
「………まぁ何事にも得手不得手はあるか。」
アズマの様子にガレオまで心配しているも突然部屋のドアを叩く音が聞こえた。
「旦那様…お忙しいところ、失礼いたします。」
「おぉジェームス!我が愛しの娘とともに散歩から帰ってきたか!?」
「はい。お嬢様もいまこちらに。」
「よし!君たちにも我が頼れる執事と愛する娘を紹介しよう。入っていいぞ!」
「では…失礼します。」
「こちらが我が執事、ジェームス!そしてこの可愛らしい娘がメイオス・ラ・ガルディオスだ!」
「はじめまして皆さま。ジェームスと申します。」
「…メイオス・ラ・ガルディオスです…」
ジェームスは礼儀正しく挨拶し、メイオスもたどたどしくも礼儀正しい挨拶をした。
「私の妻であるマイアはすでに病気で亡くなってしまってな…今は私と使用人達で育てている。だがメイオスは妻そっくりでとても可愛い!俺の血も混じってるとはとても思えん!」
「はっ…はぁ…」
相変わらずの自虐ネタにアズマはただ相討ちをするしかなかった。
「そういえば何で大鎧なんか着てたのです?」
そしてアズマは初対面から気になっていたことをガレオに聞いた。
「うむ!領主とは領内の民を背負い守るもの!私の騎士たちには領民を優先して守るように指示しているからな!自分の身は自分で守らなくてはならない!だからこそ先ほども剣術の鍛錬をしていたのだが…その結果、鍛錬のしすぎで私が一番強くなってしまったがな!」
「ほぇ〜」
アカルが感心しているとジェームスが、会話に入り込んできた。
「ご主人様。談笑中失礼します。私はそろそろメイオス様を塾に向かわさなければなりません。」
「むっ?そうか。そういえば今日は早く行かなければならないのだったな。よし!我が可愛いいメイオスよ!一生懸命学んでいくのだ!」
「はい!お父さま!」
そうしていくとジェームスとメイオスは塾へゆく準備に馬車を用意し、出かけて行った。
そしてそれを見送るとアカルはガレオに本来の目的である宝玉の場所について聞いた。
「あの…僕たちは賢者たちの宝玉を探しに来たのですけど…」
「おぉ!あの宝玉のことか!それならばあの窓に写っている山の中に宝玉を祀ってある洞窟があるはずだ!」
「あの山の中に…」
「すみませんありがとうございます!でっでは自分たちはこれで!」
そしてアズマは緊張しながらその場離れようとするとガレオに呼び止められた。
「まぁ待ってくれ!折角来てくれたのだから私の屋敷を紹介させてくれないか?私も一応貴族である以上、屋敷の自慢をしたいのだ!まぁ私の屋敷など他の貴族に比べては小さいと思うがな!!」
「はっはい!」
ジェームスとメイオスが馬車に乗っているとメイオスは遠くに何かを見つけた。
「ジェームス…向こうに誰かいる…」
「おや?あの方々は…?」
向こうを見ると古びた汚く濁った茶色い布に包まれた団体が草原の真ん中に座っていた。そしてその団体はその馬車を見つけると馬車に向かって叫んだ。
「おーい!おーい!誰か!誰が助けてくれ!」
「魔物に襲われて命からがら逃げてきたんだ!」
「……可哀想…」
「あの様子を見るにかなり必死で逃げてきたのでしょうな。……すまないが近づけてくれないでしょうか?」
そしてジェームスは馬車の運転手にそう言うとすぐにその団体に近づいた。そしてジェームスは馬車から降りて近づいた。
「大丈夫でしょうか?もしけが人がいるなら街に病院や教会もありますので…」
「………遅い。」
ジェームスが不在の中領主自ら屋敷内を案内し、実際に訓練もしたりと色々なこともあっていつのまにか夜7時半を超えていた。
「いつもなら7時ちょっと過ぎたくらいには帰ってくるのだが……」
「何かあったのでしょうか?」
するといきなり扉が勢いよく開くとそこには血塗れの馬車の運転手と瀕死で気を失ったのジェームスがいた。
「…!!お前たち!?」
「メガヒール!ギガヒール!!」
すぐにアカルは2人に回復魔法をかけた
「申し訳ありませんご主人様!!」
