ガブッとベジタブル(後編)
「これは渡さないぞ!」
アカルは1人と1匹にそう叫んだ。
「グルガァァァ!!」
「ありゃぁ荒れてるねぇガブリゴン。」
その1匹の怪物はアカルを覚えていたらしく、1人はその様子を傍観していた。
しかしアズマはその1人に突っ込まざるおえずに尋ねた。
「おい。さっきから見ていたんだがお前もその怪魔の一人だな?」
「えっ?……まぁはい。そうですが。」
その1人はあっさり認めた上に自分の素性も話した。
「まー先に言っておくと私はこの世界に怪魔を送り込んでるコーンヤーントと言いますはい。」
「聞いてないのに話したよあの人!?」
「どうせ私が何者か聞く予定だったんでしょ?あっついでにこいつは噛みつきの怪魔獣、ガブリゴンっていうの。そいつは草食だから人間を直接襲うってことはないけども…」
「あっだから野菜を盗んだだけだっんだ。」
「まぁ最初は君たちを倒すためだけに送ったんだけど勝手にやってるみたいだなねぇ。まぁそれはそれとしてそれも気になるんですけれども。」
その怪魔が指を指したのは案の定、宝玉であった。
「見たところ結構大事そうなアイテムだし…まっそいつら倒したら報告するから送ってよ。じゃあ映像切るね。バイバーイ。」
「待て!!」
アズマは止めようとするもその怪魔はすぐに映像を切った。
「くそっ躊躇なく切ったか」
「アズマ。とりあえずこいつ倒さないと。」
そして洞窟の奥に残ったのはアズマとアカルの2人と怪魔ガブリゴンの1匹、そして壊れた社台と宝玉だった。
「グルルル…グガァ!!!!」
ガブリゴンは飛びかかり両手を使って2人に噛み付いてきた。
「ふんっ」
「おっと」
2人はそれを横に避けてそれぞれの武器でガブリゴンを貫こうとしたが、
「なっ…」
「おうっと!?」
2人の刃を両手の歯で受け止めて、そのまま上に投げ飛ばし、投げ飛ばした2人を追撃するように両手を伸ばし再び噛みつこうとした。
「テレポート!!」
アカルは転移呪文を唱える
噛みつく直前で2人が姿を消えたと同時に、2人は地に降り立ちガブリゴンから少し離れた。
「ギガ・フレイム!!」
アズマはそう唱えるとアズマの腕から巨大な炎が飛び出しガブリゴンに襲い掛かった。
「あれ…?ねぇあの魔獣のお腹がなんか変なんだけど…」
その時ガブリゴンのお腹が2つに裂けたと同時に巨大な牙が並んだ口ができ、その巨大な炎を噛みつき、炎を噛んだと同時に炎を消し去った。
「嘘ぉ!?」
「チッ」
するもアズマは刀に先ほどの魔術を込めると刀に炎が宿りその刀をその場で地面切り裂いた。
「地走り灼熱斬!」
すると地面から炎が飛び出しその魔獣に襲い掛かった。
「ガブゥ!!」
しかしガブリゴンは地面に噛みつくとそのまま地面をちゃぶ台返しのよつにひっくり返し、炎を防いだ。
地面をひっくり返すことにより砂が舞っていき、治るとそこにはガブリゴンは2人を挑発するかのごとく手をこちらに突き出しながら笑っていた。
「ガーブガブガブガブリwww」
「うわ!ムカつく!!」
「……………」
すると突然ガブリゴンは腕を長く伸ばし再び2人に噛みつこうとするも2人はそれを横に避けた。
「ガァァ‥ブ!!」
ガブリゴンの両手の口に洞窟の一部を噛んでいたがそれを軽々と噛み砕いた。
「あの魔獣はどうやら腕を結構長く伸ばせるみたいだな」
「そういやはじめて会ったときに舌も伸ばしていたっけ」
そしてガブリゴンは三度腕を伸ばし嚙みつこうとした。
「また来た!」
「くそ!!」
2人はガブリゴンを中心に二手に分かれその手の口の追跡を逃れようとしたがその口は正確に2人を狙っていた。
「うわぁ!どこまで追ってくるのぉ!?」
「………うん?」
アズマはふとガブリゴンの方を見るとガブリゴン自身は2人を見ておらず、そして振り返り、追ってくる手の口をよく見るとなにか小さい2つの穴が見えた。
「もしかすると……」
そしてアズマは逃げているアカルの方を見ると2人だけに心の声が聞こえるテレパシーで話しはじめた。
(アカル、その盾でもいいから何か身につけてるものあの口に向かって上向きに投げろ。)
(えぇ?何で?)
(いいから!というかこのままだと2人ぶつかっちまう!)
