ガブッとベジタブル(前編)
「フム…結構多いんだな。怪魔というものは」
そう言いながらカタログを読んでいるのは魔王レディ・サタン。そして彼女はどの怪魔を派遣するか考えている様子である。
「まぁ…そうですねぇ…ところでまだ考えてるんです?もう結構な数の怪魔を送ってますよ。」
そしてそんな魔王の担当している怪魔、コーン・ヤーント
実はもうすでに魔王は世界各地に怪魔を派遣していた。しかし今だに怪魔を派遣しようとしている魔王に対し気だるそうな声で話していた。
「もう必要ないんじゃないんですかねぇ?こっちもヒマじゃないんですよ〜…」
「貴様、前にヒマだと言ってたではないか。まぁなにやつらの旅の道中にもけしかける怪魔を選んでる途中だ。」
そしてそう聞いた怪魔はある疑問が浮かんだ。
「そういや例の異世界転生者…カズマとハカルでしたっけ?今どこで何してるんです?」
「アズマとアカルだな。奴らは今ファーム村に着いたようだな。」
「えーとっこの村の近くに送り込んだのは…あぁこいつですね。」
「さて…どんなことになるのか…」
そして再び彼女は水晶玉で異世界転生者たちの様子を覗き込んだ。
「ようこそこんな中おいでくださいました。農業しか取り柄のない村ですが、どうかゆっくりしていってください。」
そしてここはファーム村、農業が盛んな村である。彼は怪魔に2度襲われた後、1日を経てこの村にたどり着いた。そしてそんな小さな村にも宝玉があるとの情報だった。
「とりあえずたどり着いたな。」
「おぉ〜う。うちの実家を思い出すねぇ」
村の畑自体は村の少し先にあるのだが家一つ一つに小さな畑や鶏小屋などもあって農家独特の匂いが漂っていた。
「とりあえずここの宿屋で一休みといかない?」
「そうだな。まずは宿泊先の確保といこう。」
そして宿屋に向かっている途中、
「本当に見たんだって!見たことのねぇ生き物がよぉ!」
「そりゃあお前、魔王に操られたオオカミやイノシシとかじゃねぇか?」
「ちげぇちげぇ!!俺が見たのはもっと変な形の魔獣だ!少なくともそんなのと見間違えるわけねぇ!!」
「だげどもそんなこと言ってるのお前だけだぞ。たちの悪りぃ冗談だったら承知しねぇぞ。」
「いや、本当に見たんだって!見たことのねぇ魔物が!」
そんなことを言い争っている村人を見かけた。
「ねぇ。見たことない魔物って。」
「…とりあえず話を聞いてみるか。」
2人は言い争いをしている村人たちにどんな魔物なのかを聞いてみた。
話によればそれは
角がはえて顔一面は大きな口であり、二足歩行で二つの腕先にも口がついていた
とのことらしい。
「ねぇ?その魔物ってこの辺りでも聞いたこともないの?」
「あぁうちの周りには魔王によって凶暴化した動物はうようよいやがるがあんなもん見たことねぇんだ。
「そいつを見かけたのはどこら辺だ?」
「この村の近くに祭壇のある洞窟があるんだがその洞窟がある森で見かけたんだ。もしかしたらあの魔物は洞窟に潜んでいたかもしんねぇ。祭壇には村に代々から伝わる宝玉があるってんのに…あぁっ!!その魔物がもし宝玉を壊してしまったら…!!」
その村人は頭を抱えて嘆いていた。
そしてその話を聞いた2人も頭を抱えた。
その村人を後にし、2人は宿屋の部屋に一旦泊まっていた。
そして村人の話を思い出していた。
「宝玉の場所は分かったんだけどさぁ…もしかしたらそこに」
「怪魔ってやつが潜んでいる可能性がある場合があるか…」
2日前の出来事を省みるにおそらくその魔物は怪魔というやつらで間違いはないだろう。しかしアカルはそのことについて悩んでいた。
「ねぇ…これってさぁ…僕達がここにきたからなのかなぁ。もし僕達が町とか村を訪れるたびに怪魔が来たらそれこそ逆に危険に晒してるんじゃないかなぁ?」
「たとえそうだとしても俺たちが行かなければいけないさ。それに怪魔とやらが絡んで来なくても魔物の刺客ぐらいは送ってくるだろうし、かといって行かなかったら魔王への道も開かないから結局変わらないとは思うがな。」
ベットで休んでいたアズマは立ち上がった。
「いずれにせよ俺たちの邪魔するやつらは叩くのみだ。」
その夜、村人の話が気になって気になって仕方がないアカルがベットから飛び出し夜の村を歩いていた。
外はどうやら満月らしく月明かりが夜の村を照らしていた。
「そういや畑があるって言ってたけどこっちだっけ?」
何気なく畑の方へ行ってみると
ガブッ!!ガブッ!!ガブッ!!