何とか意識を取り戻し、土下座をしている運転手とジェームスの話になると茶色尽くめの魔物に追われたという男達に近づいたところいきなりジェームスと運転手に襲いかかりメイオスを攫って行ったと言う
「もはや言い訳のしようも…
「いや。お前は善を為そうとしただけだ…悪いのはその男どもだ!!」
ガレオは持っていた大剣を力任せに叩きつけた。
「ジェームス…何か手がかりは…」
「申し訳ないです。私も襲われた時に気絶してしまい、何も…お嬢様が身につけていたブローチはここに…」
「あっ!ちょっとそれ貸してくれませんか!?」
アカルは近づきそう言うとジェームスはブローチを渡し、目を閉じてブローチを握り締めた。
「アカル殿は何を…」
「アカルの特技に物を握りしめるとその物の持ち主がどこにいるか分かるという特技があるので…」
「なるほど!今メイオスを探しているのだな!?」
ガレオはそういった矢先にアカルは目を開けて窓の向こうの山を指さした。
「あの山の麓に小屋があってそこに男達に閉じ込められてる!!」
「まことか!!そうと決まれば行くぞ!!…ジェームス、ラルム。お前たちはどうする?」
「もちろん。私も行きます!」
「自分もッス!!」
「よし!我が愛娘を取り戻すぞぉ!!」
ガレオはジェームスと運転手の名前であろうラルム、そして何人かの兵士を連れてすぐに向かって行った。
「領主様が行っちゃった!!」
「俺たちも追う………」
アズマはふと背後に何者かの気配を感じ取り、後ろを見つめた。
「アーズーマ!!早く行くよ!!」
「あっ…あぁ悪い!」
アカルの言葉にアズマもハッとしガレオの後について行った。
暗闇だけが残った部屋に何かが動いたようだったが。
午後8時30分。
ジェームスとラルムが屋敷に帰り1時間後、山の麓に1軒の小屋があった。
「………とりあえず取引先はまだ来ないのか?」
「8時ごろには来るとは行っていたが。」
その男達は依頼を受けて人物を誘拐し、闇ルートで売り捌くことを生業としているグループであり、そして今回受けた依頼は貴族の子供を欲しいとの依頼でメイオスを拐っていったのだ。
しかしその依頼主がいつまで経ってもこず次第にイラついていた。
「遅いな…俺たちも暇じゃねぇってのに。」
「とりあえず金さえもらったらとっとと引くか。」
一方のメイオスは手と足を縛られ目隠しと猿轡をされ、地面に寝転がされていた。
「しかし貴族の娘を拐ったんだ。相当の金が期待できるが…」
「そこのクソ野郎共!そこのクソ野郎共!今すぐ小屋から出てきなさい!!今なら豚箱にぶち込むだけで勘弁してやろう!だから出てきなさい!」
しかし外から聞こえたのは依頼主の声ではなく拐った娘の父親の声だった。
「なっなんだ!?」
「おいどうやって…なっ!?」
小屋の窓から外を見ると大量の騎士に囲まれその中央に父とアカル、アズマがおり、その依頼主はアズマの足元で既に縛られしまっており、縄で縛られていた。
「なっなんだ!?どうやってここが分かった!?」
「しかも依頼主が…!!」
「というかあいつここの領主だぞ!?」
「そこのクソ野郎共!依頼主は私とここにいるアズマ君が捕まえた!私の娘を返しなさい!!だがもし傷一つでもつけているのなら私は何をするか分からない!」
「ガレオさん!ここは俺達が行きます!」
「僕も!」
「そうか!では頼んだぞ!!」
そしてアズマとアカルらは小屋の方へ向かっていった。
「やべぇ!!こっち来るぞ!?」
「ここで捕まっちまったら終わりだ!」
「ボス!ボス!どうする!?」
ボスはメイオスの方をじっと見ていた。
「というかどうするのアズマ?」
「メイオスさんにテレポートでこっちに引き寄せる。…いけるか?」
「うん!大丈夫!!」
そしてアズマ達は小屋のドアを開けた!
「ガキ共。こいつの命が惜しかったら…」
ボスはメイオスを捕まえて右腕にナイフを突きつけていた。
「テレポート!」
「!!」
アカルはメイオスに向けてテレポートを唱えた!