するとアカルはその盾を口がある方向に向かい上に投げ捨てた。
そしてその同時にアズマも自分の手袋も口に向かって上向きに投げた。
するとその口はなんとその上に投げ捨てたものに向かって追いかけ始めた。
「えっ!?」
「よし!!」
そしてその手がその2つに噛みついたと同時に何か違和感を感じたように顔を後ろに向けるとそこにアズマが近づいていた。
「ガブ!?」
そして慌てて体を向けると腹の口を開けると同時にアズマの刀がガブリゴンの口を貫いた。
「ガァッ!?」
ガブリゴンは腹の口をなんとか閉じて刀を噛み砕こうとするとアズマは刀を上向きにしたと同時に下から切り裂いた。
「アッ…ァ………」
そしてそのままガブリゴンは倒れた。
「アズマ!!」
アカルはアズマに近づき回復呪文をかけた。
「いや。今回はそんなに怪我はしなかったから大丈夫だ。」
「うん…でも念には念をね!でもなんであのときあの口は僕の盾に向かっていったんだろう。」
「あの手の口をよく見ると小さいが鼻があったんだ。」
「鼻?」
「あぁ。あの魔獣の方をみたら手を伸ばすときにこっちを全く見てなかったからな。あの手に付いている鼻で俺たちの存在を感知して伸びていたんだと思ったんだ。」
「そうだったの?」
「まぁあれが目だったかもしれないから結構賭けたところもあるんだけどな。」
実際、ガブリゴンは目はあるもののかなり小さい。その代わり嗅覚には鋭く、そしてその鋭い鼻は腕にもついておりその臭いを感知してそれを判別するという生態である。
アズマはそれを何となく察したのちに自分の臭いが染み付いているものを投げ、そして鼻がついている腕はその臭いを標的と勘違いし、それに向かって噛み付いてきたのだ。そしてガブリゴン自身はその腕の鼻の機能に頼り切ったところもあり、つい相手を見ないという油断をしてしまったことがアズマの作戦の成功した要因でもある。
そしてアズマ達は宝玉へ近づき傷がないか確かめた。
「どっどう?」
「大丈夫だな。見てみろ。傷どころか汚れすらない。」
宝玉はあの爆発があったにも関わらず綺麗なままだった。
すると突然背後からさっきまでモニターにいた男の声がした。
「あーやっぱり重要なものなんだそれ。」
「うわぁっ…えーと、だれだっけ?」
「コーン・ヤーントです。それよりガブリゴン負けちゃったんだね。こっちに魂戻ってきたからすぐ分かるよ。」
「魂がもどる?どういうことだ?」
「あーそれはこっちの都合なんで大丈夫です。まっ一応それが何かは分かりませんけど魔王様に伝えときますね。」
「あっ待て!!」
そうその男はいうとアズマが近づくと同時に映像を切った。
「くっそまた!」
「あれ?下に何かあるよ?」
そう下を見ると何か機械的何か物を見つけたと同時にその機械は軽く爆発した。
「うわぁ!?」
「チッ、もう多分もうこれはゴミだ。…まぁ一応拾っておくか。」
アズマはその壊れた機械を一応拾った。
「よし。村に帰るぞ。それとその宝玉も忘れずにな。」
「うん!!」
「お主達。よくやってくれた。約束どうりその宝玉は其方に預けよう。」
村に帰ってくると同時に村の入り口にいた村長とその村人が集まっており、報告したと同時に歓声と感謝の声がそこら中に響いた。
「すまねぇなぁ。あんな風に罵ったのに俺たちのために危険を冒してくれて。」
「いえ。これは俺たちが招いたことなんで。」
「そういえば。」
アカルは突然村長に声をかけた。
「えーっと…こんなこと言うのもなんですけど…村長さんはその賢者たちの弟子ってことは…結構強かったりする?」
「いやいや。確かにワシは昔は賢者たちの弟子であるが故に多少はいろんな魔術を使えたのだが、いまはここら付近の魔物たち相手で精一杯じゃわい。」
「あー…倒せて良かった…僕たちが仮に死んだらここの村人はどうなっちゃうんだろうと思って…」
「フォッフォッフォッ!それならワシがあの頃を思い出し、精一杯抵抗してやるわい!」
この世界にまだ魔物は蔓延ってはいるが、その村はこの時だけ村人中の笑い声が響いた。
「おのれ!!まさかそんなところに宝玉があるとは…」
場所は変わってここは魔王城。村の一連の流れを見ていた魔王は激昂した。
「どう致しますか?このままでは次の宝玉が見つかるのも時間の問題だと思いますが…」
「どうしたもない!!おい。コーン・ヤーントよ。次の怪魔どもを選ぶぞ!」
「いやあの。もうそっちの世界に怪魔は結構送ったはずですが…」
「そういうことではない!!!」
魔王レディ・サタンは大きな声を張り上げ玉座から立ち上がった。
「あやつらに!転生者どもに次々と怪魔を送り込み、刺客として旅の途中に向かわせる!!だからよいか!金ならいくらでもある!」
「あーすいませんすいません分かりました。では…なにがよろしいでしょうか?」
「よし。クモジィよ。カタログをよこせ。」
「承知、いたしました。」
そういうとクモジィはカタログをとりにむかった。
「2人の転生者どもよ…覚悟しろ…」
魔王は呪詛を呟くように声を上げた。
次回、刺客・呪いの狂信者