それは確かに姿を現した。
そしてその怪物は後ろ姿ではあったが村人が言っていたとおり手は口のような形に変化しており角がはえた二足歩行の物であった。
そして怪物は何かを察したように振り向くとアカルはそれが見えた。
…顔全体を覆う巨大な口とその口から滴る赤い液が…
「何をしてるんだお前ええええぇぇぇぇ!!!!」
アカルは真っ先にその怪物に突撃し切りかかったがその怪物は咄嗟に避けたあとその腕を伸ばし噛み付いてきた。
「うらぁ!!」
アカルはその口を切り裂こうとするも片手の口は迫ってきた剣を噛んで止めた。
そしてもう一つの口で嚙みつこうとするもその口を盾で弾いたと同時に剣を噛んでいた口も離した。
「ガァッ!!」
「そこだぁ!!」
そしてアカルは怪物を斬ろうとするとその大きな口から大きな舌を出し、アカルの首に巻き付いてきた。
「ぐっ!?ぐううぅぅぅ」
「ガァァァ!!」
そしてその怪物は舌を引き寄せ嚙みつこうとするとアカルは舌に剣を突き刺しそのまま引き裂いた。
「グルガアアァァァッ!!」
そのまま怪物は口を押さえたまま畑から森のある方向へと逃げていった。
「あっ待て」
「おいどうした!?何があった!?」
そこへ駆けつけてきたのはアズマであり、アカルは相棒の姿を見るとすぐさま駆け寄っていった。
「アズマ!!大変なんだ!村の人がぁ!!」
アカルはアズマを肩を掴み激しく揺すっているとアズマはアカルの後ろの畑に赤いしみがついている土あるのを見つけた。
「……!?」
アズマは肩を掴んでいるアカルの手を払うとすぐさま赤いしみのところまで駆け寄りかがんでその土を掴んで顔に近づけた。
「……?」
「…どうしたの?アズマ?」
アズマは何かに気づいたらしくその土の匂いを何度も嗅いでいた。
「ちょっちょっと?何してるのさ?」
「……アカル」
アズマはアカルの名前を呼ぶと静かにたってこう言った。
「これ…トマトの匂いがするぞ」
「へっ!?」
アカルがきょとんとしていると突然後ろから声がした。
「あっあんたらっ大丈夫か!?」
そこにいたのはその怪物の話をしていた村人2人だった。
話によると畑の方向から今まで聞いたことのない獣の雄叫びを聞いた村の人は最初は怯えていたもののアズマが村の宿から走っていくのを見たらしく、それで心配になって見にきたらしい。
「あぁ…やっぱりいやがったんだ…」
「おっおい!!それも大事だが畑も大変なことに!!」
その村人の焦った声にアカルたちも振り向くと畑がめちゃくちゃに荒らされており、なぜか野菜も無くなっていた。
「ふぅむ….まさかこんなことになろうとは….」
昨晩の事件の後の朝、アカルたちは村長に呼び出され、その時間の内容、そして怪魔について分かる範囲で説明した。
「つまりあのわけワカンねぇ魔物はあんたらが呼んだってことじゃねぇか!?」
「どうすんだ!?オラたちはあんな魔物に勝てるわけねぇだよ!!」
「あうぅ…それは…」
「……」
集まっていた村人たちが騒ぎ立てていると突然
「喝!!」
村長が村人たちを一喝し、こう告げた。
「落ち着かんか皆の者、この者たちがゆう怪魔なるものがあらわれなくとも今の世の中魔物どもが跋扈する時代、いずれこのような事態は訪れるとは思っておったわ。むしろ今まで大きな被害がなかっただけ奇跡のようなもの。そなたたちの怒りも分かるがこの者たちを責めてはいかんぞ。」
そしてそういうと今度はアズマたちに向かい話し始めた。
「わしは今言うた通りお主らを責めようとは思わぬ。しかし、先程だれかが言うた通り、あのような未知なる魔物相手はわしらでは荷が重すぎる。だから…」
「ハイ!!僕たちが必ずあの怪魔を仕留めてみせます!」
とアカルは食い気味に決意を表した。そしてそれに続きアズマもこう言った。
「俺も無論、その怪魔を倒します。ただ…このようなことを言うのはさしでがましいですがもしその怪魔を倒すことができたら…」
「なんとなく察したぞ。この村に伝わる宝玉の事じゃろう。」
なんと村長はアズマが宝玉を伝えることもなく何が欲しいかあててみせた。