…しかし何も起こらなかった。
「あれ!?」
「テレポートが…」
実はメイオスのイヤリングにはかなり強力な魔術避けの効果があり、これにはどんな呪いや魔術を避ける効果がある。しかし、効果が高過ぎてテレポートや回復魔法すら受け付けないというデメリットもあり、当然テレポートもうけつけなかった。
そんなことは小屋内の人間も知らず、そのうちの1人のボスは激情した。
「…何だが分からんがびっくりさせやがって!」
そしてボスはさらにナイフをメイオスに近づけた。
「さっさとそこをどけ!このガキ殺すぞ!!」
「…どうしようアズマ…」
「……一かばちになるか…」
アズマは刀に手をかけるときふとボスの方を見るとボスの後ろの影から大きな黒い鎌がボスの右肩の上にあり、
「なっ!?」
「あぁっ!?今度はなん」
そして鎌は一気に振り下ろされた。
「……………あ?」
ボスは急に右腕の感覚がなくなったと右腕の方向を見ると右肩から腕が丸ごとなくなっていた。
「ぎゃあああああああ!!!」
そしていつのまにかメイオスもいなくなっていた。
「ねぇ!?メイオスが足元から…」
「何かに引き込まれていったがまさか!?」
メイオスは大きな腕に掴まれていたと思ったら急に足を掴まれ下に引っ張られるような感じがした。
そしてその引っ張った手が手に持ち変えられ、今まで目隠しされていた布が取れたと思ったらそこは見たことある黒く輝いた場所が見えた。
そして後ろを振り向くとそこには見たことある怪魔の顔があった。
「大丈夫かい!?」
「………影のおじさん!!」
そして怪魔はメイオスの体全体を見ると安堵したようにため息をついた。
「怪我はないようだね。もう大丈夫。さぁお父さんのところへ帰ろう!」
「………うん!!」
メイオスは目に涙を浮かべながら笑顔で答えた。
そしてメイオスとその怪魔は影の中を泳ぎ、ガレオのところまで行くと地上に顔を出した!
「なっなんだ貴様は!?」
急に影から出てきた娘と手を繋いでる謎の魔物にガレオは驚くこともなく大剣を抜いてその魔物に剣を突きつけた。
「あっやっぱり!!」
「貴様は怪魔だな!その手を離せ!」
そして小屋から出てきたアズマとアカルにも刄を向けられた。
しかしその怪魔は何も怯えることもなくメイオスに頭に手を置いて撫でながら優しく言った。
「さぁ。お父さんのところへ帰るんだよ。」
「うん!」
そしてメイオスは父のところへ向かっていった。
「お父さん!」
「うおっ!?メイオス無事だったか!?」
「うん!あの影のおじさんが助けてくれた!」
「影のおじさん!?」
怪魔は優しく見守るとそのまま後ろを向きアズマとアカルの方へ向かっていった。
「……本来はお前らを始末するのだが急用が出来た。あとは俺様に任せておけ。」
「えっ?」
そしてそのまま小屋の入り口まで行くとガレオに向かって
「すいませんお父さん。ちょっと娘さんの耳塞いでもらってもいいかな?できれば本当に何も聞こえないくらいに。」
「ん?…まぁいいだろう。」
そして怪魔はガレオが娘の耳を塞いだのを確認するとそのまま小屋へ入り、入るや否や小屋から凄まじい悲鳴が聞こえてきた。
そしてその悲鳴に兵士達やガレオが驚いていると
「あれやばくない!?」
「アカルいくぞ!!」
2人は再び小屋へ向かっていった。
2人か小屋のドアを開けるとそこには犯人達が片腕、片足が無くなってうめき声を上げながら地面に這いつくばっており、小屋中血まみれというかなり凄惨な光景が広がっていた。
「うわっこれって…」
「あれは!?」
そして小屋の真ん中を見るとそこには鎌を持った怪魔が立っており、その後ろにボスが怯えながら尻餅をついていた。ボスの様子を見る限りもはや怯えて全身が震えていた。
「待て!待ってくれ!お前には何も!何も関係ないはずだ!!」
ボスは完全に震えた声ながらも怪魔に訴えていたが怪魔はその言葉を無視し、ゆっくりとその男に近づいていった。そしてそばまでくると男に向かって鎌を振り上げた
「天誅!!!」
「ぎゃあああああああ!!!」
そう叫ぶとその男に鎌は振り下ろ…されなかった。
アズマとアカルがその怪魔を止めていた。
「ええい離せ転生者共!こいつらはどうせ死んだあとは地獄へ行く!だったら犠牲者が増える前に俺様が生き地獄を味合わせてそのまま地獄へ送ってやらなきゃいけねぇ!!!」
「確かにこの人たちは悪人だけどだからといって無闇に殺しちゃいけないよ!」