「わしのご先祖様は昔厄災が起こることを危惧し、宝玉をお作りになった7人の賢者の弟子の一人でな、どうやら賢者たちは自分ではなく、その弟子に宝玉を預けたと伝えられておる。なぜそうしたかはわしにも分からぬがな。そしてご先祖様はこの地に村を作り、そして宝玉の存在を無駄に広めぬため、村の者たちにバレないよう洞窟の中に宝玉を隠したらしい。まぁ過去に村の子供の誰かが見つけてしまい、ご先祖様は適当に誤魔化したものの、結局宝玉そのものの存在は広まってしまったがな…」
アカルはふと振り向くと怪魔について話していた村人の一人がなぜか顔を押さえていた。
「そして実際に魔王と魔物という厄災が現れた今こそ、宝玉が必要なのであろう?ならば、わしに断る道理なし。その怪魔とやらを討伐したなら、好きに持って行くがよい。できれば今すぐにでも言ってもらいたいがな。話によればその洞窟の近くか、最悪洞窟の中に怪魔が潜んでおる。と聞いておるのでな…」
それを聞いたアカルたちはすぐに洞窟へと向かった。
「ここだね…宝玉がある洞窟っていうのは…」
村の外を出て森へ行き、道中の魔物たちを蹴散らし洞窟へ辿り着いた。
「以外と小さいねー。」
「とりあえず中に入るぞ。」
そして洞窟の中に入ると目で見えるほどに奥への道もすぐだった。
「本当に小さいね…よし!すぐに奥まで行こう!」
アカルはすぐに奥まで走ろうとすると突然アズマに止められ、小さい声でこう言った。
「待て。何があるか分からない以上まずは少し奥の様子を見よう。」
「う、うん。じゃあ僕は君の後ろを警戒しとくね。」
そう言ってアズマたちはゆっくり奥の近くまでいくと奥から祭壇のようなものと例の怪物、そしてなぜか野菜が大量があり、その怪物はまるでアニメでよく見るホログラム映像に映っている人物と話している様子だった。
「えーとっ様子はどうよ?」
「ガアァ」
その人物はサラリーマンのようにスーツを着ており顔もまつげが少し長い以外は普通の人間と変わらないが、片目まで覆ったまるでコンセントをモチーフにしたような兜をかぶっていた。そしてその人物はスマホのような機械を見ていた。
「えーとっ…そんなことよりお野菜おいしいってまぁ順調ってこと…でいいやうん。」
どうやら様子を見るに翻訳機のようらしい。言っていることはめちゃくちゃだがそれより気になることがあった。
「そういえばアカル、お前確かあの怪魔の舌を斬ったんだったか?」
「そうだけどどうしたの?」
「今ホログラム映像見ながら舌を伸ばして野菜食ったんだが。」
「デジマ!?」
なんと舌は復活していてそのまま野菜の束から舌を器用に使い食べていた。
「えーっとえーっと…どうやら洞窟をアジトにしたらしいねぇまぁらしいっちゃぁらしいけど…うん?」
怪魔の仲間である人物が周りを見渡していると何かを見つけたらしくそこを指差していた。
「あれ?何あれ?ちょっと調べてみ?」
指をさした方向には祭壇があり、そしてその怪魔はそこに近づいていき、その祭壇の扉を触れた。
「あっやばっ」
「待て。おそらくは…」
そしてその扉に触れた途端その怪魔は雷に触れたように痺れ始めた。
「グギャアアアア!!」
「あらら大丈夫?」
そしてその怪魔はすぐに手を離したもののかなりの体力を疲弊していた。
「ほらな。ああいうのには邪悪なものを追い払う力があるとは思ったよ。」
「あーまぁこの世界だとありえたねぇ。」
その様子を見ていた人物は何かを考えていた様子で見ていた。
「あ〜どうやら結界じゃなくて祭壇の使われてるやつがやばいね。ならこれで吹き飛ばせば?」
そして地面に急に魔法陣が現れるとそこに現れたのはなんと…
「….……なぁあれは俺の見間違いじゃなければ…」
「うん…ダイナマイトだねあれ…」
複数がまとまったダイナマイトにマッチ箱が置かれてあった。
そしてその怪魔は口のような手で器用にマッチ箱からマッチを取り出すと火をつけ、ダイナマイトに火をつけそのまま祭壇に投げつけると小さい爆発を起こして煙が舞った。
「!!??」
「ちょちょちょ!!本気でやばくないあれ!!」
煙が晴れると祭壇はボロボロになったが、そこには神秘的に輝く黄色い宝玉があった。
「ンガァ?」
「ん?あれって?…」
人物と怪魔はそれを見ると
「待て!!」
「おりゃあ!!」
その壊れた祭壇の前にアカルとアズマが飛び出してきた。
後編へ続く