「まずは更生するまで牢屋に入れておくべきだ!」
「甘いぞ転生者共!こんな悪魔以下のクソみたいな事をする奴は反省しねぇんだ!ならば俺様の鎌で天誅を喰らわしてやるぅ!!」
「いいから落ち着いてぇぇ!」
「犯人に対する処遇はあまりにもやりすぎだが娘を助けてくれたことには感謝しよう。」
あのあとやってきたガレオと騎士が犯人達を捕まえてその場は落ち着いた。
ちなみにボスは気絶していた。
そして他の犯人達はアカルのヒールによりなんとか一命を取り留めたがほとんどが精神崩壊していた。
「嫌々、俺様は年上として当然の事をしたまでですよ。」
「本当に君は魔族なのか?…まぁいいか。娘も君が来てくれたことに喜んでいるからね。」
「影のおじさん!本当に!本当にありがとう!」
「ケケケッ!子供は元気が一番だ!…まぁここだと気付いたのはこいつらの後をついてきただけだがな。」
怪魔は転生者2人の方向を見た。
「こいつらが居たからクソ誘拐犯どもの居場所も分かったしそしてクソ依頼者も捕まえたからねぇ。お嬢ちゃんもこいつらにありがとうを忘れないようにな!」
「うん!アズマさんもアカルさんもありがとうございました!」
「う…うん…。」
「はっはい…。」
そしてメイオスはアズマとアカルにも感謝した。
2人ともかなり複雑そうな表情だか。
「君たちにも感謝の気持ちを込めて宴でも開きたいが…今はメイオスを安全に送り返すことが先だな。それに、ちょうどこの近くの洞窟に宝玉が祀っている祠もある。紫色の宝玉だな。」
「あっはい!今すぐ取りに行きます!」
「うわぁアズマ落ち着いて!命令じゃないから!」
相変わらず緊張しているアズマは早足で宝玉を取りに行こうとしたがアカルに止められた。
「それでは私はこれで失礼しよう!ラルス、馬車の用意を。ジェームスはメイオスのそばに。」
「はいッス!」
「…お嬢様。この度は私が不甲斐ないせいで本当に」
「ううん。私が悪いの。ジェームスもラルスも酷い目に合わせて本当にごめんなさい…」
「いいえいいえ!そんなことは…」
「お前たち!そんなことはメイオスを無事に送り返してからだ!では我が屋敷へ帰るぞ!」
そしてガレオは自分を含む騎士たちが馬へ乗り、メイオスら3人が馬車へ乗るのを確認するとアズマ達の方へ向き
「アズマ殿!アカル殿!そして悪魔殿!本当にありがとう!」
ガレオは手を振ってそのまま街へ帰っていった。
ガレオ達が居なくなると今までずっと緊張していたアズマが大きくため息をつきながら言った。
「…ハァ緊張した。」
「アズマって本当にああいう人には弱いね。」
「いくら異世界とはいえああいういい貴族様には逆に緊張するんだ。…とはいえ」
そしてアズマは怪魔の方に振り向いた。
「本当にこいつが下心無しでメイオスさんを助けたか」
「おっと!そこの転生者誤解しないで頂こうか!俺様は子供が好きだがloveの方じゃなくlike!断じてロリコンではない!断じて!というか何で最近は子供好き=ロリコンなんて方式が出てくるんだ畜生!!」
「そっそうか?ならいいんだけどよ…」
別にそこまで言おうとはしていないがあまりの迫力にアズマはこれ以上何も言えなかった。
「まっまあいいじゃん!メイオスちゃん助かったんだし!」
「まっそうか!今回はこれで一件落着!じゃあなぁ!勝手についてきて悪かったな転生者共!」
「やっぱりあの時の気配はお前だったんだな。」
そして怪魔はその場を離れアズマ達は宝玉を取ろうと洞窟に
「ってちょっと待てえぇぇぇ!!」
「うわっ!何!?」
突然怪魔はアズマ達の方へ走ってきた。
「俺様はお前達を始末するために派遣されたの!そこんとこ分かってる!?」
「いやそんなの知らないし!」
「…というかお前が勝手に忘れただけじゃないか?」
「うるせぇ!さっきまでは緊急事態が起きてたからお前達とは一時休戦しただけでもうその心配はないんだ!」
「…ねぇ?本当に戦うの?僕的には正直いい奴っぽいからあまり戦いたくないんだけど。」
「…まぁそっちがその気なら仕方ないか…」
「俺様の名はギリマキだぁ!ケケケッ!かかってこい転生者共ぉ!!」
そして2人はとても微妙な心境で影怪魔ギリマキと勝負した!
数分後、場所は変わって魔王城にて
「…結局負けてしまって宝玉をゲットされてしまいましたね…」
「…ふざけるなぁぁ!!」
レディ・サタンの叫び声が城中に響いた。
次回、恐竜と貝